『エイリアン:アース』第5話感想 エイリアンの管理、テキトー過ぎだろ!突然の前日譚

ユタニ社の内装、なんなのアレ。

なんで真田幸村みたいなやつがアサルトライフル持ってるの?

出典:https://www.themoviedb.org/

突然の前日譚

『エイリアン:アース』第4話感想 箸休め回だが不穏さみなぎる
第4話は静かながら大胆な展開が潜み、登場人物たちの内面に不穏な爆弾が撒かれました。いったい誰が最初に爆発する?

↑前話の感想はこちら。

 

舞台は17日前にさかのぼり、マジノ号が地球墜落に至る経緯が描かれる。
65年ぶりの地球帰還を目前にし、宇宙船の航行システムが故障。さらに燃料タンク爆破、危険生物の脱走と連鎖的にトラブルが発生する。
乗組員たちは疑心暗鬼に陥り、互いの生存率を削り合う。

第1話冒頭でチラッと登場して出番終了し、本編では既に肉片と化していたマジノ号乗組員。彼らが今回は血しぶき担当としてまさかの主役昇格だ。
ウェンディもハーミットも出てこないのに、画面の密度はやたら濃い。

 

 

1作目『エイリアン』への熱烈なラブレター

よみがえるノストロモ号の悪夢

今回のエピソード、一言で言えば「ノストロモ号の亡霊がマジノ号に取り憑いた回」だ。

リドリー・スコット版の1作目『エイリアン』の湿った閉塞感を、これでもかと再現してくる。『エイリアン:ロムルス』がシリーズ全体へのオマージュだったのに対し、今回は1作目オンリーの一点突破。その心意気や良し。

天井からは正体不明の雫がポタポタ、鎖は意味もなく垂れ下がり、照明は常に半壊。
あの「汚ねぇ工場感」をここまで忠実に再現するのは、もはや愛というより執念だ。
しかも疑心暗鬼に陥ったクルーが一人ずつ宇宙生物に血祭りにあげられていく王道展開。
猫まで出てくる。

これはもう「ぼく1作目が好きすぎてつらい!」という叫びを映像化したような回だ。
ボスのノア・ホーリー自らが監督椅子に座っているだけあって、演出の密度も尋常じゃない。

 

よみがえる『プロメテウス』っぽいバカさ

だが、その愛情の対象が「ホラーの構造」だけでなく「登場人物の知能指数」にまで及んでしまったのが問題だ。

特に生物学者チブゾ。こいつは今回のMVP。
血吸いゴキブリをまるで夏休みの自由研究みたいなテキトーな虫かごに入れて保管し、案の定脱走させる
さらに眼球タコの容器は「蓋を閉め忘れる」という、もはやギャグ漫画の領域に足を踏み入れた失態。

結果、彼女ひとりで二種類の殺戮生物を野に放ち、船内の死者数を倍増させるという大戦果を挙げた。
これはもう伝説の珍作『プロメテウス』級の知性と呼んで差し支えないだろう。

そして他の乗組員も負けていない。
死んだ魚の目をしたあばれる君ことテン氏はコールドスリープ中の美人クルーの下着姿を遠慮なくガン見し、船長代理は性欲に負けて同僚とこっそりエッホエッホするし(あげく監視カメラに声付きでばっちり収録)、医療班ラヒムは懲りずに何度もエイリアン相手に医療行為を試みて自滅。
船内はさながらバカの見本市だ。

もちろんこれは単なるコメディではなく「企業の都合で65年の人生を奪われた人間たちの劣化」をシニカルに描いているのだろう。
だが、そう理解してもなお「もうちょっと何とかならなかったのか」というツッコミは止まらない。

 

 

モローの孤独

 人間より機械に近い彼

今週のもう一つの焦点は、モローという男の掘り下げだ。

彼は「人間50%・機械50%」という、シンセともハイブリッドとも異なる存在。
65年もの歳月を企業に売り渡し、その代償として娘と過ごすはずだった人生を丸ごと失った。
予定通り帰還できても娘はすでに老女。
しかも現実はさらに残酷で、娘は彼の帰還を待たず事故死。
もうモローには企業に忠誠を尽くす以外なにも残っていない

印象的なのは娘の死を悼んで涙を拭う仕草と、ゼノモーフのヨダレを拭う仕草が同じ構図で描かれる場面だ。
人間的感情と、冷徹な生存本能が同じ所作に収束する瞬間。切ない。そしてクール。

モローは身体こそ半分人間だが、心は限りなく「人間0%」に近づいている。
守るべきものを全て失った人間ほど、予測不能で恐ろしい存在はない。
今後ウェンディやスライトリーにとって最大の脅威となるのは、ゼノモーフではなくこの男かもしれない。

 

さてどうなるあのチェストバスター

物語構造としては、先週の「バネ縮め回」に続く前日譚。残り3話という尺を考えれば、次週あたりで一気に物語が加速するはずだ。

だがウェンディがヨシヨシしていたチェストバスターの行方、アレが気になってご飯しか喉を通らない。

アレ、2時間もすれば成体になる。
つまり血の雨が降る未来がほぼ確定しているわけで。
今回もウェンディが文房具で倒してくれればいいけど、当のウェンディはゼノモーフに妙な共感を抱き始めている。…おいおい「ねぇこれ飼っていい?」とか言い出すんじゃないだろうな。
良いことが起きる気配が何一つない。

 

今回のエピソードは「愛と愚かさと喪失感」がごった煮になった、見ごたえある前日譚だった。
正直ちょっと失笑だったが最後には妙な寒気が背筋を走る。

次回、血の雨が降るのか、それとも酸の雨が降るのか——。とりあえずあと1週間待とう。

 

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コメント

  1. ニュート より:

    テンの気持ち悪さはもっと沢山描いて欲しかった

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