『呪怨:呪いの家』考察 時空も因果もゆがめる呪い…その全貌を解き明かす

Netflixオリジナルドラマ『呪怨:呪いの家』。
…面白すぎて一気見してしまいました。

 

とにかくもう、ストーリーが斬新。

次々と登場人物を襲う理不尽な恐怖。
そこには貞子や伽椰子などのアイコニックなホラーキャラは登場しない。
「見たら」→「1週間後に死ぬビデオ」など、恐さを具体化させるルール作りもない。
あるのはただひたすらの不吉さと悲惨さだけ。

 

90年代の実在の猟奇事件をたくみに絡め、呪いを「抗いがたい負の流れ」と再定義しているところに本作の面白さと新しさがあります。
Jホラーの歴史に燦然と輝く新たな傑作が誕生したことは間違いありません。

 

そんなワケで本作における呪いは「不可解なもの」そして「人知を超えたヤバい何か」として描かれています。
いきおい劇中に登場するアレやコレの現象に明確な説明をつけることはハナから不可能。その理不尽さは、始めから全てのピースが嵌まらないようにできているジグソーパズルのごとし…。
説明がつかないこと自体が本作のコワさなのです。

 

しかし、そうは言われてもちゃんと解釈をつけたくなるのが映画ファンのサガ。
今回は無理を承知で『呪怨:呪いの家』の謎にトライしてみたいと思います。

 

以下の記事 ネタバレ注意!!

 

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第一の呪い 女性監禁事件(1950年代)

あらまし

東京にある「家」が建っていた。
その「家」は関わる者に災厄をもたらす、呪われた物件だった…。

 

「家」の大家の息子は、若い女性を屋根裏部屋に監禁する。
屋根裏部屋は従来の間取りから改造されており、押し入れの天井からしか出入りできない隠し部屋になっていた。

女性は長年にわたって凌辱され続けついに妊娠してしまう。

 

ある日女性は大家の息子を包丁で刺殺。直後に自身も何らかの理由で死亡する。
事件記録では女性は出産したことになっているが、その赤ちゃんは行方不明。忽然と姿を消してしまうのだった…。

 

 

考察

劇中の描写の限りでは、すべての元凶と思われる事件です。
主人公ハルカの恋人・哲也をはじめ、劇中の登場人物が様々なタイミングで目撃することになる “赤子を抱いた髪の長い女性” はこの事件の監禁女性と思われます。

 

出典:IMDb

その佇まいには伽椰子とは違うコワさが。
なんかブツブツ言ってるけど聞き取れないのがステキにブキミ!

 

監禁女性の正体は、おそらく最終話のラストシーンを見る限りテレビタレントのハルカなのでしょう。後述致します。
事件のあった1950年代にハルカは生まれてすらいませんが、そんな因果など「家」はお構いナシです。

 

ただし、この監禁女性の霊がすべての呪いの震源地…という訳ではなさそう。
伽椰子のように自らガンガン手を下す悪霊ではないからです。むしろ呪いの連鎖の一部に過ぎない…という印象。
つまり監禁女性がヒドイ目に遭ったこと自体がすでに呪いだったという解釈です。最終話のオチとも符合します。

 

と言う事は、呪いの正体は特定の個人の怨念ではなく「家」に宿った一種の災害である…とも考えられます。
本作と同じNetflixオリジナルホラーである『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』にちょっと似てると思わなくもなかったり。

 

 

第二の呪い 小田島の幼少期

あらまし

時が経ち事件が忘れ去られたころ、ある家族が「家」に引っ越してくる。
父親と幼い姉弟の三人家族だ。

 

ある日、姉弟は押し入れの天井に隠し通路を発見。好奇心から足を踏み入れる。
そこで姉の方は何かを見て「お母さん?」と呼びかけながら近づき、そして忽然と消えてしまうのだった…。

仰天した弟はとっさに逃げ出すが、屋根裏部屋から現れた “若い女性” に追いつかれる。そして不気味な赤ちゃんを手渡される。

赤ちゃんを抱いてワケも分からずオロオロする弟だったが、その直後 “黒い女” がリビングの窓ガラスを割って家に乱入。赤ちゃんを奪い去っていく。

 

後日、姉の失踪はリビングの窓ガラスが割られていたことから誘拐事件の被害ということになる。
失意の父親はさらに後日、「家」の前の路地で叫び声をあげながら一瞬で消し炭と化してしまうのだった…。

 

 

考察

本事件に登場する “弟” が、のちの主人公・小田島です。
この忘れ去られていた過去が、小田島をして心霊現象にこだわらせる理由なのでした。

 

出典:IMDb

かつての生家である「家」を調査する小田島。
彼が呪いを受けずに生きていられるのは、その語り部だからなのか…。

 

屋根裏部屋にいた “若い女性” は、第一の呪いで登場した監禁女性の霊。
窓ガラスをぶち割って乱入してくる “黒い女” は、底辺人生まっしぐら美女のキヨミです。キヨミはこの赤ちゃんをトシキと名付けて育てることになります。

なお事件の当時にキヨミは生まれてすらいませんが、例によってそんな因果など「家」はお構いナシです。

 

 

第三の呪い キヨミの受難(1988年)

あらまし

事件から数年後。「家」は空き家となり荒れ果てていた。

 

女子高生のキヨミはその美貌から周囲の妬みを買い、悪友らに「家」に連れ込まれレイプされる。

屈辱の涙を流すキヨミは、呼び寄せられるように「家」の押し入れに閉じこもりすすり泣くのだった。
しかしふと気配を感じたキヨミが天井を見上げると、そこには屋根裏部屋からキヨミを見下ろす “若い女性” の霊が!

さらにこのときキヨミを陥れた不良女子高生らも次々と姿を消してしまう…。

 

 

考察

再び監禁女性の霊が登場です。

この時点では霊はキヨミに実害を与えませんが、この霊を見たことでキヨミの性格が豹変。
ふてぶてしく笑うようになり、目つきも挑戦的に。
さらには自分をレイプしたヤンキーを篭絡し、そそのかして母親(クソ毒親)を殺させます。

 

出典:IMDb

おそるおそる見上げるとそこには……!
なんでよりによってそんな場所に引きこもるんだよ!と言いたくなりますが、おそらく本人も気付かないうちに「呼ばれて」いたのでしょう。

 

ただし、霊がキヨミに乗り移って操っているという感じじゃありません。あくまでキヨミはキヨミ本人です。
何というか…タガが外れたような印象。
キヨミが本来持つ邪悪な面と不幸体質が一気に増幅された感じです。
事実、このあとキヨミは呪いを拡散させながらどん底の人生を送るハメになります。

おそらく、キヨミの転落人生自体がキヨミにかかった呪いなのでしょう。
すなわち、生かしもせず殺しもせずただひたすら対象を不幸にし続ける呪いです。
たまったもんじゃないですね(;^ω^)

 

呪いの効果に法則性が無いのは『呪怨:呪いの家』の怖さを引き立てる要素の一つでしょう。
後述の妊婦惨殺野郎みたいに「家」に関わる前からおかしくなっている人もいれば、不動産のおっちゃんのように何度も「家」に入っているのに無傷の人もいる。
小田島の父親のようにザラキを食らって蒸発(物理)する人もいれば、キヨミのように何年も生殺しにされる人もいる。

『ビデオを見たら死ぬ』的な法則性がなく、実態がつかめないところに異様な不気味さを感じます…。

 

 

第四の呪い 妊婦惨殺事件(1995年)

あらまし

6年が経過。
空き家だった「家」には若い夫婦が住むようになっていた。
しかしその夫婦の夫は、別の夫婦の妻と不倫関係。しかもその不倫相手を妊娠させており、すでに臨月を迎えるに至っていた…。

 

“別の夫婦”の方の妻は、不倫相手と一緒になるため夫の殺害を画策。
不倫を赤裸々にカミングアウトしたうえで「死んで♡」と夫に毒入りワインを勧める。

しかし激昂した夫により、逆に妻の方が包丁で喉をかっ切られ死亡。
夫はさらに妻の腹を包丁で切り裂き、血まみれの赤ん坊を取り出す。当然、赤ん坊はすぐ死亡。

 

一方、呪いの「家」の方でも惨劇が進行していた。
不倫野郎もまた、自分の妻を包丁で刺し殺していたのだ。
不倫野郎は良心の呵責からか直後に首吊り自殺。
「家」には二体の死体が転がっていた…。

 

“別の夫婦”の方の夫は、死んだ赤ん坊を「家」の庭に埋める。
「これはこの家のものだから」と言って…。

 

 

考察

入り組んだ事件です。
「家」に住む夫婦は当然ながら悲惨な運命をたどりますが、その夫婦と不倫という関わりを持った別の夫婦もまたエラい目に遭う。

「家」と直接関わりを持たない人間にさえ、あたかも病気が感染するように呪いが広がっていく…。
過去の『呪怨』シリーズでもおなじみのパンデミックパワーが炸裂です。

 

なお劇中の描写は壮絶を極めます。
実在の猟奇事件、名古屋妊婦切り裂き事件をトレースした残虐シーンはすさまじいの一言。この手の心霊系ホラーでは珍しい、超ドレッドノート級のグロ描写です。
“妊婦の腹に電話機” という、発想からして常人離れした異常極まる猟奇性を「呪い」に絡めた発想も素晴らしい。

 

なぜ電話機が妊婦の腹に?
という疑問には冴えた答えが見つかりません。
小田島は「厭なモノが出てこないようにフタをしたつもりなんじゃないですか?」と解釈していました。
しかし『呪怨:呪いの家』の世界では電話は人を殴るためのアイテムと定義されており、すでにそれ自体が「厭なモノ」です。第一、電話機は犯人が妊婦の腹に置いたのではなく「本人も知らないうちにいつの間にかそこに置かれていた」ものでした。

 

着信拒否や着信バイブなどの気の利いた機能など無かった時代、電話の呼び出し音は止めることのできない「呼びかけ」でした。鳴りまくる電話のコール音は、こちらの意志など無視して襲いくる呪いの足音なのでしょう。
すなわち、電話機を介して”別の夫婦”の方の夫に呪いがかかったと言えそうです。事実、この後すぐコール音のなか呪いで死ぬし。

 

 

第五の呪い 最後の夫婦(1997年)

あらまし

さらに時が経ち「家」には別の夫婦が住んでいた(以下、新夫婦)。
今回も、妻の方は臨月の妊婦だ。

 

新夫婦はその「家」が忌まわしい事件の舞台となったことを承知でこの家を選んでいた。
過去の事件など(゚ε゚)キニシナイ!!夫婦だったが、そんな彼らをおぞましい心霊現象が襲う。過去に「家」で起きた悲惨な光景が、突然眼前に現れたのだ。

 

事態の究明と解決に向け、小田島、ハルカ、哲也の母らは「家」に集う。
哲也の母は呪いの根本を具現化させ、屋根裏部屋の監禁女性の霊と対峙する。しかしその姿はこれまでの “髪の長い女性の霊” ではなく、激グロの腐乱死体だった。

 

一方、新夫婦をも災厄が襲う。
妻は忽然と現れたブリーフ一丁男に襲われ意識不明の重体に。
夫は叫び声をあげながら一瞬で消し炭と化してしまう。40年前、小田島の父親がそうなったように…。

 

 

考察

『呪怨:呪いの家』のシリーズ構成的に、クライマックスに相当する事件です。

 

新夫婦の臨月の妻は、大家の息子の霊(=ブリーフ一丁男)に襲われ錯乱状態に。
救急車で搬送されていきますが…おそらく助からないでしょう。
そして赤ちゃんも忽然と消えてしまうのでしょう。

 

夫の方も必殺の呪いを受けチリと化してしまいます。
直接的に絶命の瞬間が描かれるのは、Jホラーでは珍しいですよね。

 

しかし…屋根裏の監禁女性が腐乱死体となって現れた理由はよく分かりません。
第一の呪いの監禁女性は、別に腐って死んだ訳ではないからです。

 

もしかしたらあの腐乱死体は、第一の呪いの監禁女性とは別人なのかも知れません。

ひょっとして第5話の終盤で失踪(あるいは消滅)したキヨミの成れの果てなのか?…とも思いましたが、それはどうやら不正解みたいです。服が違う。

腐乱死体が着ているのは、腐敗がすすんで判別しがたいですが恐らく前開きのワンピースです。死体と一緒に腐っているところを見ると、たぶんこの女性が死んだときに着ていたものなのでしょう。
しかしキヨミは失踪時にワンピースなど着ていません。辻褄が合わない。
同じ理由で、テレビタレントのハルカもこの腐乱死体とは別人でしょう。ハルカがラストシーンで襲われた際も、お召し物はやはり前開きワンピースではありませんでした。

その観点で攻めるなら、キヨミを凌辱した女子高生らをはじめ失踪また死亡時にワンピースを着ていた人物は劇中に登場しません
いったい誰なんだお前は!

腐乱死体の服はボロボロになったマタニティパジャマに見えなくもない…と考えるなら、新夫婦の方の妻という線もあるかも知れませんが…。

 

結局、真相は不明です。
「第一の呪いより前に、あの部屋で死んで死体が腐るまで放置された人物がいた」や「実は小田島の母」などの仮説は浮かびますが、どれも裏付けに欠ける…。
最終話になって正体不明の人物がキーキャラとして登場するとか、ほんと意地悪ですね!ヽ(`Д´)ノプンプン

 

 

第六の呪い ハルカの最期(1997年)

あらまし

“監禁女性の霊” の声を録音したテープを供養すれば、呪いが解けるのではないか…。
テープに入っていた「イッショニ埋メテ…」の声の通り、ハルカはテープを「家」の庭に埋める。
その様子を哲也の母親の霊が笑いながら見下ろす。哲也の母もまた「家」の呪いに取り込まれてしまったのだ。

 

テープを埋め終わるハルカ。
「これで終わったの…?」
不安げな表情のハルカを、後ろからブリーフ一丁男が襲う。

 

出典:IMDb

 

 

 

考察

『呪怨:呪いの家』の最終話ラストを飾る、珠玉のバッドエンドです。

 

ブリーフ一丁男は、もちろん第一の呪いに登場した「家」の大家の息子でしょう。
その息子に襲われるのは第一の呪いの被害者である監禁女性…。

という事は…

監禁女性=ハルカ

という衝撃の図式が成立してしまいます。
第一話で哲也が、すりガラス越しに映ったハルカを幽霊と錯覚したのは偶然じゃなかったのです。だって同一人物だもん!
こげんオチ、想像もしきらん!

 

呪いを終わらせることを目的に行動してきたハルカが、最終的にはその呪いのオリジンと化してしまう…。
この後味の悪さ!
この救いの無さ!
「なにをやっても結局ムダ」という、圧倒的な絶望感!

このラストシーンをもって『呪怨:呪いの家』はJホラー新時代の傑作となりました。と思う。

 

↑書き足りないのでもうちょっと考察です。

 

 

 

『呪怨:呪いの家』関連まとめページはこちら。

  

 

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