『帰ってきたヒトラー』時をかける総統 ヤベーくらい現代に合致するブラックコメディ

今回は『帰ってきたヒトラー』です。

あまりにもゾッとする政治コメディ。

評価 :4/5。

あらすじ

出典:TMDB

制作:2015年
監督:ダーヴィト・ヴネント
主演:オリヴァー・マスッチ、ファビアン・ブッシュ、カーチャ・リーマン

ある日、ベルリンの空き地に突如として現れたのは、あのアドルフ・ヒトラー

1945年から現代へとタイムスリップしてきた彼は、当初は不謹慎コスプレおじさん扱いされるが、テレビ局の若手ディレクターに拾われ時事ネタ芸人としてメディアに登場。
毒舌とカリスマ性で視聴者の心を掴み、やがて笑いの仮面を被ったまま再び大衆の支持を集めていく。

 

完璧に現代と一致 

「ヒトラーが現代に」なんて聞くと、まず思い浮かぶのは「また蘇ったナチス系か…」という疑念だろう。なにしろゾンビになったり月で秘密基地を築いたり、B級映画界でナチスのおもちゃにされっぷりは定番だ。

だが本作はその予想を良い意味で裏切ってくる。
確かにチョビ髭がマウスに悪戦苦闘したり、犬と戯れて「ヴォルフちゃん!」と叫んだりする姿が笑える。
だがその笑いの裏には、現代社会の笑って済ませられない病理がしっかりと埋め込まれている。

何より恐ろしいのはヒトラーが何一つ建設的なことはしていないのに、勝手に人々が熱狂していく構造だ。
彼はただ、現代の問題に対して「昔ながらの過激な言葉」を投げかけているだけ。にもかかわらずメディアはそれを刺激的なコンテンツとして消費し、視聴者は本音を言ってくれる人として支持する。
「なんとかファースト」に薄っぺらく熱狂する現代のポピュリズムの縮図。そのあまりにも精緻なメタファーだ。

 
 

チクショウメー!

そのくせ説教臭さが皆無なのもこの映画の凄いところ。むしろギャグの切れ味が鋭い。
特に『ヒトラー最後の12日間』の例のシーンをぶっ込んでくるくだり、製作陣の胆力には拍手を送りたい。あれをいにしえのニコニコ動画以外でまさか観る日が来るとは思わなかった。

主演のオリヴァー・マスッチは、まさに怪演。
Netflixドラマ『ダーク』のウルリッヒとは別人のような存在感で、ヒトラーの“人を惹きつける怖さ”を見事に体現している。
街頭インタビューのシーンでは、撮影時に素人相手にガチでヒトラーとして語りかけており、観客の反応がそのまま現代ドイツの空気を映し出している。

そして何より、この映画が突きつけてくるのは、「歴史は繰り返す」という不都合な真実だ。
ナチスが民主的に選ばれた政権であったこと
人々が“変化”を求めて極端な選択をしてしまうこと。
それはドイツだけの話ではない。むしろ日本にも明確にその兆候が顕れてきている
移民問題、経済格差、情報の偏在。どれもが、火種としてそこにある。

現代社会に対する風刺としても、歴史のリマインダーとしても、そして何より一本の映画としても、非常に完成度の高い一作。

 

 

 

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