
ここまでどうしようもない主人公も稀ね。
あらすじ
制作:2024年
監督:クレイグ・ゾベルほか
主演:コリン・ファレル、クリスティン・ミリオティ、レンジー・フェリズ
腐敗と暴力が日常茶飯事のゴッサム・シティ。
バットマンが静かに目を光らせるこの街で、犯罪王ファルコーネの右腕だったオズワルド・“オズ”・コブーー通称ペンギンは裏社会でのし上がろうと画策する。だがその道は血と裏切りにまみれた泥沼の冥府魔道だった。
一方ファルコーネの娘ソフィアは、父の遺志を継ぐべく暗躍を開始する。
二人の極悪人が火花を散らす、ゴッサム版“仁義なき戦い”がここに開幕!
クズ中のクズ!
心に傷を抱えた男が裏社会でのしあがる…そんな「ゴッサム版ゴッドファーザー」を期待して観始めたが、これ全然そんな話じゃなかった。
なにしろ主人公のペンギン、クズ過ぎである。
すぐ仲間裏切るし、すぐカッとなって人殺すし、10しゃべると18くらい嘘。
悪いとかイヤなやつとかの前にクズの極みだ。
だがそんな主人公像こそ本作『ザ・ペンギン』の真骨頂。
嘘八百万で築いた王国に君臨するも誰からも信頼されず、力を得るごとにさらに孤独を深めていく。
観ているこちらも「こいつ、次の瞬間には裏切るな」と予測できるほどの安定した不安定さだ。
もう一人の主人公、ソフィアも印象的。
本来マトモだったのに、周囲からイカレポンチ扱いされ続けて本当にイカレポンチと化す悲しきモンスターだ。
その内側には虐げられてきた者だけが持つ、研ぎ澄まされた憎しみがある。
ペンギンが調子こくほど、彼女も自分の中の闇を深めていく。
クズvsイカレポンチの図式が、ゴッサムの闇を重厚に浮かび上がらせる。どちらもあまりに人間らしい弱さと欠陥を抱えつつ、どちらも同じくらい盛大に人間らしさを踏み外している。
この街に善悪の境界線なんてものは存在しない。あるのはただ、誰がより深く堕ちるかというチキンレースだ。
美しき退廃、ゴッサム
映画『ザ・バットマン』の世界観を受け継いだビジュアルも精緻。
朝焼けのゴッサムシティの美しさには息を呑む。汚ねぇ。でも綺麗。
毎朝撮影前に3時間かけて特殊メイクしたというペンギンのビジュアルも圧巻だ。
演じているのは「コリン・ファレル」だが、原型留めなさすぎて「ファ」ぐらいしか残ってない。
かつてのダニー・デビートによるタキシード+傘+小男というアイコニックなビジュアルを敢えて捨てて、「今そこにいる活きたキャラクターをゼロから創造する!」というコンセプトを徹底させている。
こんなブサイクなキャラをここまで緻密に構成する制作陣の熱意に脱帽だ。
『ザ・バットマン』のサーガの1ページではあるが、物語は独立しており予備知識も不要。
多少のネタバレになってしまうが、バットマンは一切出てきません。
退廃と暴力の美学をここまで徹底して描き切った作品は稀有と言えよう。
アメコミ知らない人にも自信をもってお勧めできる傑作だ。
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