人の心を描いた映画には、派手な爆発も超能力もないけれど、静かに胸を打つ力があります。
この記事ではNetflixで今こそ観てほしいヒューマンドラマを3本だけ厳選してご紹介。
観終わったあとに何かがきっと残るはずです。
マリッジ・ストーリー(映画)
制作:2019年
監督:ノア・バームバック
主演:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー
離婚を通じて愛を肯定する
ニューヨークの演出家チャーリーと女優ニコール。
夫婦として破綻した二人は穏便な離婚を望むが、弁護士たちの代理戦争によって泥沼の法廷バトルへ突入!
互いの人格を削り合うような争いの果てに始まるるスカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーの罵倒合戦は、もはや演技の域を超えた感情のデスメタルセッション。フルボリュームの。
残るのは傷と後悔——かと思いきや、ラストには静かな肯定が待っている。
憎しみの奥にある愛の残響を描いた珠玉の傑作。見終えたあと「夫婦とは何か」「愛とは何か」が少しだけ違って見える。これこそ映画の力だ。
ROMA(映画)
制作:2018年
監督:アルフォンソ・キュアロン
主演:ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ
強く静かな女性賛歌
1970年代メキシコ・シティ。中流家庭に仕える家政婦・クレオの一年を、モノクロームの映像美で綴る。
物語は、恋人に逃げられ、政治暴動に巻き込まれ、それでも命をかけて子どもを救うまでの彼女の静かな激動を描く。
背景には監督の私的記憶とメキシコの社会構造が滲むが、知識ゼロでも十分に浸れるのが本作の懐の深さ。
中盤、恋人が全裸で股間のROMA棒を振り回す謎のマーシャルアーツ披露は、観客の脳内に「え、今何見せられてるの?」という静かな混乱をもたらす。だがその奇行すら、クレオの孤独を際立たせる伏線に過ぎない。
クライマックスの海辺では、彼女の沈黙が波に溶け、観る者の胸を締めつける。これは“感情のデスメタル”の逆側——叫ばずとも魂が震える。静けさの中に、確かな強さがある。ROMAは、そんな女性の物語だ。
クイーンズ・ギャンビット(ドラマ)
制作:2020年
監督:スコット・フランク
主演:アニャ・テイラー・ジョイ、トーマス・ブロディ=サングスター
チェスで人生を切り開け!
孤児院で抗精神病薬漬けの日々を送っていた少女ベス・ハーモンが、チェスという盤上の宇宙に魅せられ世界の頂点を目指す物語。
チェスの知識ゼロでも楽しめるのは、盤面の駆け引きよりも彼女の内面の攻防が主戦場だから。筆者は将棋とチェスの違いすら怪しいが、それでも夢中になった。アニャ・テイラー・ジョイの瞳が、盤上の64マスより多くを語る。
ファッションも見逃せない。本作は勝利のたびに衣装がレベルアップするRPG方式が採用されている。自信とスタイルが連動していく様は見ていて爽快だ。最終話でレベルアップし過ぎてフュリオサ化してスキンヘッドになる展開には驚愕した…と言いたいがこれは嘘。
彼女の勝利はただの試合の結果ではない。それは孤独と依存を乗り越える“精神のチェックメイト”なのだ。
どれも、観る人の人生にそっと寄り添うような作品ばかりです。
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次の映画体験が、またあなたの心を揺らしますように。
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