今回は『ゴースト・ストーリーズ 英国幽霊奇談』です。

え、そう来た!?なオチが印象的。
あらすじ

制作:2017
監督:ジェレミー・ダイソン、アンディ・ナイマン
主演:アンディ・ナイマン、ポール・ホワイトハウス、マーティン・フリーマン
英国紳士が仕掛ける、上品なホラー・オムニバス。
主人公は、懐疑主義者にして辛辣な「超常現象否定論者」のグッドマン教授。
彼は世に溢れるインチキ霊能者を次々と論破し、科学的思考の正しさを説く「怪談潰し」をキャリアとしてきた。
そんな彼が伝説の超常現象研究家キャメロン氏から、難解な3つの未解決怪談の調査を依頼される。
夜間の警備員が体験した精神病院での出来事。
若きビジネスマンが森の奥で遭遇した恐怖。
そして裕福な元銀行家の出産にまつわる奇妙な体験。
グッドマン教授はそれぞれの現場を訪れ、論理的に「幽霊」の存在を否定しようとするが…。
イギリス紳士による正統派怪談
上品なタッチのホラー短編集。
しかしこの映画の真髄は、その巧妙すぎる脚本力にある。
それぞれの短編は単なる独立した怪談で終わらない。
教授が遭遇する些細な出来事や、背景にちらりと映る風景、聞こえてくるニュースの断片。
これら「どうでもいい要素」が、最終盤にパズルのピースとしてカチリと嵌まる瞬間、観客の脳内を「やられた!」という感嘆と背筋の凍る恐怖が駆け抜ける。
これほどまでに周到な伏線回収は、もはやホラー映画というより「超絶技巧の叙述トリック」と呼ぶべきだろう。
マーティン・フリーマン、闇落ち
そして特筆すべきは、マーティン・フリーマンの存在。
どの映画に出ても「困ってるオッサン」役の彼が、ここでは徹底的に「困らせる側」の男を演じる。
あの小動物っぽい頼りなさが、今度は「何かを隠している」という不気味なシニカルさを帯びるのだから役者ってのは本当に業が深い。
「幽霊なんていない」と豪語する主人公が結局は自らの傲慢さを食い破られていく様は、ある種の痛快さがある。
この映画が描くのは亡霊よりもむしろ、生きた人間が過去に犯した罪、トラウマ、そして逃れようのない記憶だ。
陰鬱さの中にもどこか演劇的なユーモアと知的遊戯の精神が息づいている(もともと舞台演劇らしいし)。
英国紳士が用意した王道の怪談&変化球のオチ。贅沢なダブルパンチだ。

ホラー映画好きならこっちの記事がおすすめよ。
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