『エイリアン』シリーズ――SFホラーの金字塔にして、ゼノモーフの咆哮と人類の悲鳴が響き合う不朽のサーガ。このシリーズは「創造物と被造物」「巨大企業の闇」「科学の傲慢」などの哲学的要素を常に内包してきた。
しかし「常に」描きすぎたせいで、いくつかは定番ネタ化。
むしろ繰り返される間抜けな「あるある」にこそ味が出る境地に至っている。
今回は愛すべき定番あるあるを、3つに絞ってご紹介したい。
ダクト、通りすぎ問題
人間は狭い場所に本能的な恐怖を抱く。
身動きが取れなくなったら?
誰かに襲われたら?
ホラー映画において「狭い場所」は不安を煽る鉄板アイテムだ。
しかし『エイリアン』シリーズの住人たちは、通気ダクトにやたらと突っ込んでいく。ゼノモーフも人間も、溢れんばかりのダクト愛だ。
初代『エイリアン』では、ゼノモーフがダクトを我が物顔で闊歩。人間がうっかり入れば「ここはオイラのテリトリーだぜ!」とばかりに襲いかかる。
『エイリアン2』の生存少女ニュートはダクトを庭のように駆け回り、その小回りで生き延びる。アンドロイドのビショップも超狭くて超長いトンネルを這う。
『エイリアン3』ではイヌモーフがダクト内を疾走するPOV視点が鮮烈――さすが若きフィンチャー、すでにキレッキレだ。
『エイリアン4』では200年後のリプリー8号がダクトに潜りゼノモーフを回避。一回死んでもダクト好きは相変わらずのリプリー。
そして『ロムルス』では超狭いトンネルに無重力ネズミ死体がステキに浮かぶ。狭いうえに汚ねぇ。
狭い場所を愛しすぎるこのシリーズに「実は廊下も歩けるんだよ」って優しく教えてあげたい。
通信、途切れすぎ問題
『エイリアン』の世界では通信は途切れるために存在する。箸が転んでも通信途絶。
記念すべき初代『エイリアン』では、ノストロモ号のクルーが惑星に降り立った途端、通信が砂嵐。こうしてフェイスハガーの第一犠牲者が誕生するのだった。おめでとう。
『エイリアン2』では植民惑星LV-426からの電波が途絶え「通信が切れたらゼノ大暴れ」という図式が確立した。海兵隊のボディカムもゼノの無双乱舞に合わせてすぐ砂嵐化する。
『エイリアン3』に至っては宇宙刑務所なので最初から通信手段皆無。無慈悲。
『プロメテウス』での地図作成担当は、通信途絶で迷子になり間抜けな死に様で退場。地図とは。
『コヴェナント』では自称神様のイカれアンドロイド・デヴィッドが珍しく「意図的」に電波をぶった切る。
そして最新作『ロムルス』はシリーズの伝統を忠実に継承し「ゼノ大暴れ→通信寸断→孤立無援」の黄金リレーをソツなく完走。まるで学級委員長が几帳面に宿題を提出するような模範的な途絶っぷりだ。
研究者、フラグ立てすぎ問題
『エイリアン』シリーズの科学者たちは「知の傲慢」を体現する格好のヴィランだ。
だがいい加減にしろよ、研究熱心すぎだろ! 毎回ゼノモーフをいじくり回してロクな目に遭わない。
査読する側も「またコイツらか」と頭を抱えそう。
初代『エイリアン』ではアンドロイドが「クルーはゼノモーフ回収(と研究)のための捨て駒」と暴露。企業の冷酷さが炸裂する。
『エイリアン2』の社畜はゼノで一儲けを企むも自滅。浅はかさ銀河チャンピオンの座を欲しいがままに。
『エイリアン4』ではゼノの生物兵器化プロジェクトという失敗確定の企画を始動し、見事に玉砕。
『プロメテウス』では金持ち老人の不老不死ツアーが宇宙の果てで大惨事に。老人は宇宙人に張り倒され、参加者はほぼ全滅。迷惑すぎる。
『コヴェナント』のデヴィッドは、狂気の研究の果てにゼノモーフを”完成”。人類には災厄だが、研究者としてはシリーズ唯一の成功者かもしれない。
そして『ロムルス』では、ゼノの遺伝子を妊婦に注入すると言う暴挙に。そのせいで観客の予想をブッちぎる超カオスな展開が炸裂する。
もうやめようぜ、ゼノモーフ研究して良いこと一つも無いだろ!
こんな「あるある」を並べるとまるで『エイリアン』がギャグ映画のようだが、そこがこのシリーズの愛嬌だ。
通信が途切れ、ダクトを這い、研究者が暴走する――この繰り返しは、まるで宇宙の片隅で延々と続くシュール系コント。
それでもゼノモーフの神々しいグロさや暗闇で響くクルーの悲鳴は、毎度我々の心を鷲づかみにするのだ。

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他にもあるから見ていって。良ければ。

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