『アイアン・フィスト』薄っぺらい主人公にショボすぎるアクション 何なのこれ…

今回は旧ネトフリマーベルの一作『アイアン・フィスト』を紹介します。

ネトフリマーベルの哀しい末路を決定づけてしまった印象…。

評価 :1/5。

あらすじ

出典:TMDB

15年前に飛行機事故で消息を絶った大企業ランド社の御曹司ダニー・ランドが、突如として街に戻ってくる。死んだと思われていた彼は、実は異世界クンルンで修行を積み、伝説の「アイアンフィスト」の力を授かっていたのだ。

だが帰還したダニーはかつての友人や企業の幹部たちに自分の正体を信じてもらえず、精神を病んだ放浪者扱いされる。
やがて彼はランド社をめぐる陰謀や闇の組織「ハンド」との戦いに巻き込まれ、光る拳を武器に自らの居場所と使命を模索していく。

 

 

かわいそうなダニー

当時の本家マーベル映画は宇宙規模の石ころ争奪戦の真っ最中。
現実の社会問題など「うるせぇ俺なんか体がアライグマなんだぞ!」で一蹴されそうな雰囲気だ。

それに対しNetflixマーベルは地に足がついていた。
盲目のマット、トラウマ持ちのジェシカ、差別を背負うルーク。
みな現実の弱者性を背負ったヒーローだ。

そして4人目のヒーロー、アイアンフィストことダニーもまた弱者属性を背負っている。
それは「頭がかわいそう」だ…。

 

 

悲しみのアメコミ体操第一

セレブの素質ゼロ

「遭難して死んだと思われていた御曹司が帰還」という筋立ては、同じくヒーロー系ドラマの『ARROW/アロー』と丸かぶり。しかし二作は似て非なる。

『ARROW/アロー』の主人公オリバーは、帰還時すでにセレブの素養を備えていた。だからこそ昼はプレイボーイ、夜はヴィジランテという二面性が成立し、それが物語の骨組みになっていた。

対してダニーは少年のまま異世界行きで15年も修行漬け。当然社会常識ゼロ。
都会に帰ってきても浮浪者スタイルで薄ら笑いを浮かべ、会う人ごとに「僕は死んだけど実は生きてて億万長者で異世界修行してきたんだ!」と吹聴し、当然のようにおかしい人扱いされる。
オリバーとの差は歴然。可哀そうすぎる。

 

ショボショボの体さばき

だがさらに可哀そうなのは、決定的にアクションシーンの迫力が足りていないことだ。

設定上のアイアンフィストは切れ味鋭い拳法家。
だが実写版のフィン・ジョーンズの体捌きは、平日の午前中にやってるご年配方向けストレッチ番組よりもヨレヨレ。しかも超スローで切れ味皆無。

「気を練る」と称してこの謎体操を毎話見せられるのはかなりキツい。
共感性羞恥と言うか何と言うか、カッコ良くないを通り越して気まずいのだ。

視聴者拷問タイムと化したこのアメコミ体操第一。もちろん、実際の格闘シーンもユルユル過ぎて見てられない。
アクションが売りのはずなのに、最大の見どころが最大の弱点になってしまっている。
これが可哀そうでなくて何なの。

 

 

アジアごちゃまぜ良くないカオス

「中国ってこんな感じでしょ?知らんけど?」

悪の組織「闇の手」は、『デアデビル』から続投の忍者軍団。
だが演出は中国と日本のごった煮で失笑もの…。
わざわざ仏壇の鈴(りん)に手紙を置いたり、PCの壁紙が浮世絵だったりと今時珍しいチープな東洋趣味だ。

たぶん世界地図で日本と中国がどこかも知らないであろうレベルの解像度。
シリアスなはずの敵組織が、結果的に外国人を嘲笑して再生数をかせぐ安いユーチューバーに見えてしまう。

  

脚本も脱力もの

加えて話の展開もトロすぎる。
観客が「本物だ」と分かっているダニーを、登場人物たちが延々「本物かな?偽物かな?それともバカかな?」と議論するのを延々と見せられる。何なのこれ?

一応、中盤以降はエンジンがかかる。
敵味方が目まぐるしく入れ替わり、ダニーの信念が試される。光る拳が炸裂する瞬間はやはりマンガ的高揚感があったし、アクションも徐々にマシになる。

 

 

薄っぺらい主人公もたまにはアリ?かも…

頑張って良いところを見つけながら観ようとしたが、残念ながら価値ある一作とは言い難い『アイアン・フィスト』。
実際、こいつの失敗がそのままネトフリマーベルの終焉を招いた気がする。

とは言え、ダニーのこの“おバカさ”こそが本作の個性と言うことも出来るだろう。
彼はある人物に対し「殺したいほど憎い!」と叫ぶが、同じエピソードの後半では「もー憎しみは克服したー!」とケロリと変わる。普通なら「なにこの脚本…」だが、そういう彼の純朴さと楽観性は、鬱屈した他のヒーローにはない貴重な資質だ。
ジェシカやルークが背負う重苦しさの中で、ダニーの無邪気さはむしろ清涼剤になる。

『デアデビル:ボーンアゲイン』でマットとジェシカは今も自身のダークな物語を刻んでいる。
ダニーと、あとルーク・ケイジにも、セカンドチャンスがあってもいいかも知れない…と思わないでもない今日この頃。

 

 

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