『ウインド・リバー』雪よりも冷たい沈黙と制度の穴…アベンジャーズだらけの骨太サスペンス

今回は『ウインド・リバー』の紹介です。

地味だけど熱い、いぶし銀な一作。

評価 :4/5。

あらすじ

出典:TMDB

制作:2017年
監督:テイラー・シェリダン
主演:ジェレミー・レナー、エリザベス・オルセン、ジョン・バーンサル

ワイオミング州のインディアン居住区で、若い女性の凍死体が発見される。
現場に派遣されたのはFBIの新米捜査官ジェーン。
雪に不慣れな彼女を、地元のハンター・コリーがサポートする。

二人は事件の真相を追ううちに、居住区に根深く巣食う“見えない暴力”と対峙することになる。そこは失踪者の統計にすら載らない“誰にも知られない死”が日常の地だった…。
 

 

社会派映画だけどエンタメ度高め

雪原を舞台にしたサスペンスと言えば『ファーゴ』だが、本作は『ファーゴ』的な笑いの要素は一切無し。代わりにあるのは鋭い社会派映画の切り口である。

とはいえ、語り口はあくまで犯人捜しサスペンス。
むしろ、ジェレミー・レナー演じるコリーの無口なマタギっぷりと、エリザベス・オルセンの都会育ちお姉ちゃん感が絶妙な温度差を生み、王道のバディものとして程よいエンタメを演出してくれる。
あとジョン・バーンサルの登場があまりに唐突で笑う。お前かよ!みたいな。

つまりホークアイスカーレットウィッチパニッシャーが雪山で一堂に会する訳だ。改めて考えると、凄い顔面力の映画である。

 

 

誰も知らない事件=存在しない事件

本作で最も印象的なのは、やはりクライマックスの直前に訪れる極限の緊張シーンだろう。
あのシーンはシチュエーションの緊迫もさることながら、音の使い方が異常に印象的。
風の音、雪を踏む音、そして沈黙。沈黙こそが、この土地の“声”なのだと否応なく理解させられる。

しかもその沈黙は、制度の不備で生じた「法律の隙間」。
誰も叫ばないから誰も気づかない。そういう“見えない暴力”を冷静に、かつ怒りを込めて描いた作品がこの『ウインド・リバー』なのだ。

バディものであり、犯人捜しサスペンスであり、シリアスな社会告発映画でもある。
冷たい風の中に燃える熱さ。それがこの映画の魅力だ。

 

 

 

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