Netflixで配信中のホラー映画『テリファイド』を見ましたよ。
素敵にキャッチーなサムネイルに釣られてね。
↓これな
自分の中には「ポスターが怖いホラー映画ほど本編はショボいの法則」なるものがございましてね。
これだけ恐ろしいサムネイルならさぞや中身は大したことなかろうと正直ナメてかかってたんですけど、これがもう予想を遥かに上回る大傑作でした。
怖さ半端なかったです。最近見たホラー映画では『ヘレディタリー/継承』の次に途中で観るの止めたくなりました。
一つ一つの恐怖シーンが丁寧に練り込まれているだけでなく、話の運びとしての緩急のつけ方が実に見事。一番怖いタイミングで一番怖いシーンがバーンと出てくるおもてなし精神が全編に渡って冴えまくっています。
それでいて上映時間を僅か90分未満に収めるというテンポ重視の構成力にも脱帽。奇遇にも同じ日に観たホラー映画『ベルベットバズソー/血塗られたギャラリー』が長いだけですこぶるチンタラしてたので秀逸さがより際立ちましたね。
海外では既に絶賛を集めているようで、ギレルモ・デル・トロ製作でのハリウッドリメイクも決定しているとか。この完成度ならむべなるかな。
本邦では「未体験ゾーンの映画たち2019」で公開された後、まだソフト化もされていないようです。つまり現状Netflixでしか見ることの出来ないマイナー中のマイナー作品。
まさに隠れた傑作です。
↑自分の寝室を録画してみたら、映っていたのは…
物語はまず、ブエノスアイレスの平凡な住宅街で起きる怪奇現象をフィーチャーします。
排水口から聞こえる不気味な声。
夜な夜なベッドの下から這い出して来る「何か」。
歩いて自宅に戻ってきた少年の死体。
この時点で不気味さマキシマムドライブで、ホラー映画としてのツカミはばっちりです。
で、このあと超常現象専門家が調査に乗り出してくるワケです。
常人では対応しきれない怪奇現象が起き、そこへ百戦錬磨のプロが登場するという王道展開!
『エクソシスト』からの古き良き伝統ですね。最近のヒット作になぞらえるなら『死霊館』でしょうか。
しかし本作『テリファイド』の超常現象専門家たちには、カラス神父やウォーレン夫妻ら過去作の専門家とは圧倒的に異なる点があります。
それはまったく頼り甲斐が無いこと。
なにしろ登場するなり「よし、一人ずつ手分けして調査しよう!」という死亡フラグそのものを全力で打ち出しに来ます。
そこは最低でも二人一組だろ! 既に何人か死んでるのに無警戒過ぎるだろ!
そして「怪異」を記録しようと仰々しい観測グッズ展開する彼らですが、その「怪異」への対抗手段は何一つ持っていないというブレない無防備さ。ひのきの棒で単身ロンダルキアの洞窟に挑むローレシアの王子の如し。
しかもいざ眼前に異形が現れても「う~んもう少し様子を見てみよう」としか言わず、そのまま酷い目に遭わされるというノーガード戦法です。
「我々は異なる次元の存在を研究しているのだが、そいつらは血を好み人間を襲う危険なヤツらだ。」
ってドヤ顔で言うけどさ、そこまで分かってるなら何か対策立ててから行動しようよ!!
↑おいヒゲ! うしろうしろ!!
でもまあ超常現象専門家の不甲斐なさは明らかに意図的なもので、逆に映画を面白くするスパイスとして機能しています。
なにしろ本作『テリファイド』には特定の主人公がいません。
序盤はとある夫妻にスポットが当たりますが、彼らは早々に退場してしまいます。
次に登場するのは老年のベテラン刑事。その刑事を軸にエピソードが回り出したと思ったら、今度は超常現象専門家のお婆ちゃん登場。…こんな感じで次々と中心人物が交代していきます。
そして例によって登場人物全員が頼りないノーヒーロー映画なので、誰が死んで誰が最後まで生き残るのか全く読めない雰囲気に仕上がっています。
この仕掛けがほんとに絶妙。否応なしに観る者の不安が煽られ、終盤にかけてのショッキング描写の連打がより強烈なインパクトを放ちます。
キャスティング一つでこの仕掛けは容易く崩壊するので、ハリウッドリメイクの際は細心の注意を払って頂きたいものです。
と言う訳で王道オカルトホラーとして出色の傑作でした『テリファイド』。
ウォーレン夫妻がヘボい版『死霊館』が見てみたい!という奇特な方には自信をもっておススメできる逸品です。