『ジェーン・ドウの解剖』ドッキリホラーと雰囲気ホラーの理想的な融合

今回は死体解剖ホラー『ジェーン・ドウの解剖』です。

狭い場所嫌いな人には猶更怖い…

評価 :3/5。

あらすじ

出典:TMDB


制作:2016
監督:アンドレ・ウーヴレダル
主演:エミール・ハーシュ、ブライアン・コックス、オフィリア・ラヴィボンド

熟練の検視官トミーと息子のオースティンは、米国の田舎町で代々続く家族経営の死体安置所を営んでいた。
ある嵐の夜、彼らのもとに保安官から緊急の依頼が舞い込む。
それは凄惨な一家殺害事件の現場の地下から、謎の若い女性の遺体「ジェーン・ドウ(身元不明人のコードネーム)」が発見されたというもの。
その遺体にはなぜか一切の外傷がなく、死因さえ不明なのだった。
夜が明けるまでにこの不可解な遺体を解剖し死因を特定することになった父子だが…。

 

 

死体安置所サバイバル

とにかく「閉塞感」が容赦ないホラー。
物語の舞台はほぼ全編にわたって、土砂降りの嵐の夜の照明が薄暗い地下の死体安置所だ。
出口は一つ。外部との連絡は途絶えがち。
物理的な空間の狭さ、そして無数の死体が周りを囲むという精神的な圧迫感が喉元を締め付けてくる。

そしてこの閉鎖空間で繰り広げられるのが「法医学からオカルトへの華麗なシフトチェンジ」だ。
父子はまず冷静に検視を始める。しかしメスが「ジェーン・ドウ」の内部へと進むにつれ、彼女の体内から意味不明な符号や数百年前のものらしき遺物が見つかり始める。この時点で異様すぎる
そしてまるでその解剖行為に呼応するかのように、様々な怪異が生じ始める。

科学とオカルト要素は相反する要素に捉えられがちだ。
だがこの「科学的探究がむしろ怪異を呼び寄せる」という構造が、逆説的で非常にスリリングなのだ。

中盤以降の、見えない力による「かくれんぼ」のような演出は、閉塞的な空間を逆手にとったアイデアの勝利。
曲がり角の向こう。影の中。
「いないはずの何かが、確かにいる」という、原始的な不安を突きつけてくる。

古典的な幽霊屋敷ものとは一線を画し、現代的な法医学というフィルターを通すことで「死の裏側にある真実」をグロテスクに掘り下げた逸品。
謎が深まるほどに閉塞感は増し、観客はいつしか自分自身がその死体安置所に閉じ込められた一人であるかのような錯覚に陥る。この「理屈の通じない恐怖」の前に人類は無力だ…という事実を、生々しく描ききった手腕に脱帽する他ない。

 

 

 

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