『ボーダー/二つの世界』人の罪が「匂い」で分かる女性…だが容姿は並外れて醜い 彼女に世界はどう見えている?

今回は『ボーダー/二つの世界』を紹介します。

残酷なのにどこか童話的。好き。

評価 :4/5。

あらすじ

出典:TMDB


制作:2018年
監督:アリ・アッバシ
主演:エヴァ・メランデル、エーロ・ミロノフ

スウェーデンの税関職員ティーナは、他人の「罪の匂い」を嗅ぎ分けるという特異体質を持つ女性。その容姿は人間離れしてブサイクだった。
彼女は周囲からは奇異の目で見られながらも、森の中の一軒家で静かに暮らしている。

ある日、税関に現れた謎の旅行者ヴォーレの姿に、ティーナは言いようのない既視感と違和感を覚える。彼もまた、彼女と「同類」だったのだ。
二人は急速に惹かれ合い、やがてティーナはある秘密を知ることになる。

 

 

醜く耽美で不思議

ジャンルの棚に収まりが悪すぎる映画
ホラー?ラブストーリー?サスペンス?それとも北欧神話の現代版?
どれもしっくり来ず、物語は観客の予想を裏切り続ける。

ティーナの度を越したブサイクっぷりは、特殊メイクというより「神話的リアリズム」とでも呼びたい異形の美
その顔で森を歩く姿は荘厳で、なぜか切ない。
人間の枠から外れた者がなお人間らしさを求める姿は、どこか『フランケンシュタイン』の怪物を思わせる。

謎のブサイク旅行者ヴォーレにティーナの「匂いセンサー」が反応するたび、観客の脳内にも警報が鳴る。こいつ、ただの変人じゃないぞ…と。
二人が絆を深めるその過程で明かされる事実の数々は、神話の再解釈というより現代社会への痛烈な皮肉だ。人間とは何か。境界とは何か。その問いが、ティーナの鼻腔を通じて我々にも突き刺さってくる。

 

 

残虐なのにどこか絵本っぽい

意表を突く人体破壊描写の入念ぶりも印象的だ。
アート映画かと思いきや、ロックンロールなスプラッター魂が炸裂。どこまで変化球を投げれば気が済むんだこの映画!

そして静謐な森の中で繰り広げられる“儀式”の数々は、『ぼくのエリ 200歳の少女』の雰囲気で『悪魔のいけにえ』をやるような異様さ。ちょっと他の映画じゃお目にかかれない。
しかも国内配信版では、肝心のシーンにモザイクが入るという暴挙。これ文化的テロだろ。毎回毎回、北欧ホラーに何か恨みでもあるのか。

とはいえ、そんな不条理を乗り越えてでも観る価値はある。ジャンルの境界を踏み越え、観客の感覚を揺さぶる異形の傑作だ。
醜さと美しさ、残虐と優しさ、人間と異形
そのすべてが混ざり合い、ティーナという存在に集約されていく。
これは“匂い”で真実を嗅ぎ分ける女の物語であり、我々自身の“境界”を問う寓話でもある。

 

 

 

ホラー映画を探しているなら、この記事がおすすめよ。

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