プレデター ザ・プレイ 冬眠シリーズを叩き起こした傑作中の傑作

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出典:httpswww.themoviedb.org

– 制作:2022年
– 監督:ダン・トラクテンバーグ
– 主演:アマンダ・ミッドサンダー、ダコタ・ビーバーズ

弱さを武器に変える、静かな逆襲劇

戦うことで己の価値を敵にも自分にも証明するヒロインの姿は、視聴者の胸に立ち向かう勇気を呼び覚ます。やや陳腐な表現だが、我ながらしっくりくる。
だがその“戦い”は、銃弾と爆発の応酬ではなく、罠と知恵と執念の積み重ね。リアルな手触りのあるゲリラ戦。つまり、プレデターシリーズにしては本作は妙に“地に足がついている”のだ。

舞台は18世紀の北米。コマンチ族の少女ナルが、宇宙から来た狩猟マニア(=プレデター)に挑む。
科学力では圧倒的に劣るが、ナルには“侮られることの強み”がある。プレデターが彼女を見逃す場面──あれは彼の狩りの美学がナルを「狩る価値なし」と判断した瞬間だが、実はその瞬間こそが彼女の逆襲の起点になる。侮られることが勝機になるなんて、まるで「この新人、使えないな」と思ってたら翌週には社内の問題を全部解決してたような話だ。

ナルの戦い方は、力ではなく“読み”と“仕掛け”に満ちている。
罠を張り、敵の技術を盗み、地形を利用し、最後には“狩りの哲学”そのものを逆手に取る。その過程は、まるで『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のフュリオサが、怒りと絶望を燃料にして走り抜けたような不屈さを感じさせる。
ただし、ナルは叫ばない。泣かない。静かに確実に、相手を追い詰める。その姿が妙にリアルで痛快だ。

そして何より、本作が描く“戦い=生存”という価値観。これは現代の“共存=正義”という思想とは真逆だ。
だが、だからこそナルの物語は胸を打つ。彼女は平和を求めていない。ただ、自分が“狩る者”であることを証明したいだけだ。その純粋さが、プレデターの“趣味的殺戮”を逆転させる。

『ザ・プレイ』は、シリーズの中でも異色の一作。血と泥と知恵で構成された、静かな逆襲劇。プレデターよ、次回はもう少し相手を見てから狩りを始めたほうがいい。地球には、侮れない“弱さ”が潜んでいる。と言うかそもそも別の星でやってくれ。

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