
下品すぎるけど意外と真摯な作り。
オゲレツの極みB級ホラー

制作:2013年
監督:ジェイコブ・ヴォーン
主演:ケン・マリーノ/ジリアン・ジェイコブス/ピーター・ストーメア
平凡なオフィス勤めの男、ダンカンは慢性的な腹痛に悩まされていた。医者に行っても原因不明で打つ手が無い。
そんな中、家庭では妻との子作り相談に、仕事では上司に振り回される。
ストレスの果てに、とうとうダンカンの体内から小さな怪物が誕生する。名前はマイロ。
マイロは尻から出現し、ダンカンが抱える怒りや不満を代弁するかのように、彼の周囲の人間を次々と襲撃していく!
とにかく下品
うんち!
ケツ穴!
下痢便!
血飛沫!
うんち!
小学校中学年のノリでモンスターホラーを撮ったら珍作が誕生してしまった。それが今回紹介する『バッド・マイロ!』です。
とにかく「怪物が尻から出る」という一点突破の発想力が光る。
マイロは主人公の尻から現れ、人を殺してはまた尻に戻るという前代未聞の下ネタ系モンスター。
ホラー映画史を振り返っても、胸からエイリアンが飛び出すことはあっても尻からマスコットサイズの怪物がコンニチワする例は皆無だろう。
しかもその怪物がパペット感満載で妙に可愛い。
主演のケン・マリーノはマイロが尻から出るたびに「ひぎイィー!」と叫び、尻に戻るたびに「んほオオォー!」と苦悶の表情を浮かべる難儀なキャラを熱演(なんだこの文章…)。
ピーター・ストーメア演じるカウンセラーのうさん臭さも至高。
困惑するダンカンに古代文献を引用して怪物の正体を解説するが、またこの文献が都合よく尻から怪物が出てる様子をエジプト壁画風の挿絵で説明しておりすこぶるバカっぽい。
しかも本棚のかなり手前に置いてある。いつも読んでるのかよそんな本!
親になるプレッシャー
物語の縦糸は意外にもシリアスで、父と子の関係や「自分の中の恐怖とどう折り合いをつけるか」というテーマが潜んでいる。
マイロはダンカンにとって自分の子どものメタファー。
幼少期に父親に見捨てられたダンカンは、自分も子どもをいつか見捨てるのではないかと恐れている。その恐れがストレスとなり、ストレスがマイロを生んだ…という訳だ。
彼が状況を受け入れ乗り越えていく過程は、そのまま家族を持つことへの不安と希望を象徴している。
だがそんなテーマ性も、豪快なシモネタや血しぶきにまみれると「結局オゲレツじゃねえか!」とツッコミたくなる。
特にダンカンの聞きごたえある下痢便排泄音は絶品。もう観ているだけで臭ってきそうな見事なブリブリ感。
もしアカデミーオゲレツ効果音賞があったら受賞はまぬがれないだろう。
オゲレツ映画を愛する者にとっては、まさに“尻から生まれた宝物”と呼ぶにふさわしい一本だ。

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