派手な音響と大音量のBGMは映画の醍醐味!
でも、ときに静まり返るシーンがそれを上回るインパクトを出すことがあります。
今回はそんな印象深い静寂シーンを、3つだけ厳選してご紹介します。

(……)

🥇1位 ザ・レイド GOKUDO

制作:2014年
監督:ギャレス・エヴァンス
主演:イコ・ウワイス、アリフィン・プトラ、松田龍平
前作の惨劇を生き延びた元SWAT隊員ラマは、汚職撲滅のため潜入捜査官として新たな任務に挑む。
刑務所でマフィアの幹部と接触し、出所後に組織に潜入するラマ。
だが組織と日本のヤクザとの抗争が絡み合い、ラマは裏切りと暴力の渦に巻き込まれていく。
宿命の戦い、その直前の静寂
物語終盤。
イコ・ウワイス演じるラマが最後の決戦に向かう。
しかし道中に立ちふさがるのは、超人的戦闘力を持つ数々のボスキャラたち。
さながらカプコン製ゲームの終盤ステージだ。
壮絶な戦闘の果てに、
ベースボールバットマン→撃破
ハンマーガール→撃破
この時点でもうラマのHPは赤ゲージ、回復アイテムも底を付いた状態だ。
だが満身創痍の彼の前に登場するのがセセプ・アリフ・ラーマン演じるキラーマスター。
目が合った瞬間、互いに「こいつ…できる」と察する。
達人同士の視線が散らす無音の火花。構え、間合い、沈黙。
緊張と表現するには生ぬるい、静寂の美学の頂点だ。
そして始まる伝説的格闘シーン。どっちかが死ぬまで終わらない、映画史上に残る血みどろバイオレンスバトル。
沈黙が導く暴力の美学。その極致である。
🥈2位 エイリアン:ロムルス

制作:2024年
監督:フェデ・アルバレス
主演:ケイリー・スピーニー、デヴィッド・ジョンソン、アーチー・ルノー
2142年、植民惑星ジャクソンで搾取される若者たちは、自由を求めて廃船「ロムルス」へ潜入。
だがそこには冷凍休眠から目覚めた各種エイリアンが待ち構えていた。
主人公レインは仲間とともに脱出を試みるが、次々と襲い来る脅威により状況は悪化。物語は絶望の深淵へと突き進む。
宇宙という「絶対の孤独」
映画冒頭、いきなり訪れる無音の数十秒。
『エイリアン』シリーズの伝説的キャッチコピー「宇宙では貴方の悲鳴は誰にも聞こえない」を完膚なきまでに実演している。
画面には巨大宇宙船がゆっくりと迫ってくる。大迫力だ。
なのに音はゼロ。
違和感というより、もはや“音がないこと”が怖い。
もちろん、エックスウィングが「ドカーン!」とタイファイターを撃墜するのも映画的快楽としては大いにアリだ。
だがエイリアンシリーズにおいては、沈黙こそが最強のサウンドエフェクト。音がないからこそ誰も助けに来ない。そして悲鳴は空間に吸い込まれていく。
この静寂が、これから始まる惨劇を予感させる。
クールというより冷酷。だがその冷酷さが、シリーズの美学を再確認させてくれる。
🥉3位 ドライヴ

制作:2011年
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
主演:ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、ブライアン・クランストン
昼は整備工場のメカニック、夜は犯罪者の逃走を請け負う“逃がし屋”として生きる寡黙な男ドライバー。
隣人アイリーンとその息子との交流に心を開き始めるが、彼女の夫が刑務所から戻ったことで事態は暴力沙汰へと発展。
ドライバーは愛する者を守るため、血まみれの抗争へと身を投じる。
愛と死、静寂と暴力
映画中盤。
エレベーターという密室に、幸薄い人妻と孤独なドライバー。
…と、もう一人の男。この男が実は裏社会の殺し屋で、人妻を殺そうと隙を伺っている状況だ。
人妻とドライバーがキスを交わす。
瞬間、現実の音はフェードアウト。照明は落ち、世界はふたりだけのものになる。ロマンチックそのものだ。
しかし次の瞬間、ドライバーが鬼神モードに突入。
血みどろパンチ一閃で殺し屋の顔面骨を粉砕。さらに引き倒してからの踵クラッシュで見事に頭蓋骨を踏み砕く。
エレベーターの床は即席のホラー美術館だ。
あまりの落差に観客の脳内もクラッシュ寸前。
キスから殺戮までの距離がゼロ秒という、映画史に残る“情と暴”のジェットコースターだ。
このシーンが凄いのは、ただのギャップ演出じゃないこと。
沈黙と暴力が同じ密度で共存していて、どちらも嘘じゃない。愛の一瞬も頭蓋骨クラッシュも、ドライバーの中で同じ熱量で併存している。
それがこの映画の美学であり、狂気でもある。
エレベーターという密室で、愛と死がすれ違う。
これぞ映画的表現の極致と呼ぶべき名シーン中の名シーンだ。
という訳で、映画史上最高の静寂シーンBEST3でした。
当ブログでは他にも色々な観点で映画を語り中。良かったら見て行って下さい。
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