Netflixオリジナルドラマ『ラブ、デス&ロボット』が配信されています。
タイトル通り愛と死とロボットにまつわる全18話のCGアニメ短編集で、1話あたり10分前後とかなりコンパクトな作風。
テンポよく次の話が始まってしまうので「あと1話だけ見よう」からの「全話一気見」を食らいやすいのでご注意です(;^ω^)
本作、私の印象ではほとんど宣伝を打ってなかった気がします。
「Netflix3月の配信作品」でちらっと触れられてただけで、雑誌への露出も見たことありません。少なくとも『アンブレラアカデミー』みたいに大々的にアピールしている感じではなかったと思います。
ところがどっこい、実際見てみるとこれがめちゃくちゃ面白いでやんの。びっくりしましたよ、完全にノーマークだったのですごい得した気分です。「やべー、みんなが知らないスゲーやつ見ちゃった」的な。
かなり潤沢に制作費をつぎ込んでる感じだったし、もっとアピールすればいいのに。勿体ない…。
Netflixオリジナルの一話完結ものという点では『ブラックミラー』を彷彿とさせますね。
ただ『ブラックミラー』が映像的には割と上品にまとまっていたのに対し、本作『ラブ、デス&ロボット』はほぼ全話共通してエログロ描写が強烈です。流血シーンやおっぱいは言わずもがな、容赦のない四肢切断描写や陰毛、ちんこ、なんでもござれです。
さらに凄いのは全18話のうちハズレの回が一つも無いこと。各話それぞれが実に強烈な個性を放っています。
製作上の制約が緩いのでどんどんアグレッシブなテーマに切り込んで行けるというネット配信作の強みを十二分に活かしていますね。
本作を手がけるのは一作目『デッドプール』監督のティム・ミラーを始め、テレビゲームのCGムービー畑やカートゥーンアニメ畑などで活躍していたクリエイターが名を連ねます。なかなか面白い顔ぶれ。
と言う訳で、エログロ描写が許容できる方には文句なしにおすすめ出来る逸品です『ラブ、デス&ロボット』。
せっかくなので各話の所感をぱぱっと書いてみたいと思います。
以下の記事 ネタバレ注意!!
目次
ソニーの切り札
狂暴な怪獣同士を戦わせる地下闘技場を舞台にした一編。
怪獣を操作する役の女性選手は八百長試合を持ち掛けられますが、元より金のために戦っていない彼女は話を一蹴。しかしそのせいで後々とんでもない目に遭うことに…。
流血上等の怪獣バトル→おっぱい→切り株描写…と、映画秘宝系の御仁が喜びそうな要素を僅か17分に詰め込んだ濃密な一本でした。
オチも素敵でしたね。そっちが本体かよ!
ロボット・トリオ
文明崩壊後の都市を個性的なロボット三人(?)組が観光するオフビートコメディ。
かつての人類の生活を珍妙な切り口で解釈して納得していく姿は『ファイアボール』のドロッセルお嬢様を彷彿とさせますね。ドロッセルお嬢様懐かしい…元気にしているだろうか。
「人類はその傲慢さから、核の冬を待たずに長く続いた秋で滅んだのです」にはグッと来ましたぜ。
でもオチの意味はよく分からなかったです(;^ω^)猫にゃー
目撃者
自分そっくりの女性が殺される殺人現場を目撃したストリッパー。犯人の男から逃げる女だったが、最終的にはもみ合いになり無我夢中で反撃。はずみで男を殺してしまう。
するとその場面をたった今殺した男とそっくりの男が目撃していて…。
という、ブレードランナー風のきったない近未来都市で展開する『火の鳥:異形編』みたいな一編。
二人がなんの業を背負ったか知らないけど、この追いかけっこを未来永劫繰り返すんでしょうね。交互に。
あとここまではっきり女性の陰毛を描いたCGアニメはこれが初なんじゃないでしょうか。
スーツ
未来の農夫の生活を描いた一編。
一見温厚そうな農家のおっちゃんらが巨大ロボットを乗り回してモンスターをなぎ倒すという、のどかな導入部からは想像もできない過激な展開に唖然とさせられます。
男気あふれる自爆シーンが熱い。
あと大塚明夫の吹き替えも熱い。
魂をむさぼる魔物
考古学者がうっかり古代の魔物を復活させてしまい、護衛の傭兵とてんやわんや!
絵柄は独特だけどテンポ良く展開するアクションが小気味よかったですね。
魔物のちんこをショットガンで吹っ飛ばすシーンが面白かったし、学者の助手が縦に真っ二つにされるシーンも素敵でした。
ただもうちょっと痛快なオチでも良かったんじゃないかなと思わんでもないです。
ヨーグルトの世界征服
クレイアニメ風の絵柄で「ヨーグルトに支配される人類」というめっちゃしょうもないジョークのネタを映像化した一編。
最終的には支配する価値さえ無いと判断され、人類がヨーグルトに見放されるというオチがブラックな笑いを醸します。
わし座領域のかなた
個人的に『ラブ、デス&ロボット』全話通して一番好きなエピソードがこちら。
宇宙船のワープが失敗して意図しない宇宙ステーションに到着した男は、そこで偶然元カノと再会する。しかしその宇宙ステーションにはある秘密が隠されていた…というSFホラーチックな話。
実写と見紛うようなリアル寄りのCGが印象的です。
明言は避けられてるけど、ワープの失敗で別の次元に行っちゃったんでしょうね。人類が「地獄」と呼ぶ次元に。
でもそこの主は案外優しくて、そこが本当はどこなのか極力本人たちには知らせたくないという意向。そんな救いがあるような無いようなヒネッたオチが最高です。
あとCGアニメでここまではっきり濡れ場を描いた作品は中々無いと思うのですがどうでしょう。
グッドハンティング
近代化に伴い住む場所を追われていった妖怪が、技術革新に伴い新たな姿を手に入れるまでを描いたファンタジー。
前話と打って変わって、中国感あふれる独特の絵柄です。
主人公の青年が狐妖怪のヤンに恋していたのは明白ですが、最後までそれを明かさずに「良い狩りを」という一言に想いを託すラストが感動的でした。
これも好きな一編です。
あと今回もちんこを画面に出すことに躊躇が無い。凄いぞ『ラブ、デス&ロボット』。
ゴミ捨て場
ゴミ捨て場に住むルンペンと、彼に立ち退きを要求する役人を描いた小話。
舞台が舞台なだけに、終始汚いものが画面に映り続ける怪作です。その最たるものがホームレスのちんこでしょう。ちんこ出すぎじゃないですかやだー。
シェイプシフター
アフガニスタンの海兵隊に、超人的な力を持つ二人の兵士が居た。しかし彼らの前に同じ力を持つ強敵が現れ…。
実写寄りのCGで描かれる本格アクションホラー。男の戦いと男同士の絆をテーマにした男気溢れる作風がめっちゃツボでした。
あと変身シーンの途中で攻撃するという反則にもあっさり対応する主人公が素敵。
救いの手
『ゼロ・グラビティ』と『127時間』を足して10分に縮めたような一作。
前に進むことができるのは失う覚悟のある人間だけ!というメッセージがまっすぐ突き刺さります。
タイトルは駄洒落かよ!
フィッシュナイト
車が故障し砂漠の真ん中で立ち往生する二人のセールスマン。夜中に二人が目覚めると、そこには太古の海の風景が広がっていた…。
幻想的な映像が美しい一本でした。
でもオチはよく分かんなかったよ!
ラッキーサーティーン
不運の象徴と呼ばれた戦闘機と、そのパイロットの絆を描いたSFアクション。
キレの良いドッグファイトが痛快でしたね。洞窟の中を戦闘機同士で追いかけっこするシーンが特に素敵!
「アフリカ系の女性軍人がジンクスを撥ね返していく話」と捉えればポリコレ風の味わいも出てきます。
『Halo』ライクな宇宙海兵隊のデザインもカッコよかったです。
ジーマ・ブルー
世界中から注目を集める芸術家ジーマ。彼が「青」にこだわり続ける理由とは。
長い旅路の果てに自分の原点を見出すのはSF映画のお約束ですよね。哲学的な彩りの一編でした。
ブラインド・スポット
サイボーグ盗賊団の豪快な強盗ぶりを描いた一編。
前話と打って変わって特にテーマを持たない、あけすけなアクションアニメです。
『ボーダーランズ』っぽかった。
氷河時代
若いカップルが入居した部屋に置かれていた古い冷蔵庫。その中では小さな人類が文明の繁栄と滅亡を繰り返していた。
メルヘンチックでかわいらしい話でした。どことなく星新一っぽい。
そして珍しくだれも死なない。ちんこも出ない。
歴史改変
もしヒトラーがもっと早く死んでいたら?
という不謹慎な歴史ifをカートゥーン風アニメで描く一編。
最初は割と真面目に第二次世界大戦ifをシミュレートしてたのに、だんだん脱線してイカ文明が勃興したり未来人によるセックス革命が起きたりして無茶苦茶に。
オチの一言も秀逸です。
秘密戦争
時は第一次世界大戦。
某国は戦争に利用するため地獄より魔族を呼び出すが、制御できなくなって大惨事に。ロシア赤軍兵士たちは野放しの悪魔を駆逐すべくシベリアの森を行く。…という『ヘルボーイ』チックな設定のオカルトアクションです。
大勢ワラワラ系モンスターは『スーツ』で先にやられている感があるけど、リアル寄りCGで綴られる終盤のバトルは圧巻の一言。トリにふさわしい傑作でした。
あと赤軍らしく、呼び合うときに名前の前に「同志」を付けるのがちょっと可愛い。