『ブルータル・ジャスティス』超もったりゆっくり進む強盗映画…だがその「遅さ」が暴力の恐ろしさを描く


今回は『ブルータル・ジャスティス』感想です。

超スローバーン。

評価 :3/5。

あらすじ

出典:TMDB

制作:2018年
監督:S・クレイグ・ザラー
主演:メル・ギブソン、ヴィンス・ヴォーン、ジェニファー・カーペンター

行き過ぎた暴力捜査が原因で六週間の停職処分を食らった老練警官ブレットとその相棒トニー。
病気の妻や家賃滞納に苦しむ彼らは人生の再起を懸けて、犯罪組織のカネを横取りする「一発逆転強盗計画」を実行に移す。

 

 

映画史上最も「遅い」強盗計画

話はゆっくり、超ゆっくりと進む。
タランティーノ風なのかと思いきや、監督S・クレイグ・ザラーが描く世界はもっと粘っこくてドロドロしている。

何しろこの映画、登場人物がサンドイッチを食うシーンが妙に長いし、哲学的なのか単なる雑談なのか判断がつかないセリフが延々と続く。
派手な爆発やカーチェイスは無く、むしろ本来ならカットされそうな無駄な描写がもう山ほど出てくる。

しかしこの異様なモタつきこそが、画面に漂う諦念と絶望の空気をジワジワと注入してくるのだ。
これぞザラー流の「シブさ」である。

 

 

異様な暴力性

そして彼らが対峙することになる強盗犯たちの冷酷さときたら、もう映画史上稀に見るレベルの残虐さだ。
なぜそんなに冷酷に見えるのか?
それは、この事件に巻き込まれて命を落とす名もなき被害者C(仮)の人生を、話の本筋とまったく関係なくじっくりゆっくり描くからだ。

普通のアクション映画なら巻き込まれ犠牲者って可哀そうー、はい次!となる所だが本作はそうはいかない。
結婚生活、仕事、キャリア、子育て…。
主人公には一切関係ない情報をあえてねちっこく描くことで、それが何の意味もなく無に帰す暴力の不条理が浮き彫りになるのだ。

リッジマンとトニー、そして偶然居合わせる第三の当事者、誰も彼もがカネと暴力の渦に飲み込まれていく。
この地獄絵図はただの強盗映画には留まらない。これは、タイトルが示す通りの「ブルータル・ジャスティス」、つまり「残虐な正義」が最もクズな形で遂行される物語なのだ。
観客を無闇に接待せず、ドン底のまま終わらせる潔さ。これこそがザラーが我々に叩きつける暴力映画の渋さである。

 

 

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