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『アンダーザシルバーレイク』感想 観ると現実を見失う!?衝撃のパラノイア追体験ムービー

『リング』や『呪怨』の影響を強く受けつつ、世代間の確執などを巧みに恐怖へと転化したインディーズ系ホラー『イット・フォローズ』。
デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督は同作で一世を風靡しました。その反響の大きさたるや凄まじいもので、製作費200万ドルに対し興行収入1400万ドルという文字通り桁違いの数字が破格の大成功だったことを示します。

イット・フォローズ(吹替版)

 

で、そんなデヴィッド監督の次回作が今回紹介する『アンダーザシルバーレイク』。
失踪した美女を探す謎解き物語です。

しかし一見正統派の探偵ストーリーに見えつつ、この映画のメインテーマは主人公の妄想。デヴィッド・リンチ的な妄想フルスロットル不条理ムービー。難解を通り越した意味不明さが、名状しがたい不穏な魅力を放ちます。

ただね…長い。長すぎるよこの内容で2時間半はさ…。
『イットフォローズ』を100分程度に収めた手腕のデヴィッド監督とは思えない冗長さだよ…これはいただけない。

 

 

アンダーザシルバーレイク

2018年 アメリカ
監督:デヴィッド・ロバート・ミッチェル
出演:アンドリュー・ガーフィ―ルド、ライリー・キーオ

アンダー・ザ・シルバーレイク(吹替版)

 

評価 D

 

サム(アンドリュー・ガーフィールド)は、夢の町ハリウッドで夢破れた30台無職。
家賃を滞納しまくり、近所のお姉ちゃんと適当にセックスしては自堕落な日々を過ごす負け犬だった。

そんな彼が隣に住む水着美女サラ(ライリー・キーオ)に恋をする。
ふとしたきっかけで親しくなるサムとサラ。しかし「明日また会おうね」という約束を最後にサラは忽然と姿を消してしまう。

で、不審に思ったサムが独自に捜査を開始すると言う訳です。
消えた美女を探す、いわゆるフィルムノワールの王道ですよね。

 

ところがこの映画が一筋縄ではいかないのはここからです。
僅かな手がかりを頼りにサムは失踪女性を必死に探しますが、その手がかりと言うのがどれもこれもこじつけ以外の何物でもない有様。

「バラエティ番組の司会者の視線が妙だ…何か隠しているに違いない!きっと金持ちだけが分かる秘密のサインだ!」
「ヒット曲を逆再生したら暗号になった…これは分かる人だけに向けられた秘密のメッセージに違いない!」
「おやつのオマケについてきた地図が、大昔のゲーム雑誌とぴったり一致する!これは町の秘密の場所を示した地図なんだ!!」

こんな感じです。
そう、サムは陰謀論に取りつかれたパラノイアだったのです。

 

そしてこの映画のさらに凄い所は、妄想エンジン全開で突っ走るサムの前に本当に怪異が顕現してしまうところ
でたらめな捜査の先にたどり着いた場所で、サムは謎めいた人々や不可解な現象と実際に邂逅します。「フクロウの顔をした女に殺されるかも…」とサムが心配し始めると、本当に窓を割ってフクロウ女が家に乱入してくる始末。
まるで「こうに違いない!」とサムが思い込むと、それに呼応して現実がゆがんでしまうかのよう。
もうどこからが現実でどこからが虚構なのか分かりません。全部現実なのか、全部虚構なのか…その二つには何か違いがあるのかさえ分からなくなってきます。

 

俳優(あるいはロックスター)志望だけあって顔は整っているサム。
でも独特の行動理念のせいで実生活は荒廃そのもの。

 

話は盛大に変わりますが…。
最近Twitterを始めました。いきなり私事でほんと恐縮なんですけど…(;^ω^)
もともとSNSがあまり好きなタチではなかったのですが、少しでも映画好きやゲーム好きと繋がれたらなーと思って気まぐれで始めてみたわけです。
今のところ楽しく使わせてもらっているのですが…それとは別に衝撃を受けたのは、想像以上にヘンな人が多いこと

「ひこうき雲は毒ガス!政府の人口削減政策!」
だの
「地球は平面!地動説はNASAの陰謀!」
だのを一生懸命発信しているひとがむちゃくちゃ多いんですよ…。
最近は昨今の情勢からコロナ関連の話題が多く、特に「5G通信を介してコロナが感染する」という説は人気があるみたいです…。

 

この人たちの共通する特徴に、勝ち誇った態度で既存の説を否定するという点があります。
たとえば
「コロナウイルスはマスクの目よりずっと小さい!だからマスクに感染予防効果はない!」
と主張する人たちは、さらに
「マスクしている人は情報弱者!政府の操り人形!義務教育レベルの知識さえないコロナ脳!」
と大騒ぎし、自分を"真実に気付いた賢人"として持ち上げるまでが1セットです。

もちろんマスクはウイルスを含んだ鼻汁や唾液などの飛沫を防ぐものであって、ウイルス自体をこしとれるものではありません。ですがこの人たちにとってはその点はどうでもいいようで、ひたすら声高に真実に気づいた自分をアピールし続けています。

 

こういう人たちをみると、ある懸念が浮上してきます。すなわち
「この人たち、普段どうやって生活してるんだろう…」
という疑問です。
情報を鵜呑みにしないのは現代にあって欠かせないリテラシーの一つですが、この人たちは世の常識を極端に信じない。そのくせ逆に、自分の思い込みだけは一切躊躇なく鵜呑みにしてしまう…。
普段の生活のなかで周囲に軋轢が生まれないのか。って言うかそもそも社会生活が成り立つのか…。心配です。

 

『アンダーザシルバーレイク』はその疑問に対する一つの回答と言えるかも知れません。
アンドリュー・ガーフィールド演じるサムはこれと思った手がかりに飛びつくや何の裏付けもないまま独自の捜査に突っ走り、そして本当に自分だけの真相に到達してしまいます。
そしてその"真相"がサムをして「やっぱり俺の考えは間違ってなかった!」と思わしめ、更なる妄想へと掻き立てる。あとはその繰り返しです。

映画はこの妄想のサイクルをたっぷり(過ぎる)尺をとって丁寧に描いていきます。そのじっとりとした語り口には「"#コロナは茶番"って言ってる人たちには世界はこんな風に見えているんだ…」と納得させられてしまう奇妙な力があります。
要するに『アンダーザシルバーレイク』は、陰謀論者の視点の追体験ムービーなのです。

 

もちろん『アンダーザシルバーレイク』の魅力はそれだけでなく、カート・コバーンやザ・フーを始めとする80~90年代ポップカルチャーを引用しまくり、独特の愛憎りいまじった見解を展開するという文化論的な面も持っています。
が、そこに何かの意味を見出すのはかなり難解。『イットフォローズ』のドストエフスキーが可愛く思えてくるほどのとっつきの悪さです。
『リンクの冒険』が今更なんだっていうんだよ(;^ω^)!

 

そんなこんなで中々一筋縄ではいかない映画でした『アンダーザシルバーレイク』。今回の感想はこれで終わりたいと思います。
これはこれで嫌いじゃないけど、次回作ではもうちょっと取り組みやすい映画を所望しますミッチェル監督…。

 

↓本作を考察にするに当たって強力な武器になる一冊をご紹介

『アンダーザシルバーレイク』の謎を紐解くのに必携の書。
シルバーレイクがワナビ芸能人の町だってことを読んで初めて知りました…。なんで町中で常にオーディションやパーティーが開かれてるのかようやく腑に落ちましたよ。
劇中で引用される膨大なサブカルチャーに関しての解説もアリ。

なにより、『アンダーザシルバーレイク』は『ラ・ラ・ランド』と表裏一体であるという考察が目からウロコ( ;∀;)
確かに符合する点が多い…でも『アメイジングスパイダーマン2』自体が記憶から薄れつつありました(;^ω^)

なおイヌ殺しの犯人は結局分からずじまい…。
本作のカオスのすべてに回答が用意されているワケではなく、町山氏は「あんまり細かいこと考えすぎるとサムになっちゃうかもね」と結んでいます。
『アンダーザシルバーレイク』はそういう映画なんです。






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