『ザ・モンキー』感想です。
『ロングレッグス』監督の次回作って聞いたから今度はどんなヘビー級ホラーかと思いきや、若干の哲学要素をはらみつつ笑いに全振りした怪作でしたよ。

プールのシーン。
ああはならないでしょ!
あらすじ -ゼンマイ巻くと誰かが死ぬぜ!-

- 制作:2025
- 監督:オズグッド・パーキンス
- 主演:テオ・ジェームズ、タチアナ・マスラニー、イライジャ・ウッド
双子の兄弟ハルとビルは、亡き父の遺品からゼンマイ仕掛けの猿のおもちゃを見つける。
しかしその猿が太鼓を叩くと、なぜか周囲で不慮の死が立て続けに起こるのだった。
兄弟は恐怖の連鎖を断ち切ろうと猿を井戸に葬る。しかし25年後、成長したハルの前に猿が現れ、再び惨劇が始まる。
死!葬式!死!葬式!
この映画のルールはひとつ。
サルが太鼓を叩くと誰かが死ぬ。以上。
サル自身が包丁を振り回すわけではなく、あくまで“予測不能の事故”として死が訪れる。
観客は「次はどんな死に様か」と身構えながらも、そのあまりの唐突な死にっぷりに結局は笑ってしまう。
絵面的には『ファイナル・デスティネーション』を彷彿とさせるが、『ザ・モンキー』はもっと悪趣味で、もっと軽快。テンポが爆速なのだ。
誰かが衝撃的に死ぬ→悲鳴→即葬式。以下繰り返し。
まるで即死シーンの早食い競争だ。
あげく流血描写が容赦ない。
死に方のレパートリーも爆裂系から昆虫系、切断系、果ては人体チェリーパイ化などもう多種多様でほんと画面が赤い。
悪趣味とユーモアの境界線を、監督はわざと踏み越えている。
人は誰でも死ぬ
徹頭徹尾「死」をおちょくった映画である。
人は誰でもいつか死ぬという不条理。
不条理って笑える。
だから人の死は笑える。
――という謎の三段論法に基づいて、最初から最後まで愉快に人が死にまくる。
死者の尊厳なんてものは存在せず、全てはただの現象として処理される。
『おくりびと』とか好きな人が観たら卒倒するだろう。
だがオズグッド・パーキンス監督の手腕は単なる悪趣味に留まらない。
『ロングレッグス』同様、家族という絆の明と暗をしっかり描き込み、ホラー映画としての骨格を崩さない。だからこそ観客は「笑いながらも背筋が寒い」という奇妙な体験を味わうのだ。
『ザ・モンキー』は、死を茶化しながらも人間の不安や孤独を浮かび上がらせる怪作だ。
観終わった後に残るのはあの陽気なファンファーレと「人は誰でも死ぬ」という当たり前すぎる真理。
だがその真理をここまでポップに、ここまで悪趣味に、ここまで楽しく突きつけてくる映画はコイツくらいだろう。
なおとにかく人が死にまくる『ザ・モンキー』だが、中でも最後の最後の「ファイナルヘレディタリー」が最高だったことは記憶にとどめたい。

ホラー映画好きならこの記事もおすすめよ。
コメント