『ルーク・ケイジ』黒い街の黒いヒーロー…でも全部がハンパすぎる

今回はいにしえのネトフリマーベルの遺産『ルーク・ケイジ』の紹介です。

マハラーシャ・アリを世に知らしめただけで役目を終えた感のあるドラマ…。

評価 :2/5。

キャストもBGMも黒染め!

出典:TMDB

Netflixマーベルの第3弾『ルーク・ケイジ』は、ヘルズキッチンからハーレムへと舞台を移し、黒人文化の磁場にどっぷり浸かった異色作だ。

ジャズ、ファンク、ヒップホップ――それはもう黒人カルチャーのフルコースである。
登場人物もほぼ全員黒人。主人公もヒロインも悪役も、脇役まで黒い。
70年代の“黒人による黒人のための映画”…いわゆるブラックエクスプロイテーション映画の精神を、現代風に蘇らせようとする明確なコンセプトだ。

 

 

スウィートクリスマス!ってなんだよ

主人公ルーク・ケイジ(マイク・コルター)は、怪力+無敵の皮膚というシンプルすぎる能力持ち。
銃弾を食らっても穴が開くのは服だけで本人は無傷。毎話「服が穴だらけ→本人無事→ブチ切れ」の流れが定番で、「もう新しい服買うの飽きたわ!」というセリフに頑丈系ヒーローの苦労が滲む。

戦い方も基本ゴリ押し。デアデビルのような緻密な格闘術はなく、殴って進む、以上。
絵的には単調だが、好意的に捉えればそれが差別化にはなっている…かも。

そして謎の口癖「スウィートクリスマス」。
一応伏線だが、初見では「何それ?」としか思えない。
意味不明なまま連呼されるので、じわじわと耳に残る謎ワードだ。

 

 

けいじ違いだぜ!

前作『ジェシカ・ジョーンズ』でチラッと出ただけで散々な目に遭ったルークは、本作冒頭ではスネてほぼ世捨て人。
そんな彼がハーレムの混乱に巻き込まれながら、自分の運命と責任を受け入れていくのが物語の縦軸になる。

ヒロイン兼セカンド主役は女刑事ミスティ(シモーヌ・ミスシック)。
吹き替えで観ると「ルークけいじ」と「ミスティけいじ」が変な韻を踏んでしまい、脳内で混乱ラップが始まってしまう…。
日本語吹き替えの意外な弊害だ。

そして前作から続投のクレア(ロザリオ・ドーソン)は、回復系サポートキャラとして都合よく万能化。
弾丸摘出、動脈結紮までこなす有能ぶり。それもう看護師じゃなくて超腕利きの救急医だろ!
チンピラくらいだったら自力で撃退する戦闘力もいつの間にか身に着けており、このままいけば『ディフェンダーズ』ではジェシカより強くなってそう。

 

 

ラスボスが4人もいる件

意外と掘り下げられる悪役勢

悪役の配置も特徴的だ。
前作『デアデビル』はフィスク一人。『ジェシカ・ジョーンズ』はキルグレイブ一人。
しかし本作はなんとラスボス4人構成

  • 笑顔担当:コットンマウス
  • 策謀担当:マライア
  • 狡猾担当:シェイズ
  • 狂犬担当:ダイアモンドバック

例によって4分の3が黒人。
人数が多い分、印象が薄くなるかと思いきやドラマの尺を活かしてそれぞれの背景を丁寧に描いているのは好印象である。

 

 

コットンマウスかわいいよ

特に印象的なのがコットンマウス。
ジャズに夢を託していたが、現実に押し潰されて悪の道へ堕ちた少し可哀そうな御仁。
演じているのは後にアカデミー賞俳優となるマハラーシャ・アリ。本作出演当時はブレイク直前に当たるが、既にオーラが違う

白い歯を見せて笑う姿は、自嘲とカラ元気の混合物。
権力欲の権化だったフィスクと比べるとコットンマウスは、第1話から悪企みが失敗して窮地に立たされる小物感が魅力だ。
ルークに邪魔されるたび「んん〜ゆるさ〜ん!!」とグラスを投げ、ちょっと冷静になったら負け惜しみで「ウエェッハッハッハ!やっぱり気に入ったぞぉ!」と笑う姿はバイキンマン系ヴィランの哀愁が漂う。

 

 

でも爽快感はない

中だるみがキツい…

そんなわけで面白くなりそうな要素は満載の『ルーク・ケイジ』。
だが実際は展開が遅く、序盤から中だるみがキツい。あげく最終回の終わり方が見事に脱力系。

最終回「まで」は悪くなかった。少なくとも許容内だ。
無敵のルークが因縁の記憶を手がかりに苦戦を乗り越える展開は、伏線回収も兼ねたグッドバウト。
だがその後のエピローグがすこぶる中途半端。

 

なにも解決してない

  • コットンマウス:仲間割れで死亡(主人公関係なし)
  • シェイズ:野放し
  • マライア:野放し
  • ダイアモンドバック:重傷だが復活フラグあり

つまり悪党ほぼ全員健在
「本当の戦いはこれからだ!」的な盛り上げもなく、徒労感だけが残る。

ルークは脱獄囚としての過去が暴かれ、まさかの投獄エンド。
ミスティは証人をあっさり殺され失意という、一切言い訳できない無能っぷり
「ときに後退しても進み続けるんだ…!」と車内でつぶやくルークに、
「いや、もうちょっと片づけてから言ってくれ」とツッコミたくなる。

 

引っ張りじゃなくて、放り投げ

続編ありきの企画だからクリフハンガーは仕方ない。
でもせめて“一区切り”くらいは欲しかった。
これじゃ「今までの戦いは全部無駄でした」と言ってるも同然…。正直がっかりし申した。

当時Netflixマーベルは
『デアデビル』→『ジェシカ・ジョーンズ』→『ルーク・ケイジ』と、
順調に面白さの偏差値を下げつつあった。

続く『アイアンフィスト』は更にズッコケ感あふれる出来で、当時からして「ネトフリマーベルでマトモなのはデアデビルだけ」という空気が醸成されていた…気がする。2025年現在になって実際『デアデビル』だけが続編作られてることが哀しいかなその裏付けだ。

だが黒人文化へのリスペクトと、コットンマウスの哀愁だけは悪くない…そんな『ルーク・ケイジ』である。マハラーシャ・アリのアーリーデイズとしても貴重。

 

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