『アス/US』襲撃、自分のそっくりさん!…でもそいつと自分って何が違うの?

今回は『アス/US』です。

ピール監督らしい、ホラー×笑い×社会派

評価 :3/5。

あらすじ

出典:TMDB

2019年 アメリカ
監督:ジョーダン・ピール
出演:ルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク

夏のバカンスを楽しむため、ビーチ沿いの別荘にやってきたウィルソン一家。
楽しいひとときを過ごした一家だったが、

その夜静かな別荘に侵入者が現れる。しかもその強盗たちは家族と瓜二つの容姿をした四人組だった。
襲撃者は不気味なハサミを手に「この時をずっと待っていた」と言うのだった…。

 

 

笑いと恐怖の神配合

出典:TMDB

ジョーダン・ピール監督は『ゲット・アウト』でホラーとコメディ、そして社会風刺という三位一体の境地を開拓し、圧倒的な名声を得た。
本作『US/アス』は、その作風をドッペルゲンガーという古典的モチーフに適用した極めて「ピール印」が濃厚な一作だ。

何が素晴らしいって、恐怖シーンとコミカルなギャグの配分が、もはや神業のバランスで成立している点である。

絶体絶命の窮地の中、お父ちゃんが真顔で「そうだ、ホーム・アローンみたいに家をワナだらけにしようぜ!」と提案するシーン。
お母ちゃんが「バカかアンタは!」とキレ、娘が「ホーム・アローンって何?」とジェネレーションギャップをぶちかます、あの怒涛のテンポ感!
襲撃されてるのに漫才かよ!
アレクサの使い方も良き。

 

ドッペルゲンガーで社会風刺

ただ、そっくりさん「テザード」の設定には正直「え、それでいいの?」というズッコケ感がつきまとう。
誰がなんのために、地下であの大人数を何十年もウサギの生肉で生存させてきたのか?電力は?資金は?という疑問が頭から離れない。
この「フゥンワリ」しすぎの設定はやっぱり突飛だ。

しかしそんな枝葉末節を吹き飛ばすのが、後半の「どんでん返し」だ。
被害者と襲撃者、その境界線が「たまたまどちら側に立ったか」の偶然でしかないという残酷かつ衝撃的な真実。

そして襲撃者を撃退するにつれて主人公の方がケダモノじみていく姿は、「善と悪、秩序と混沌なんて所詮は紙一重だ」という監督の主張がダイレクトに響き見事な余韻を残す。

タイトル『Us』が「私たち(Us)」と「ユナイテッド・ステイツ(U.S.)」のダブルミーニングであるように、これは逃れられない「アメリカの影」の物語である。
「貧困に対する見て見ぬふり」の上に築かれた富の脆さを、この秀逸なホラーコメディは痛烈に突きつける。
設定の突拍子もなさを差し引いても、その恐怖とユーモアの化学反応、そして深遠なメッセージは心に響く。

 

 

 

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