おすすめ度
■■■■■■■□□□ 7点
【あらすじ】
双子の兄弟エリアスとルーカスのもとに美容整形手術を終えた母親が戻ってくる。しかし顔をぐるぐるに包帯で巻いた母親はどこか冷たく、以前とは印象が違う。ひょっとしてお母さんじゃなくて別の誰かなのでは?
双子は母親の正体を暴くべく様々なイタズラを講じるが、やがて状況は意外な方向に。
本作、何より美術が素晴らしいです。無機質な装丁の豪邸におぞましい虫のコントラストが強烈。
母親の包帯も素敵に不気味です。遠目にはピエロが笑っているように一瞬見えるけどよく見たらただの包帯。何かがおかしいけど何がおかしいのかはっきり分からないという、本作独特の不安感が煽られます。
最近ハリウッドでは『インシディアス』系のビックリホラーが大流行ですが、本作はいかにもヨーロッパ映画らしい静かで芸術性の高い仕上がりになっています。
と見せかけて終盤はスーパーゴアな残虐まつりに!
総じて面白かったです!
※ ネタバレ警告※
以下の記事にて作品の結末に触れています!未見の方は注意!
美容整形手術後と思われていた母親は本当に母親でした。
嘘があったのは双子の方で、実は片割れのルーカスは既に事故で死んでおり、その事実を受け入れられないエリアスは精神を病んで虚構のルーカスを作り出し彼と過ごしていた(つもりだった)のでした。
ルーカスの存在を否定する母親に業を煮やしたエリアスは彼女をベッドに縛り付けて監禁。虫眼鏡で集光して顔を焼いたりして拷問し、最終的に火を放ち家ごと焼き殺します。
燃える家を笑顔で見つめるエリアス、ルーカス、お母さんの三人のショットで完。もちろんルーカスとお母さんは妄想。
多分本来の話の流れとしては
包帯の母親が怪しいぞ
→あれやっぱり子供たちも怪しいぞ
→子供たちの方が大惨事を引き起こしたぞ
という加害者と被害者が途中で入れ替わる点がサスペンスなのだと思われますが、 子どもの方がサイコパスなのは序盤でバレバレなのでちょっと緊張感が乏しいかも知れません(´・ω・`)。
さっきまで誰もいなかった場所から突然ルーカスが現れたり逆に突然消えたり、母親がルーカスの存在を露骨に無視していたり。
虫、虫、虫・・・
エリアスの邪悪な内面のメタファーとしてでっかいゴキブリが繰り返し登場しますが、これがまあ本当に気持ち悪い。
ゴキブリが寝ている母親の顔を這いまわって口の中に入っていくシーンとか、腹を裂いたらゴキブリがあふれ出してくるシーン(エリアスの妄想)とかはもう本当に強烈オブ強烈。
虫嫌いにはきっと素敵な思い出になると思いますよ(白目でニッコリ)。
正統派後味悪い映画
母親は精神を病んだ息子を何とか助けようと様々な手を尽くしたのに、結局その息子に拷問の上に焼き殺されるという顛末がもうね、超救いが無い。
ラストシーンでエリアス、ルーカス、お母さんの三人がにっこり笑って燃える家を見つめるというのも壮絶に後味悪い。母親の愛はすべて無駄に終わり、エリアスは完全に虚構と妄想の世界の住人になってしまったということです。
と言うか母と子供のディスコミュニケーションをテーマにするにはエリアスがサイコパス過ぎます。いくら子どもで精神病でもいきなり拷問はしないぞ。
テーマに類似があるホラー『ババドック 暗闇の魔物』が奇しくも同時期に公開されていますが、こちらは本作とは結論が真逆です。
何にしろ正当派後味悪い映画としてかなりの完成度だと思います。
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