『ザ・ギフト』贈り物をいっぱいくれる親切な人…で終わる訳ないのだった

後味&胸糞系の秀作。
自分が悪役の話を自分で監督するって珍しい気がするわ。

評価 :3/5。

親切爆弾からの胸糞ルート

制作:2015年
監督:ジョエル・エドガートン
主演:ジェイソン・ベイトマン/レベッカ・ホール/ジョエル・エドガートン

出典:TMDB

エリート街道を突き進むサイモンと、その美人妻ロビン。
新天地での生活を始めた二人の前に、サイモンの学生時代の知人ゴードが現れる。

偶然の再会を祝い、彼は次々と豪華な贈り物を届けてくる。
最初は「気前のいい旧友」程度に受け止められていたが、やがて夫婦の周囲で不可解な出来事が連鎖。平穏な日常はじわじわと侵食されていく
これはゴードの悪意なのか?
「贈り物」の真意は?

 

ゴードの存在感は、ホラー映画の殺人鬼よりタチが悪い。
なにせ彼に悪意は無く、むしろ律儀にギフトを持参するのだ。

普通なら「ありがとう」で済むところが、彼の場合は「え、これ受け取ったら呪われるの?」と観客の背筋を冷やす。
しかも演じているのは監督本人ジョエル・エドガートン。自分で自分をここまで不気味に撮るあたり、ナルシシズムと言うよりセルフホラーの境地である。

 

そして忘れてはならないのが、ギフトを送られる側である主人公サイモンの胡散臭さ。
表向きは成功者の顔をしているが、彼の過去に漂う“何か”が物語をさらに濁らせる。
観客は「ゴードが怖い」のか「サイモンが怖い」のか、あるいは「夫婦関係そのものが怖い」のか、判断を迫られる。要するに誰も信用できない。心理的密室劇と言えるかも。

 

ラストに至るまで映画は“ギフト”という言葉の意味を巧みに裏返し続ける。
贈り物とは祝福か、それとも呪いか。答えは観客の胸に残される。

派手な血飛沫も怪物も出てこないのに、観終わった後に胃の奥が重くなるタイプのスリラー。
確実に心を締め上げてくる、胸糞映画好きへの最高の”ギフト”だ。

 

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