人気映画の枠を超え一つの文化と化しているレジェンドホラー『シャイニング』。
その続編を40年ぶりに作ってしまったという、古今稀に見るチャレンジングな一作が今回紹介する『ドクタースリープ』です。Netflixで配信開始となったのでようやっと観てみました。
まあスティーブン・キング爺の原作ありきなのでムチャクチャ突拍子も無い企画という訳ではありませんが…あのキューブリックの仕事を引き継ごうって言うのだからアグレッシブな試みには違いありません。
ドクター・スリープ
2019年 アメリカ
監督:マイク・フラナガン
出演:ユアン・マクレガー、レベッカ・ファーガソン
評価 C
オーバールックホテルの惨劇から40年。
三輪車ボーイのダニーは退廃的な大人になり、酒浸りの日々を送っていた。
一方"帽子のローズ"と呼ばれる謎の女は、ダニーのような能力者を殺害してはその力を吸収し不老長寿を得ていた。
ある能力者の少女をめぐりダニーとローズが出会うとき、壮絶な超能力バトルの幕が上がる!
…というお話です『ドクタースリープ』。
監督はマイク・フラナガン。
小粒でもピリッと来る系のホラーを撮り続ける粋な御仁でしたが、Netflixオリジナルホラー『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』ではホラー監督として類まれなる独創性を発揮。スティーブン・キングつながりなら同じくNetflix映画『ジェラルドのゲーム』も素晴らしい完成度でした。
たしかに今『シャイニング』の続編を撮るなら、マイク・フラナガン以外考えられません。
『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』自体が『シャイニング』の影響を受けまくった幽霊屋敷ホラーってところにも絶妙な符合を感じます。
しかし幽霊屋敷ホラーの金字塔である『シャイニング』から一転、『ドクター・スリープ』の主テーマはなんと超能力バトル。
エイリアンシリーズもかくやと言うほどの大幅な路線変更です。
"帽子のローズ"という分かりやすい悪役も登場し、善vs悪という明確な軸を打ち出すスタイル。呪いのホテルという一種の災害(それ自体は意志を持たない)が悪役だった『シャイニング』と比べると、そのとっつきやすさは各段に向上しています。俺好みだぜ!
超能力バトルの奇想天外な映像表現もグッドでした。
いかにもマイク・フラナガン。
当然と言えば当然ながら、前作『シャイニング』へのリスペクトも豊富。
あのBGM!
あの湖面の撮り方!
森の道を行く自動車を捉える、あの俯瞰視点!
マイク・フラナガンにとって『シャイニング』なんか御神体も同然の作品だろうから(多分)、さぞや身が引き締まる思いで撮ったことでしょう(;'∀')
「人間以上の力を持つ怪物のはずなのに、銃弾一発で霧散するとか弱過ぎね?」
とか
「エレベーターから血の洪水が"とりあえずやってみただけ"過ぎね?」
などなどツッコミたい箇所は多々あれど…。
ミステリアスさや芸術性を潔く切り捨てて分かりやすさ重視で再構成した物語は十分楽しめました。
ファンタジー寄りのホラーアクションとして必要十分と呼べる良作でしょう。
なお個人的にここんところずーっとスターウォーズ系ばっかり観てたので、ダンがオビ=ワンにしか見えなくて(;^ω^)
特にエピローグなんかフォースの使い手ならではのオチとしか。
森川智之みたいな声で喋るし。
関連作
という訳で関連作を紹介して今回の記事は終わりたいと思います。
こちらは関連作って言うか、前作そのもの。
「廊下の先に双子の少女」
「エレベーターから血の洪水」
「オノで扉を破壊して"ヒア~ズジャ~ニ(・∀・)イイ!!"」
などなど、誰もが知るアイコニックな名場面をあまた放った傑作中の傑作です。
『クレヨンしんちゃん』から『レディプレイヤー1』まで古今東西のアレやコレにしょっちゅう引用されることからも、その人気の高さが窺えます。
映画自体が面白いかどうかより、これだけ長年愛され続けるアイコンとなったことこそ『シャイニング』の真髄でしょう。
ただ子どもが立っているだけなのに、直視できないほど怖い。
これが天才の撮る画か…ッ!
なおこっちが『ドクター・スリープ』版の同シーン。
リスペクトフルッ!
で、こちらはその『シャイニング』について長年考察を続けるファンらを追ったドキュメンタリー。
例の三輪車のシーンで、カーペットの模様がカットによってしばしば逆転している話などは「なるほど…」と思わせる説得力があります。
しかし「本編と逆再生を重ね合わせて同時再生したらある瞬間でジャック・ニコルソンの鼻が赤く見えてピエロみたいに見えた!これはキューブリックからのメッセージだ!!」と言い始めるくだりに至っては、なんとも言えない『アンダーザシルバーレイク』の主人公感が滲みます。
コアなエヴァンゲリオンファンさえ裸足で逃げ出す深読みガチ勢の脅威。
「世の中いろんな人がいるなぁ(;^ω^)」
と勉強になりました。
だけど結局このひとたちは正体不明。
そこはかとなく恋人同士感ありますよね。そこはかとなく。