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『ナイブズアウト』感想 超豪華キャストのフーダニットが見たいかーッ!?ワシもじゃッワシもじゃみんなッ!

出演者入場ーッ!

 

 

登場しだい推理しまくってやる!!
ダニエル・クレイグだァ―――!!

 

 

マイアミからマルボロマンが上陸だ!
ドン・ジョンソン!!

 

 

基地外母ちゃんは生きていた!更なる研鑽を積み顔芸超人が甦った!!
ゴム顔面、トニ・コレットだァ―――!!

 

 

カワイイ―――ッ説明不要!
アナ・デ・アルマスだ!!

 

 

ブギーマン対策は完璧だ!!
ジェイミー・リー・カーティス!!

 

 

ゾッド将軍こそが地上最強の代名詞だ!!
まさかこの男がきてくれるとはッッ マイケル・シャノン!!

 

 

高齢者キャラはすでに完成しているッ!
クリストファー・プラマーッ!!

 

 

新たなアーサー王伝説が今ベールを脱ぐ!
ニミュエからキャサリン・ラングフォード!!

 

 

若きアベンジャーズが帰ってきたッ
どこへ行っていたんだッ キャップッッ
俺たちは君を待っていたッッッ クリス・エヴァンスの登場だァ―――ッ!!

 

…ッッ
どーやらもう1名(ジョセフ・ゴードン・レヴィット)は到着が遅れているようですが、到着次第ッ皆様にご紹介致しますッ

 

 

ナイブズアウト

2018年 アメリカ
監督:ライアン・ジョンソン
出演:ダニエル・クレイグ、アナ・デ・アルマス

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密(字幕版)

 

評価 A

 

謎めいた状況で死んだ富豪…。
変わり者ぞろいの大家族…。
そして突然現れる名探偵!

アガサ・クリスティ的な定番要素を完璧なまでに取り揃え、古典的な犯人捜しサスペンス―いわゆる"フーダニット"を現代に蘇らせた『ナイブズアウト』。
ライアン・ジョンソンによる鋭い演出とこれ以上ないくらいのオールスターキャストで綴られるそのドラマは、笑いありスリルありの超一級エンターテイメント。とにかく面白い映画を作ろうと試みたらこんなんできました、と表現すべき大傑作でした。
いかにも往年の名作の再映画化のように見えて、実はライアン・ジョンソンによるオリジナル脚本だという点も二重にスゴい。

 

真相の究明という明確な目的に向かってただ真っ直ぐ進み続ける本作は、一切奇をてらわない純然たるミステリー。
なので本作に関して「この展開が面白かった」だの「あのオチには驚いた」だの「この伏線が絶妙」だのとをクドクドお話するのは野暮なだけなので遠慮しようかなと。オチを含めた事件の全貌が知りたいならwikipedediaに全部書いてあるし(怒られないのかなコレ(;^ω^))

代わりに語りたいのはライアン・ジョンソンって凄いよねって話。

 

LOOPER/ルーパー (字幕版)

ライアン・ジョンソンはジョセフ・ゴードン・レヴィット主演のサスペンス映画『BRICK』がサンダンス映画祭で高く評価され、一躍有名になった気鋭の監督。
2012年に製作された『LOOPER』では再びジョセフ・ゴードン・レヴィットと組み、超能力とタイムパラドックスが複雑に絡み合うトガった世界観を披露。独特過ぎる映像センスとストーリー展開で世界中を魅了しました。

そしてライアン・ジョンソンはその後『スターウォーズ』に抜擢され、シリーズ最大の問題作ともいえる『エピソード8』を製作するに至ります。

 

話はやや逸れますが…。
『スターウォーズ』と言えば、言うまでもなく世界中で愛される超人気コンテンツ。

剣と魔法とお姫様をSFの文法で描いたエピソード4~6。
政治と権力闘争をSFの文法で描いたエピソード1~3。
どちらの三部作も大傑作でした。

 

 

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そして新・三部作の開幕編である『エピソード7』。
今度の三部作は一体いかなるコンセプトで始まるのかと2015年当時の私はワクワクしたものでした!…が。
J.J.エイブラムスの手によって完成を迎えた『エピソード7』は、過去のスターウォーズ作品でウケた要素を再構成しただけの一作に。言わば「新曲ナシのベスト版」でした。

いつも通り砂漠から話が始まり、
いつも通りライトセーバーのちゃんばらがあり、
いつも通りX-ウイングがデススターを吹っ飛ばす。

間違いなく面白くはあるのですが、まるで観客への必死なご機嫌取りに見える卑屈さには若干ヘキエキしたものです…。
くどいですが『エピソード7』は面白いです。傑作です。
でも、ある意味それゆえのガッカリ感があったのも事実。これ前と同じ話じゃん…みたいな。

 

 

スター・ウォーズ/最後のジェダイ (字幕版)

勝手な私見ですが、恐らくライアン・ジョンソンも同じ気持ちだったのではないでしょうか。だからこそジョンソン監督は、自分の任された『エピソード8』で徹底的に従来のスターウォーズ観をブッ壊しにかかったのだと思います。

ジェダイの魂とも呼ぶべきライトセーバーを、ぞんざいに放り捨てるルーク・スカイウォーカー。
終始"血縁の争い"の話であった前三部作から一転、誰の子でもないただの人であることが明かされる主人公のレイ。
帝国だろうが反乱軍だろうが、戦争なんかしている奴はみんな等しくクソというDJの乾いた主張。

「これがスターウォーズ」と万人が考える要素をことごとく相対化した『エピソード8』は、賛否真っ二つの大論争を巻き起こしました。

 

 

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そして再びJ.J.エイブラムスの手に製作がゆだねられた『エピソード9』では、『エピソード8』の衝撃的なラストから無理やり『エピソード7』の路線に戻すという超突貫工事に。結果、非常に不自然な仕上がりに…なるべくしてなってしまいました。

ルークは自分の行動を威勢よく棚上げして「ライトセーバーには敬意を払いなさい」と言い出すし、レイはやっぱり偉大な血筋でしたってことになるし、DJに至っては登場すらしない。
誰がどう見ても『エピソード8』を無かったことにしたい態度です。

この方針の定まらなさは作品に暗い影を落とし、『エピソード9』は興行的には成功するものの高い評価は得られませんでした。
「これ結局何の話だったんだろう(;^ω^)」という後味の悪さを残し、覚醒トリロジーはなんとなく幕を下ろすハメになってしまったのです…。

 

別にライアン・ジョンソンが良くてJ.J.エイブラムスが悪いなんて言うつもりはないです。
良い悪いの話を敢えてするなら、誰も受けられないような逆キラーパスを放ったジョンソンが悪い。あくまで敢えて言うなら。

でも覚醒トリロジーの敗因を無理やり何かに帰するなら、それはJ.J.エイブラムスとライアン・ジョンソンの両極端の作風がうまくかみ合わなかった点に尽きると思います。

J.J.エイブラムスは観客の見たいものを見せるのがエンターテイメントだと考えています。言わばサービス精神の魂。
一方でライアン・ジョンソンは観客の予想を覆すのがエンターテイメントだと考えている節があります。アガサ・クリスティやダシール・ハメットら「元祖・読者の予想上回り屋さん」と呼ぶべき古典的ミステリーの巨匠に傾倒していることからもそれは窺われます。

当たり前ですが、これは作家性の問題なのでどちらが優れているとかそういう話ではありません。
ただこの二人の作風がもっと有機的に連携できたら、覚醒トリロジーは過去作に劣らない傑作となっていただろうに…と益体も無いタラレバをせずにはいられないッ!
これほどの才能が結集しながら、お互いの良さを活かせないどころか逆に打ち消しあってしまうとは…。もったいないオバケが泡吹いて卒倒する事案です。

 

話をもとに戻して『ナイブズアウト』ですが、同作はと言えば「観客の予想を上回ってやる!」というライアン・ジョンソンの執念が見事に"いい方向"に作用した作品に仕上がっています。

大好きな古典的推理小説を舞台に、シリーズもののしがらみに囚われることなく自由に話を展開できた『ナイブズアウト』。きっと撮ってて心底楽しかったんだろーなーと思います。その陽性の雰囲気は、作中からもコメディ要素としてにじみ出してきますしね。

久ッッしぶり(おそらく『レイヤーケーキ』以来)にダニエル・クレイグに喜劇をやらせたり、
コワモテ悪役の印象が深すぎるマイケル・シャノンに一番気弱なキャラをやらせたり、
みんな大好きキャプテンアメリカに差別主義者のチャラ野郎をやらせたり、
キャスティングにもライアン・ジョンソンらしく定石を敢えて外そうという明確な意識が見て取れます。そういう意味でも、本作はもう端から端までライアン監督らしさ爆発の作品と言えるでしょう。

 

…スターウォーズ談義に盛大に脱線してしまいましたが、『ナイブズアウト』の感想はこれで終わりにしたいと思います。
なおマルタの姉が冒頭で一瞬観ていた推理ドラマの出演は、ライアン監督の盟友ジョセフ・ゴードン・レヴィットだとか。
わ、分かるかそんなもん(;^ω^)!

 

 

-関連作-

LOOPER/ルーパー (字幕版)

未来からタイムスリップしてきた30年後の自分を退治しようとしたら逆にピンチに陥り、最終的には超能力バトルに発展するという凄い話。
これだけジャンルの垣根を超えまくった闇鍋映画なのに、一本筋の通ったストーリーに集束する脚本が素晴らし過ぎます。

 

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