最高潮の期待とともに配信開始となった、ホラードラマ界の真打『ウェルカム・トゥ・デリー』第1話の感想をお送りします。

驚愕のあまり呆然としちゃった…。
これは「伝説の第1話」として語り継がれるやつね。間違いないわ。
あらすじ

冷戦の緊張が世界を包む1962年。
メイン州の田舎町デリーで、少年マティが忽然と姿を消す。
彼の友人たちはそれぞれの事情で、マティの失踪に責任を感じていた。
そんな彼らの「後ろめたさ」に呼応するように、街で奇怪な出来事が起こり始める。
空軍基地に転属された黒人将校と白人整備兵の軋轢、ユダヤ系家族の厳格な生活慣習など、60年代アメリカの社会的背景も織り交ぜながら物語は不穏さを増していく。
『IT』と言えばコレ!

『IT/”それ”が見えたら、終わり。』(2017年)は単なるホラー映画ではなかった。
80年代カルチャーの鮮やかな再現。
少年少女たちの友情や淡い恋を描く青春群像。
そしてビックリ系ホラー演出…いわゆるジャンプスケアの鋭さ。
これら三種の神器が揃った傑作としか言いようがないホラー、それが『IT/”それ”が見えたら、終わり。』だった。
同作の悪役、あの超有名殺人ピエロことペニーワイズは「恐怖を食べる」異形の存在。
ショッキングな幻術で大人も子供も恐怖のズンドコに叩き落として殺すのが大好きという、ドッキリ系ホラーのためだけに誕生したような極めて便利な設定の御仁だ。
『IT』全編でそのドッキリパワーはいかんなく発揮され、それはもう観客からありったけの悲鳴を搾り取った。
特にあの排水溝の「ハァイ、ジョージィー」のシーンは、あまりのインパクトにネットミーム化までしてしまった。
そんな『IT』の前日譚がドラマ化されたと聞いて、期待と不安が入り混じる中で視聴した第1話。結果、腰が抜けた。いや、マジで。
少年少女たちが、失踪事件の謎を追う…
『IT』のエモさは、ペニーワイズの恐怖だけじゃない。
少年少女たちが「大人になるための通過儀礼」として恐怖と向き合う構造が肝なのだ。
『ウェルカム・トゥ・デリー』もそのDNAをしっかり継承している。
失踪したマティを追う少年少女、内向的な主人公、秘密を共有する仲間たち…その構図は映画版『IT』や、フォロワーである『ストレンジャー・シングス』にも通じる王道中の王道ストーリーだ。
しかもこの第1話を監督しているのは、映画版『IT』を撮りそのエモさの源流を作り出したアンディ・ムスキエティ本人である。
もはや横綱相撲の準備は万端。
ドラマシリーズならではのたっぷり尺をとった少年少女の成長譚と、がっつりの恐怖描写が約束されたようなものだ。
だがこの第1話の真のインパクトは、そんな丁寧な布陣や王道のテーマ性を一瞬で嘲笑うかのような展開を叩きつけた点にある。
こ…こんなことが許されていいのか…
まさに「禁じ手」である。
世の中に「衝撃の第1話」は数あれど、ここまでの大破壊は正直初めてだ。ここまで緻密に築き上げた世界観があるからこその、たった1回しか使えない禁じ手である。
『ウェルカム・トゥ・デリー』は映画版の単なるスピンオフでも「一応作ってみました前日譚」でもなく、「なぜこれがTVシリーズとして必要なのか」を観客に突きつける狂気の決意表明だ。
観客の「ITならこうだろ」という既成概念への容赦ない鉄槌。その凄まじい展開の前に、もう「参りました」としか言いようがない。
制作陣の熱量の高さにとにかく圧倒される。まだ第1話なので『ウェルカム・トゥ・デリー』全話が後にどう評価されるのかは未知数…。しかしこの第1話が伝説化するのはもう間違い無いだろう。
その「ぶちかまし」の内容を詳細に説明できないのが、このレビューの唯一の悔やみである。なぜならそのショッキングさが、このシリーズを観る上での最高のカタルシスだから。
ネタバレ注意!とだけ書いて詳細に語りたい衝動を抑えながら、ただ一言。
ホラー好きなら、観て。

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