今回ご紹介するのは『ゴーストランドの惨劇』death。
鬼才パスカル・ロジェ監督がひっさびさに投下した一作。
そして鬼才はやっぱりすごかった。

悪趣味人形劇「グランギニョル」にこだわった映像美も必見。
変質者乱入!でもけっこうあっさり撃退!

主人公は女子中学生くらい姉妹。妹ちゃんがベスでお姉ちゃんがベラって名前。
そしてその母親の3人家族。お父さんは居ません。
彼女たちが親戚から譲り受けたという一軒家に引っ越すところから物語は始まります。
その親戚とやらの趣味で、家の中にはほこりを被ったフランス人形がいっぱい。異様な雰囲気です。
イマドキガールである姉ベラはドン引き気味ですが、ホラー小説大好きでラヴクラフトとか崇拝している妹ベスはむしろ大喜び。
まあそんな感じで粛々と引っ越し作業を続ける3人だったのですが…。
そこへ二人組の殺人鬼が突然家の中へ乱入してくるからさあ大変!
地獄の殺戮ショーが開幕だ!…って感じのストーリーです。
まあスタンダードな侵入系ホラーですね。招かれざる悪役が平和な家庭に突撃してくるやつ。
ところが本作では、この殺人鬼二人組を案外簡単に撃退できちゃうんです。簡単に…と言っても殺人鬼に散々やられて姉妹とも重傷を負うんですけど、手負いのお母ちゃんが獅子奮迅の働きを見せて命からがらだけどなんとか殺人鬼をやっつけるんですよ。
めでたしめでたしです。
でも…本作『ゴーストランドの惨劇』は、ここまでが導入部。真の悪夢はこの「殺人鬼の襲撃」をしのいだ後に始まるんです。
どういう事なのかは是非映画で!
『マーターズ』より「生へのパワー」を感じさせる
なお本作の監督はパスカル・ロジェ。
この人は『マーターズ』っていう伝説のホラー映画を撮った御仁。これ一本で世界中にその名を轟かせた天才です。
『マーターズ』は、登場人物をいじめていじめて、極限までいじめ抜くと何が起きるのかを描いた超個性派ホラー。
目をそむけたくなるような残虐描写の嵐なんですが、一方で全編通して荘厳な雰囲気が貫かれており、新次元の絶望ムービーとしてカルト的な人気を博した一作です。

その『マーターズ』の監督が撮ってるわけです『ゴーストランドの惨劇』。
やっぱりと言うべきか本作も、美人姉妹が散っっ々な目に遭うシーンがとことん多い。そして酷い。肉体と精神の両方をいじめ抜く究極の残酷っぷりです。さすがロジェ。
ところが。
『マーターズ』は絶望の底の一番深くを見せてくれた作品でしたが、本作『ゴーストランドの惨劇』はまったく逆の場所に着地します。
すなわち、絶望の底の底で一筋の光を掴む話になってるんです。
『マーターズ』から10年以上たってますから、パスカル・ロジェ監督の内面に何か変化があったのかも知れません。
とにかくこの意外なオチが琴線に触れまくりでした。
超・残虐なうえ、一切気持ち良い要素のない映画ですが…見終わった後には不思議と生きる気力がわいてくる、独特の魅力あふれる一作。
『ハイテンション』等と並び、フランス製ホラーの実力を世界中に知らしめた快作かつ怪作と言えるでしょう。

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