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『来る』感想 途中で華麗なるジャンルスイッチ なんじゃこりゃ感あふれる怪作

今回はAmazonプライムビデオで配信開始となった話題作『来る』の感想記事です。
中島哲也 5年ぶりの監督作は、Jホラーと言っていいのか何なのか…とにかく名状しがたい異様な映画に仕上がっていました。

 

ところで私は中島哲也が嫌い。
「"怪作"と呼ばれるような作品を、ぜったいぜったい撮るんだ~いッ!」というわざとらしい力み方が生理的にダメなんですよ。あざとい。BGMの選曲もクド過ぎる。
『告白』も『松子』も、高い評価を得ているのは納得できますが個人的には全然受け付けなくて。
『渇き。』に至ってはヘドが出るほどつまんなかったです。だいたい監督自ら「グロ過ぎたら申し訳ありません」って謝りだすとか…この程度で謝らなきゃいけないならパスカル・ロジェやアレクサンドル・アジャは切腹だよ!

そんなこんなで中島哲也最新作である『来る』もぜんぜん見る気は無かったのですが…。
アマプラでやると(´・ω・)(・ω・`)ネー
タダだし(´・ω・)(・ω・`)ネー
つい見ちゃうよ(´・ω・)(・ω・`)ネー

 

なお原作は未読です。
だ~いぶ改変されてるらしいのでその辺の差を楽しむのもオツですが、今回はあえてまっさらな状態で映画から入ることにしました。

なお映画秘宝によれば、原作の『ぼぎわんが、来る』から一番変更が加えられているのは怪異の描き方のもよう。
原作では怪異には「ぼぎわん(=ブギーマン)」という名が与えられそのおぞましい姿も克明に描写されているようですが、映画版では「ぼぎわん」という名称はチラッと使われただけで後は「あれ」だの「それ」だの代名詞で指されるヴォルデモート仕様。
ぼぎわんが主人公らを襲う理由も原作では割とはっきり描かれるそうですが、映画版はそこもボカされてます。

 

まあ…「怪物になぜ襲われるのか」「そもそも怪物は何者なのか」あたりは敢えてはぐらかすのがホラー映画のマナーと言えなくもないので、ここはむしろ歓迎したいところですね。
そんな訳で、あえての原作未読の視点からの感想となります。

 

以下の記事 ネタバレ注意!!

 

来る

2018年 日本
監督:中島哲也
出演:妻夫木聡、岡田准一、小松奈々

来る

 

評価 C

 

優しい妻とかわいい娘にめぐまれ、順風満帆のエリート人生を送るサラリーマン・田原秀樹(妻夫木聡)。
しかし秀樹の周囲で次第におかしな怪異が起き始める。
その怪異が自分の幼少期の"ある経験"に起因したものであると気付く秀樹。さらに怪異が娘を連れ去ろうとしていると知った秀樹は、知り合いの大学教員に頼み込んで霊能力者を紹介してもらうが…。

というお話です、『来る』。
この秀樹が主人公なのが第一章で、その妻の香奈にスポットが当たるのが第二章。
そして第三章は、秀樹が助けを求める霊能力者たちが主役。
明確に三章構成になっているワケではありませんが、映画はきっちりと主人公を切り替えながら進んでいきます。

 

で、なんといっても第一章の主人公である秀樹がインパクト絶大。
一見すると子煩悩で働き者の好人物ですが、その正体はエクストリーム自分大好きッ子
自分以外に一切興味がなく、実は自分の娘にさえ無関心(子煩悩は周囲の評価を上げるための演技)。
そのマイルドゆえにタチの悪い亭主関白ぶりは、見ていて吐き気を催おすほど不快。
いっそのこと直接的に妻や娘に暴力を働いてくれれば邪悪なアイコンとして消費できるものを、妻夫木聡が渾身の演技力で"等身大感"を出してくるので「俺にもこういう所あるかも…(;´・ω・)」と身に積まされるところがなおさら不快です。

ヤなヤツ、ヤなヤツ!

 

その秀樹の被害者である妻(黒木華)もなかなかのクセ者。
当初はその立場から同情できなくもなかったキャラですが、物語が進むにつれ次第に本性があらわに。
実は彼女も夫に負けないくらいのエクストリーム自分大好きッ子。
自分を憐れむことにしか興味がなく、もちろん自分の娘にも興味はない。

ヤなヤツ、ヤなヤツ!

 

映画ではぼぎわんの正体も、何故ぼぎわんが田原家に目をつけたのかもはっきりとは描写されません。
しかしそれでも視聴者には分かってしまいます。こいつらの自業自得だと。

何の変哲もないフツーの人に宿る「ドス黒い負の感情」こそが、怪異がこの世に顕現するためのゲートである…。このアプローチはNetflixの新作ホラー『呪怨:呪いの家』とも通じるものがあります。
邪悪な存在は、家の外からドアを叩くのではなくむしろ家の中から発生するのです…。

 

一点の曇りもない美しい人生。
そこにひそむ歪みが、とんでもない邪悪を呼び寄せる…。

 

そんなこんなで、第一章と第二章は超楽しめました。それにふつーに怖かったです。やるじゃん中島哲也、見直したよ!みたいな。
でもこの映画が本領を発揮するのは第三章から。
ここから映画は正統派ジャパニーズホラーからジャンルをスイッチし、霊能力バトル頂上決戦コメディへと華麗な転身を遂げます。

 

ぼぎわんの跳梁に業を煮やした凄腕霊能力者の真琴は、怪異に対抗するべく全国の霊能力者仲間に集合をかけます。
そしてぼぎわんを物量で圧倒するという霊的ヤシマ作戦を決行!
政府や警察機関をも総動員し、田原家の近所に巨大な祭壇を築いて決戦に臨む!!

な、なにこの展開(;'∀')!?

しかも集合する霊能力者たちにもぼぎわんの呪いが発現し、なんと現場到着までに半数が脱落(死亡)。
リングに上がる前から勝負は始まっている!
物語は突然のバトルモードです。

これもう…明らかに白石晃士監督作の世界ですよね!?
『カルト』とか『貞子vs伽椰子』の展開ですよね、スゲー既視感あるんですけど!!

 

松たか子演じる凄腕霊能力者の真琴。
全身の傷跡が壮絶な戦いの歴史を物語る…。出る映画、合ってますよね(;^ω^)?

 

思わず椅子から転げ落ちそうになる超展開ですが、「アホくさ…」と思わせないのは真琴を演じる松たか子の確かな存在感ゆえでしょう。
この独特のスゴ味があるたたずまいは「滑稽に見えるかも知れないけど、これガチだから」というシリアス感をギリギリのところで保ちます。

…しかしこの松たか子自身がちょっとユーモラス。
スゴ味がある一方で、病院の食堂のラーメンを美味しそうに頂いたり缶チューハイを一瞬でキュッとあけたりして挙動が庶民的。そのギャップが"萌え"さえ生んでしまうコミカルさかげん。
その喜劇性は、取り乱す岡田准一に無表情で顔面パンチをキメるシーンで頂点に達してしまいます。
やっぱりコメディじゃんコレ!!

 

物語は真琴とぼぎわんが差し違える(多分)ことで終幕を迎えます。
そして、己の闇に立ち向かい一連の事件を生き延びた者だけが次の人生のステップに進んでいく…というオチ。

 

第二章で唐突に終われば、まあよくあるJホラーとして安易に消費できたかも知れません。
しかしこの驚天動地の第三章のおかげで、終わったあとに「え?俺いまなに観たの?」という困惑を生む怪作に。
この困惑感が中島監督の思惑通りなら…まあやっぱ大した御仁ですよね。好きにはなれないけど。

そんなわけで『来る』の感想でした。

 

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原作です。日本ホラー大賞受賞作で、宮部みゆきも綾辻行人も絶賛だとか。
たしかに、「ぼぎわん=ブギーマンが訛って変化したもの」ってアイデアだけでグっと来ますね。読んでみようかな。

 

 

カルト
怪現象で困ったら霊能力者が助けてくれたよ映画。
白石監督の"らしさ"が詰まった珍作中の珍作。なお霊能力者はアンクにしか見えない。エイジ、これを使え!!






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