『拷問男』タイトル通りひたすら拷問シーン でもテンプレだけではない謎の深み

今回はストレートな邦題の映画『拷問男』の感想です。

アホ系流血映画かと思ったら心理描写が繊細で。

評価 :3/5。

あらすじ

出典:TMDB

制作:2017年
監督:クリス・サン
主演:ホーリー・フィリップス

オーストラリアの田舎町。
平凡なおっさんであるデレクの日常は、愛する娘が惨殺されたことで完全に崩壊した。

事件から数ヶ月。彼は妻に去られ、仕事も手に付かず、酒浸りの半ば廃人状態。
そんなデレクはある日、娘を殺した犯人と思しき男を見つけ出す。
彼は犯人(推定)を地下室に拉致監禁し、己の全てを賭けて想像を絶する凄惨な復讐を試みるのだった。

 

娘を失って失意→復讐でイキイキ

これは「復讐は何も生まない」系の生温い教訓映画ではない。デレクの「復讐という名の救い」を地獄のディテールでもって描いたホラードラマだ。
娘を失ったショックで屍のようだった主人公がターゲットを確保した途端、まるで生きる目標を見つけたかのように輝き始める様は、悲哀と同時にシニカルな笑いを誘う。

そして本作の華がタイトル通りの、そのあまりにもヤバすぎる拷問描写だ。
定番の「折り」や「炙り」といったベタなメニューは序の口。
「ケツに有刺鉄線をぶち込んで引きずり出す」とか「自作の謎形状の器具で脚を押しつぶす」とか、もう邪悪なクリエイティブ精神の大爆発。アイデアの源泉が泥水でできているとしか思えない、ハイカロリーな残虐フルコースが惜しげもなく提供される。

 

謎に繊細な心理描写

一見これは『ホステル』の流れを汲む、いわゆる「トーチャーポルノ」に思える。
しかし本作の残酷描写は源泉が主人公の悲哀と衝動であり、軽いジャンル映画として消化するには重くて痛々しい。
痛みの描写が被害者の絶叫だけでなく、拷問する側の疲労と精神的な摩耗にも焦点を当てているのもユニークだ。

実際にコイツが犯人なのかは最後まで「濃いめのグレー」。だがデレクにとってそれはもはや些細な問題。
彼は復讐という大義名分を得て初めて世界との繋がりを取り戻し、自分自身を肯定できた。「拷問」は彼にとって生きている証拠であり、娘への贖罪なのだ。

残酷描写に振り切った一方で、その裏に潜む人間の弱さと狂気的なエネルギーを浮き彫りにした佳作。
安っぽいカタルシスとは無縁の、痛覚に訴えかける復讐譚として記憶に刻まれる。

 

 

 

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