ついに配信開始の『イクサガミ』。
期待通りの…いや期待をブッちぎった超ロケットスタートでした。

流血描写も、最初から地上波放送を無視した激しさ。
これが見たかったの!
あらすじ

新政府への移行や疫病の蔓延で混沌とする明治初期。
大金を手にできるという噂を聞きつけ「武技に優れたる者」が京都に集う。その数、292人。
しかしそこで開始されたのは、脱落=即死の血みどろサバイバル『蟲毒』だった。
幕末を生き延びた剣豪・愁二郎(岡田准一)は、同じく参加者の一人の少女・双葉(藤崎ゆみあ)とともに、最初の関門「デスゲーム開始直後の大混戦」を生き抜くべく駆ける!
大混戦スマッシュブラザーズ
いきなりトップギア
おいおい、初っ端からこれかよ! と思わず画面にツッコミを入れたくなるような、期待値の天井をブチ破る狂気の熱量に満ちた第1話だった。
大作を渇望していた時代劇ファンの夢が、Netflixの潤沢な予算とデスゲーム形式という最先端のフォーマットで満を持しての実現だ。
なにしろ再生ボタンを押して5秒でいきなりトップギア。
始まるのは戊辰戦争の戦場を生き抜く愁二郎の回想シーンだ。
抜刀!突撃!!
→戦場の有象無象を斬りまくり!
→敵本陣に殴り込み!
→激戦のすえ勝利!
→…と思いきや、味方の砲撃で本隊が壊滅!
その一連の戦場叙事詩を、なんとワンカット一発撮りで描き切ってみせた。もはや薩摩プライベートライアン。
どれだけの予算とスタッフの根性、そしてどれだけの熱狂的な狂気が詰め込まれているのか。明らかに「世界を獲る覚悟」で作られている。ハリウッド大作映画の冒頭15分を圧縮したような濃密さだ。
これはネトフリ史上最高傑作の予感を確信する他ない。
血の雨降る天龍寺

原作既読組にとってのサプライズは、物語のテンポアップ改変だろう。
原作では結構後の方になってから回想で語られていた、愁二郎以外の主要メンバーが最初の関門をどう切り抜けたかの無双劇が、惜しげもなく第1話に投入されている。
中でも本作における筋肉バーサーカー枠・貫地谷無骨の暴れっぷりが出色。伊藤英明がニンマリするだけで治安が一気に悪くなる…そのイキイキした悪役ぶりは最高に冴えわたっている。
伊藤英明と岡田准一という、時代劇最強の肉体派俳優コンビの対峙はニヤリとせずにはいられない運命の皮肉だ。何しろわずか数年前に同じ時代設定の映画『燃えよ剣』で、彼らは新撰組の隊士として仲良く仲間割れしていた。
それがこの理不尽なデスゲームの世界で再び相対することになるのだ。これが映画の醍醐味と言わずして何なの。
新時代の時代劇
とてつもないオールスターキャスト
愁二郎や無骨以外も、『イクサガミ』の俳優陣は異様なほど豪華だ。もはや顔面力のインフレが究極の領域に達している。
チラッと出てくるだけで場を支配する阿部寛の圧倒的な存在感や、腹の底が読めない胡散臭さと怪しさを全身から滲ませる二宮くん。どいつもこいつも主役級の顔面力だ。
キャスト全員に触れるのは字数が足りないが、この第1話で特に光っていたのは10秒くらいだけ出てきて瞬殺される警察官・安藤神兵衛だろう。
デスゲーム主催者側に楯突いた結果、さっくりと粛清されてしまう可哀想な噛ませ犬。「あの安藤が一撃でやられるなんて…!」というモブ驚愕セリフを引き出すためだけに存在する、設定だけは強いやられ役である。
その「ちょっと強い脇役」に、よりによって山田孝之を配するという余りにも贅沢かつ狂気のキャスティング。
これは単なるネタ配役ではない。このドラマが観客に突きつけるのは俳優の顔面力と生存確率は比例しないという、問答無用の緊張感だ。
「染谷将太だから最後まで生き残るんじゃね…?」という甘い予想は無意味。もちろん誰が生き残るのかが原作通りという保証も無い。この容赦なき配役の妙こそが、殺伐とした『蟲毒』の世界観に一層の説得力を加えている。
原作からの改編要素が熱い!
本作が単なる原作のなぞりではないことを示す、熱い改編要素も見逃せない。
愁二郎の娘が既にコレラで死亡しているというエピソードの追加は、双葉を絶対死なせたくないという愁二郎のモチベーションに深い陰影と悲劇性を与えている。
しかし最もエグい最大の変更点は、愁二郎に付加されたメンタルヘルス要素だろう。幕末の戦場トラウマで、なんと抜刀さえ出来なくなっている愁二郎。しかも刀が物理的にもサビついて鞘から抜けないというメタファーまで効きまくり。
これは「生き残るためには肉体の力だけでなく心の強さが必要」という時代劇の古典的なテーマを、デスゲームという現代的要素に接続させている構図と見た。
この後、愁二郎がいかなる劇的な局面で心のサビを振り払い刀を「抜く」ことになるのか―――その瞬間が見逃せない。
…と思ったら、その期待の余韻をブチ壊すラストの引き。
原作ではずっと後になるハズの最強枠・貫地谷無骨と、抜刀不能の主人公がいきなりぶつかって第1話完。
おいおい悠長に「その瞬間が見逃せない」してる場合じゃねぇ!今すぐ抜かないと死ぬぞ愁二郎!!
という訳でとんでもない熱量で始まった『イクサガミ』。
「最強の剣豪・主人公(でも抜刀不可)」vs「筋肉バーサーカー・伊藤英明」という、早く来すぎた決戦の刻…次のレビューまで愁二郎が生存していることを祈るばかりだ(まあさすがに死なないだろうけど…)。

次話感想はこちら。

Netflixで観る作品を探してるなら、この記事がおすすめよ。

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