評価:
Netflixオリジナル映画『アポストル 復讐の掟』を観た。
『ザ・レイド』の監督が『ウィッカーマン』を撮ったら想像以上に血みどろの映画に仕上がりました…って感じだった。
むちゃくちゃ暗い映画だったけど、割と好き。
舞台は1905年。
カルト宗教に誘拐された妹を救うため、兄のトーマスがその宗教の支配する孤島に信徒に紛れて潜入する…というお話だ。
このトーマスを演じるのが『美女と野獣』でエマ・ワトソンちゃんのお相手を務めた超絶イケメンことダン・スティーブンス。
端正な顔立ちは健在だが、今回の役どころは異様に目がギョロついた不健康青年。『ザ・ゲスト』の好人物ぶりや『レギオン』の初々しさなどはカケラも感じさせず、見事に別人だ。
なぜそんな目付きなのか…という点には作品のテーマに直結する深い理由があるので、熱演でもってそれを確実に表現したダン・スティーブンスには拍手しかない。
敢えてチャレンジングな役柄を選び、キャリアに幅を持たせようとする野心が伺える。こいつは伸びるぞー(何様)。
で、このカルト宗教の幹部が案の定ヤバい連中で、目的のためなら誘拐・拷問・殺人なんでもござれの残虐兄弟だった。
信徒に混ざって妹を捜すうちにトーマスは次第に危うい立場に追い込まれていく。ここらへんの「あ~バレちゃうよ~!!」的なサスペンス的展開には良い意味で悪い汗が出た。(…なんだ良い意味で悪い汗って?)
危機的状況は話の終盤に行くほどエスカレートしていき、ビジュアル的にもどんどん残虐な方向に加速していく。
そして暴力描写の凄まじさは残酷アクション映画の傑作『ザ・レイド』を世に放ったギャレス・エヴァンス監督らしく、マジで容赦がない。
たとえば「喉を掻っ切られて人が死ぬ」シーンなどは、並の映画ならば喉から血がブシュー→床に倒れて血溜まりが広がる…みたいな演出で表現するのが一般的だろう。
しかし本作では、ナイフが皮膚にめり込む→皮膚が裂ける→血があふれ出す…みたいな塩梅で、死と言う結果に至る「過程」を描くことに余念がない。『ザ・レイド』と同じくダメージを受けると人体はどう変化するのかを一切妥協なく描いているのだ。
まさに激痛描写のオンパレードだ。
その残酷描写は、予告編にもあるお清め脳天ドリルのシーンで最高潮に達する。
まず人間を処刑台に大の字に固定するのだが、四肢固定の仕方がベルトや手錠じゃなくて万力。固定だけで手脚が骨まで潰れてます。
頭部も固定するので頭蓋骨を万力締め。締めている間に「バキッ」と厭な音がするという有様なので、固定するだけで既に半死半生だ。
そしてここから犠牲者はさらに残虐な目に遭うことに…。
カルト宗教映画と言えば生贄シーンだが、このわんぱくなブチ殺しっぷりは過去の作品と比べてもかなりのインパクトを持っているのではないだろうか。
トーマスが人間ミンチ製造機みたいな機械に引き摺り込まれるシーンも秀逸。
こんな絶対絶命のピンチをどうやって切り抜けるんだ!?という観客の問いに対し、実にギャレス・エヴァンスらしい残酷かつトンチの効いた回答が示される。
まったくもってブレねえ。
と言う訳で、暗いわ痛いわ善人ほどヒドい目に遭うわでちっとも愉快な映画ではなかったが、見応えは間違いなくあったのベネ(よし)。
誘拐された女性を探しにカルト宗教の島に行く…という『ウィッカーマン』的なミステリと残虐な暴力描写が融合したレベルの高い作品だ。
Netflixオリジナル映画としても久方ぶりの大当たりだった。
なお島を支配する超越的な存在「彼女」の説明が少なく何のメタファーなのか正直さっぱりだったが、そこら辺は一神教への信仰をテーマにした映画がみんなそうであるように、ハナから日本人には理解しにくい要素なのでしょう。
そして邦題の『復讐の掟』が何のことなのか誰か教えて!