『イクサガミ』第6話(最終話)感想 爆炎と静寂の決戦 なお阿部寛は怖すぎる

『イクサガミ』第6話感想です。

とんでもない傑作の誕生を目撃してしまった気分よ…。

あらすじ

岡崎手前の神社で催された祭りで、穏やかなひとときを過ごしていた愁二郎と双葉。
しかしその場へ二体のデスマシーン、貫地谷無骨と岡部幻刀斎が引き寄せられるように現れる。
平穏な祭りが血と炎の祝祭へと変貌する!

その裏では遠く東京で、史実においても歴史のターニングポイントとなる“あの事件”が起きようとしていた…。

 

 

史上最高の殺陣、爆誕!

愁二郎 VS 無骨

出典:TMDB

何というかもう、贅沢すぎる最終回だった。
感服つかまつった。凄すぎる。とてつもないものを見てしまった。
そんな感じで語彙力が追いつかないほどの圧力で迫ってきたのが、今回のクライマックス。愁二郎 VS 無骨の決戦シーンである。

「予算のことはいい!人類が到達し得る最高の剣戟シーンをやるんだよ!!」──そんな制作陣の魂の叫びが聞こえてきそうな、熱意が文字通り火を噴いたような完成度だ。

あまりの戦いの激しさに刀身が熱を持ち、金属部分に滴った血が「じゅーっ」と音を立てながら蒸発していくというハッタリ効きまくりの演出。
この赤熱した刀により周囲が火の海と化すアイデアこそが、今回の哲学要素を語る仕掛けとしても機能している。

愁二郎の娘を荼毘に付した“死の炎”。
祭りの喧騒や双葉を明るく照らし出す“生の炎”。
愁二郎と無骨という時代の遺物を巻き込み立ち上る“闘の炎”。
これら全てを”炎”でくくって、一貫性のあるストーリー性を展開させた手腕は見事という他ない。炎は破壊のメタファーであり、同時に再生の儀式でもある。この地獄絵図のような熱戦の果てにサムライが死に、新たな時代が生まれるのだ。

 

出典:https://www.themoviedb.org/

 

コアとなるストーリー性以外も最高だ。
愁二郎と無骨の刀がかち合う従来の剣戟の素晴らしさに加え、白眉は愁二郎が神社の階段を転げ落ちるシーン。これはもう、素直にオマージュだと捉えるべきだろう。
『ジョン・ウィック:コンセクエンス』でキアヌ・リーヴスが222段を威勢よく転がり落ちたシーンを見て岡田准一が「これいいなぁ。よし俺もやろう!」と唸ったかどうかは知らないが、影響を受けているのは間違いない。

 

決着の瞬間

爆炎と業火で限界まで画面を盛り上げておいて、ふいに訪れる静寂でコントラストを作ったのもインパクト絶大。

次の一撃で勝負が決まる。

…と誰が見ても一発で理解できる分かりやすさが、観る者の心に「決着」の二文字を最大火力で刻み込む。

時代劇の金字塔である『椿三十郎』の明確な引用であり、そこには藤井道人監督の
「俺は…俺は今日こそ黒澤明を超える!!」
という熱い信念がほとばしっている。

この決戦を結ぶ最後のセリフと、それに応ずる愁二郎のあの視線…。そこには過ぎ去った時代への哀悼と新時代への諦念が込められており、結びも含めて素晴らしい。
なにもかもが最高である

 

突然の和ホラー

出典:https://x.com/NetflixJP

もう一人のデスマシーン、岡部幻刀斎の活躍も見逃せない。
これまでザコ相手に無双しているだけだったので本当に強いのか今一つ伝わらなかった幻刀斎だが、この最終話で縮めたバネを一気に解放するがごとき大活躍を見せた。

特に屋内に逃げ込んだ彩八をゆっくり追い詰めるシーンは強烈。
畳・ふすま・薄暗闇というJホラーの定番おまとめセットを惜しげもなく活かし、殺意マシマシで迫りくる阿部寛!
ゆらりと影が追ってくるその静謐な緊張は、愁二郎と無骨の大騒ぎ大決戦と好対称をなしている。

激戦とホラーを交互に見せるこの構成は、甘味と塩味を交互に食べると幸せ溢れて止まらなくなる例の無限ループに近い。幸せのドーパミンで大絶頂状態だ。

 

…ところで、まことに野暮な言及だが相変わらず櫻の移動速度が光速レベルなのは笑ってしまう。
さっきまで桑名にいたのに次の登場シーンでは東京で元気よく凶刃を振るっており、彼の薩摩ワープの性能が良すぎて「『三体』かな?」って感じだ。

 

 

つづく!!

第1章でした~

やはりと言うか、分かっていたことと言うべきか…。この『イクサガミ』はシーズン制を選択した様子だ。
物語は史実のターニングポイントを描きつつ、静岡篇の直前で一旦幕を下ろした。つまり、ここまでがシーズン1=第1章だ。

原作全4巻中の2巻くらいまでを駆け足で消化した形だが、もはや展開は別ルートなのでそもそも原作比較が用をなさない。
物語の舵は完全にNetflix版制作陣の手にあり、展開には予想がつかない。誰が生き残るのかも知る由もない(多分まだ決まってないんじゃない?)。
この先の静岡篇がどんな展開を迎えるのか…想像するだけで胸が高鳴る。

 

歴史的傑作の誕生(断言)

第1話時点で「新時代の時代劇を作る!」という意気込みが既にヒシヒシと伝わってきた『イクサガミ』だが、この最終話をもってその標語は「作る!」ではなく「作った!!」へと昇華した。

爆炎の決戦シーン。
史実を絡めたスケール観。
展開の予想がつかないサスペンス。
全てが圧倒的な熱量だ。ここにNetflix史上…いや、全時代劇史上最高傑作が誕生した。その歴史的瞬間に立ち会えたこと、まことに祝着の極みでござる。

この血と炎の祝祭は、まだ序章に過ぎない。
シーズン2では浜松~島田宿あたりの激闘が描かれ、場合によってはいよいよ東京が舞台になる可能性もある。いずれにせよスケールアップは確実だ。
願わくば櫻の薩摩ワープの秘密が、次シーズンで科学的に解明されることを期待したい。

 

 

Netflixで観る作品を探してるなら、この記事がおすすめよ。

 

 

当ブログの『イクサガミ』まとめ記事はこちらです。

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