『ボーイ・キルズ・ワールド 爆拳…なんとか』の感想です。
予告編から期待した通り、とにかく全編誰かが誰かを殴ってるシーンばっかりで最高でした。

久しぶりに目いっぱい活躍するヤヤン・ルヒアンが観られて眼福だったわ。
血しぶきに次ぐ血しぶき!

- 制作:2024年
- 監督:モーリッツ・モーア
- 主演:ビル・スカルスガルド、ファムケ・ヤンセン、シャルト・コプリー
文明が崩壊した終末世界。
独裁者ヒルダが支配する腐敗した王国で、少年は家族を虐殺され、自らも声と聴覚を失う。
絶望の中、彼は謎の男のもとで過酷な修行を積む。
沈黙の殺戮者へと覚醒したボーイは、年に一度の「粛清の日」の前夜、復讐のために暴力の渦へと飛び込んでいく。
残虐復讐譚 格ゲー風味を添えて
切断!流血!
骨折!流血!
唐突な笑い要素!流血!
以上!!
…と言う、昨今稀に見る勢い全振りアクション。それが『ボーイキルズワールド』だ。
やりたい放題の邦題にも勢いが漏れ出している。
とにっかくバイオレンス描写が盛り盛りの盛り。
定番のアサルトライフルやポンプアクションショットガンはもちろん、複数種類のナイフや日本刀、チーズ削り器、あとパンチ力を数倍に強める謎ナックルなど、多種多様なウェポンが次々と登場。
まるで厨二のラベルが貼ってある玩具箱を思い切りひっくり返したような景気の良さだ。
スカルスガルド顔面力
そしてビル・スカルスガルドの圧が強い。
スカルスガルドと言えば、端正な顔立ちなのに目だけ異様にギョロギョロしてるというインパクトのある顔面力のオーナー。
その異相っぷりは例の排水溝ピエロしかり、ジョンウィックの宿敵しかり、バーバリアンの超怪しい宿泊客しかり、とにかく悪役キャラでこそ輝きまくっていた。
そんなスカルスガルドが今回は主役。当然一筋縄では行かないキャラだ。
耳が聞こえず喋れもしない彼は、自己表現が暴力と顔面しか無い。
彼自身が「自分は正気か?」と疑い続けるキャラ造形は、スカルスガルドの不安定な眼差しと相性抜群。例えば…まあ本当に例えば仮にライアン・ゴズリングが同じキャラを演じたら、イカレ方まで端正になって尖りが鈍っていただろう。
内面のモノローグは彼が子供時代に好きだった格闘ゲーム風のナレーションが脳内で再生され続けるという設定で、これがまた絶妙にイカれてる。
あとライバルキャラ「6月27日」のビジュアルも文句無しに最高。
自分のセリフがバイザーに表示される謎過ぎるギミックのあのヘルメット。アレを思いついた人はその日眠れなかっただろう…「ヤッベ俺、超カッコいいキャラ思い付いちゃったかも!ヤッベ!ヤッベ!」で。
武器が片手斧ってチョイスも渋い。
さらに脇役陣も凄い。
シャルト・コプリーが超しょうもない退場の仕方をするザコとして登場するし、ラスボスは初代ダークフェニックスことファムケ・ヤンセンだし、主人公の師匠は『ザ・レイド』のヤヤン・ルヒアン。
ネタ映画のようなビジュアルなのにやたらとキャストが豪華というギャップが面白さに拍車をかける。
バイオレンス全振り映画の新たな伝説
終盤の超展開には呆気に取られる。
と言うか唐突過ぎて「え、じゃああのシーンのアレやコレやはどうなるの?」というツッコミが雪崩のように押し寄せる。だがそんな野暮をやり過ぎ上等のバイオレンスで跳ね除けるのがこの映画だ。
流石に見終わったときに疲労感がどっと押し寄せるが、同時に見終わった達成感もしみじみ与えてくれる。
暴力の中にある奇妙なユーモア(主人公の読唇術がバグってセリフが意味不明になるシーン最高)、狂気の中にある一片の哀しみ、そして何より「映画って自由だな」と思わせてくれる解放感。
映画秘宝魂あふれる、観る者の脳内にアドレナリンを直接注入してくるような暴力の祝祭だ。

アクション映画好きならこの記事もおすすめよ。
コメント