
バリー、すぐ殺すからなぁ…。
あらすじ
制作:2018年
監督:ビル・ヘイダー
主演:ビル・ヘイダー、サラ・ゴールドバーグ、ヘンリー・ウィンクラー
元海兵隊員にして、現在は殺し屋業を営むバリー・バークマン。
殺しの依頼で訪れたロサンゼルスで、彼はふと演劇クラスに迷い込む。
彼はその場の空気に魅了され、俳優になるという突拍子もない夢を抱くようになる。
恩師や仲間との出会いが、彼の人生を思わぬ方向へと引きずっていく。
…と思いきや、殺し屋業界はそんな甘くない。
チェチェン・マフィアやボリビア人ギャングとの抗争、警察の捜査、過去の罪の影がじわじわと彼を追い詰める。
俳優としての「表の顔」と殺し屋としての「裏の顔」が交錯する中、バリーは「人間らしさ」を手に入れようともがき続ける。
「これ笑っていいのか!?」という笑い
「裏の顔が殺し屋」映画はモビルスーツの種類と同じくらい多数存在するが、そこに「表の顔は俳優志望」をぶち込んできたのが本作。
え、殺し屋が?俳優に?
なんでそこ混ぜた?
この混乱こそ本作の妙味だ。
バリーは仕事と称して人を殺しまくってきたが、常に「俺は本当はいいやつなんだ」と罪悪感に苛まれている。
だがその「いいやつ」は彼の主観に過ぎない。冷酷な決断を平然と下す彼は、実際は「優しいサイコパス」だ。
だからこそエピソードは常に血まみれ。
笑っていいのか、おののくべきか。その境界線を巧みにぼかしつつ、いつも「ちょっと笑える方」に天秤を傾けてくる。
エミー賞をかっさらったのも納得の、非常に緻密に設計された語り口だ。
優しいサイコパスの人間のフリ奮闘記
本作の魅力は、何を置いても主人公バリーのキャラ設定に尽きる。演じるビル・ヘイダーがエミー賞を獲ったのも納得の、複雑怪奇なキャラ造形だ。
「優しいサイコパス」であるバリーにとって、俳優になることは「自分にはない人間性を模倣する」こと。まるで怪物が人間の皮でできたチョッキを着て、必死に人間のフリをしているような哀れさと滑稽さがある。
ここで立ち上がる「じゃあそもそも演技って何?」という問い。これこそが本作を通底する哲学的な深みだ。
…と、しかつめらしく語ってしまったが、ジャンルはあくまでブラックコメディ。
深みはあるが、軽い気持ちで試せるコンテンツなのが強い。
バリーと周囲の人間関係の変化も面白おかしく、俳優業と殺し屋業が相互に作用して生まれるドタバタなカオスは普通に笑えてしまう。1話30分と見やすいのも嬉しい。
この「深みと笑いのバランス感覚」、まさに奇跡的な秀逸さだ。

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