ブラックミラー傑作選——正気と狂気の狭間3エピソード

ブラックミラー。
それはNetflixオリジナルドラマの人気作。

未来テクノロジーが人間のダメさ加減を100倍に増幅して襲いかかる——そんな不幸の発明品カタログと呼べる雰囲気が特徴の、言わばIT版世にも奇妙な物語です。

このドラマの特徴は一話完結であること。
つまりどこから観てもOK。第一話から順番に世界観を追う必要はなく、どのシーズンのどの話から観ても(ごく一部に例外はあるけど)まず大丈夫です。

となると当然湧く疑問「で、結局どの話が面白いの?
という訳で今回はブラックミラーの傑作エピソード3選をご紹介します。
情報技術の発達で人間の暗部がブーストされる雰囲気、クセになりますよ。

 

 

宇宙船カリスター号(シーズン4第1話)

出典:https://www.themoviedb.org/

制作:2017
監督:トビー・ヘインズ
主演:ジェシー・プレモンス、クリスティン・ミリオティ、ジミ・シンプソン

宇宙の果てで陰キャが暴走

舞台は未来。ゲーム会社CTOのロバート・デイリー(ジェシー・プレモンス)が、仮想現実ゲーム「宇宙船カリスター号」を操る。
部下のナネット(クリスティン・ミリオティ)や同僚ウォルトン(ジミ・シンプソン)らを巻き込み、宇宙船の艦長として君臨するが、ゲームの世界と現実の境界が揺らぎ始める。

ジェシー・プレモンスが演じるデイリーのキモさ(最大級の賛辞)が、このエピソードの推進力だ。
自己愛の塊みたいな陰キャが技術の力で宇宙の帝王気取りになる姿は、まるでSNSでイキるオタクの最終進化形
プレモンスの「俺は悪くない!」と主張する目つきが、観る者の背筋にゾクゾク走らせる。

クリスティン・ミリオティの反骨精神も鮮烈で、彼女の気概はまるで銀河反抗期
脚本はブラックミラーらしいテクノロジーの暗部をえぐりつつスター・トレック風のSFパロディを織り交ぜ、シリアスとギャグの狭間でニヤリとさせる。

このエピソード、技術が人間の黒い欲望を増幅する姿を笑いものにしつつ、ちゃんと考えさせられる点で非常に秀逸。
ブラックミラーの真髄を凝縮したこの一話、最初に観るエピソードとして超おすすめだ。

 

 

サン・ジュニペロ(シーズン3第4話)

出典:https://www.themoviedb.org/

制作:2016
監督:オーウェン・ハリス
主演:ググ・ンバータ=ロー、マッケンジー・デイヴィス

それって本当にハッピーエンド?

1980年代のネオンが懐かしくもまぶしい仮想リゾート地「サン・ジュニペロ」で出会う、ヨーキー(マッケンジー・デイヴィス)とケリー(ググ・ンバータ=ロー)。
現実世界の肉体を離れ死後も心だけで存在できる未来型クラウド天国にて、ふたりは惹かれ合い愛を育むが——このリゾート地、ただのディスコ天国では終わらない。

80年代レトロ感で包み込む演出とは裏腹に、語られるのは死と選択と記憶という、現代人の脳内ブラックボックスをこじ開ける哲学系サイエンス・ロマンス。
あの「ピコーン音」が示す未来。それを感動と受け止めるか、デジタル墓場と恐れるかは視聴者の倫理観とメンタルの調子次第だろう。

ただここまで感情を揺さぶりながら映像も脚本も演技も完璧にチューニングされた一編は、やはり傑作と呼ばざるをえない。これもまた、非常に「ブラックミラーらしい」エピソードだ。

 

 

ホワイトクリスマス(シーズン2第4話)

出典:https://www.themoviedb.org/

制作:2014
監督:カール・ティベッツ
主演:ジョン・ハム、ラフィ・スポール

何一つホワイトじゃないクリスマス

雪深い山奥の小屋で、謎の男マット(ジョン・ハム)とジョー(ラフィ・スポール)がふたりきりで暮らしている。
しかも10年以上

舞台はほぼ密室、登場人物は基本二人。
語られる過去の出来事を通じて、視聴者は少しずつ「この設定、おかしくないか?」という感覚を育てていく。そしてその違和感は、いずれ信じたくない真実として牙を剥く

とにかく“居心地の悪さ”の演出が天才的。画面に映る何かが常に不自然で、ブラックミラーお得意の「人間の尊厳をそっと捨てた未来」がじわじわと浮かび上がる。
ジョン・ハムが紳士に見える瞬間すら演出の罠。
じっとりと嫌な汗をかかせる会話劇の背後に、倫理どころか人間性の崩壊がスタンバイしている。

サン・ジュニペロのような希望はなく、毒の濃度で勝負する逸品。クリスマスの装飾が逆に残酷さを引き立てるブラックユーモアは、ブラックミラーの「らしさ」全開だ。

 

 

なおタイトルの『ブラックミラー』の由来は、電源を切ったスマホがそう見えるからだそう。
いまこの画面をスマホで見ている貴方にはちょっとドキッとする話ですね。
もっとゾクゾクしたい方は、当ブログの他記事もどうぞ。

 

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