■■■■■■■□□□ 7点
…何この邦題?
原題の『Les affames(=飢え)』とはちょっと違うし、そこはかとなく日本語としてぎこちないし、誰が何を狙ってつけた邦題なのでしょう…。控えめに言ってダサ過ぎます。こんな題名の映画一体誰が見るんだよ!そう、俺以外は!!
という訳で思い切って観てみました『飢えた侵略者』
なんと!意外にも(←失礼)秀逸な異色ゾンビ映画でしたよ。やるじゃんNetflixオリジナル!
『ウォーキングデッド』のような濃厚なドラマは敢えて排し、死も絶望もすべてが淡々と過ぎていくという雰囲気が独特の終末感を醸します。ゾンビアポカリプスに巻き込まれて為す術無く死んでいく一般人にスポットを当てた着眼点が冴え渡っていますね。
好きですコレ!
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『28日後』と『ドーン・オブ・ザ・デッド』のヒット以来、ゾンビは全力疾走するものという一つの潮流が完成されました。ゾンビ映画とアクション映画のジャンルとしての距離がかなり近付いたということです。
その点では本作『飢えた侵略者』のゾンビもこの潮流に乗るまごうことなき全力疾走系です。
しかしダッシュしてきたゾンビが犠牲者にむしゃぶりつくシーンなどは敢えて直接画面に出さず、その前後だけを描くことで余韻を持たせるスタイルが全編貫かれています。結果、ものすごく静かなゾンビ映画になりました。独特です、この雰囲気。
ゾンビは生きてる人間には理解不能
ゾンビ自体の描き方はさらに個性的です。
特に「振り返るとさっきまで誰も居なかった場所に複数のゾンビが整然と並んでいる」などのシーンはゾンビ映画の演出としてかなりの変化球。普通にビックリしておしっこちびりました。
また、ゾンビの習性についてはこれまで色んな映画が色んな設定をめいめい作っていますが、本作はこれまた(良い意味で)意味不明で尖ってます。
不可解さの映像表現として登場するあの「椅子」のシーンは強烈なインパクトでした…。セリフを使わずあの「椅子」を映すだけで、とんでもない脅威がすぐそばまで迫っているという事実を表現するという手法には脱帽です。
淡白でも存在感ある登場人物たち
中でも私のお気に入りは、序盤に音楽でわざわざゾンビをおびき寄せてからブッ殺していたあの女性。夫と息子を死なせて自分だけ助かってしまったというやり切れなさをゾンビへの攻撃力に転化し、中盤以降は出る映画を間違えてしまったかのような異様な戦闘力を発揮します。すげぇ!
なお意外と笑いの要素が多いのも緩急付けに一役買ってて好感触です。
ゾンビと思って間違えてウザいキャラクターの人間を撃っちゃったけど「う~ん、多分もう噛まれてたからノーカン!次!」で済ませるシーンは爆笑でした。
大作でもなければ大傑作でもないけれど、この映画と引き合わせてくれたNetflixに感謝したくなる印象的な一本でした。