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『エスケイプ・フロム・トゥモロー』感想 ポスターは超クールだが内容はひでぇの一言


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□  2点
【あらすじ】
うだつの上がらない中年男ジムは二人の子供と妻を連れてカリフォルニアのディズニーワールドに遊びに来ていた。
しかしこれから出かけようという矢先に電話で一方的にクビを言い渡されジムは愕然とする。失業したことを妻に隠してディズニーワールドで遊ぶうちにジムは徐々に現実を見失っていき、なぜかセクシーなフランス人女子大生コンビを付け回し始めるのだった…。

本作はディズニーワールド園内で無許可で撮影したという命知らず過ぎる映画です。
ポスターも例のネズミの手が血まみれという挑発的極まりないシロモノで、徹底的に反ディズニーを掲げているところロケンロールで頼もしい。
(ちなみに例のネズミの指が4本なのは有名ですが、本作の日本版ポスターでは5本指に改変されています。差別問題に配慮してのことかも知れませんが…そうだとしたらもともと4本指のものを敢えて無理やり5本指にする方が変に強調されて差別的だと思うのは私だけでしょうか)
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映画はビッグサンダーマウンテンの乗客が壁に頭を打ち付けて「グチャ」っとなるシーンで始まるという強烈さ。
イッツアスモールワールドの人形たちが世にも恐ろしい形相に豹変するシーンも最高です。このあたりは本当に「こ、これは絶対面白い!」と期待させるに十分な雰囲気でした。
一体この夢の国でどんな悪夢を見せてくれるのか!?°˖✧◝(⁰▿⁰)◜✧˖°ワクワク
が…。
完全に期待外れだったことをすぐに悟ることになりました。とにかく退屈なのです。

ディズニーのタブー満漢全席

ありとあらゆる「ディズニーの世界に存在してはいけないもの」を盛り込むというコンセプトは理解できるし、面白いと思います。
ディズニーワールドでは家族みんなが笑顔でしかるべきですが本作の夫婦はずっと喧嘩してばっかりです。
ディズニー作品ではエロはご法度ですが、本作の主人公のジムときたら息子そっちのけで女子大生風の二人をしつこく付け回し、医務室のナースが相手でも胸チラ覗きを怠らない剛の者です。
ディズニーの優しい世界では障がい者は心優しき弱者であるべきですが、本作の電動車いす野郎は超嫌な奴です。
ゲロや下痢などの汚物も効果音付きで大判振る舞いです。
あげく、ジムが行きずりのおばちゃんとコトに及んでホテルのベッドでエンヤコラするシーンではおばちゃんが悦楽に悶絶しながら「私の隠れミッキーを突いて!」とか叫びます。そんな所には居ないよ!
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コンセプトだけで映画は完成しない

こういう反骨精神あふれる題材は大好きなので期待したのですが…。
なにしろ退屈。進行がグダグダで、率直に言えば映画になってません。これはただの不快な描写の羅列です。

ジムを監禁して「素晴らしい妄想力だお!」と驚嘆する博士が実はロボットだったとかのくだりは完全に意味不明で「はやく終わらないかなこの映画」感に拍車をかけます。
意味不明な描写に何とか意味を見出そうとする思考遊戯も映画の愉しみの一つではありますが、本作に関して言えばそもそも映画自体がつまんないので何の興味も湧きません。
モノクロ映像も『イレイザーヘッド』的な悪夢感を出すための演出だと思われますが、悪夢自体が描けてないのでただただスベッてます。
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監督のランディ・ムーアは「ディズニーに訴えられなかったぜイエーイ」と武勇伝めかして語っているようですが、何のことはない映画の出来が悪いので相手にされてないだけです。
もし本作が公式ホームページにあるように「大衆エンタテインメントに執着する現代人の文化絶対主義を痛烈に揶揄し、神格化されたカルチャーへのまなざしの相対化を試みる意欲作」だったら、実際ディズニーも黙っていなかったでしょう。その時には真の武勇伝になってたかも知れません。
コンセプトが面白いだけでは映画は成立しないことを饒舌に語る迷作でした。
こう言う映画を褒めれば「映画をよく分かってる人」を気取れるので、もはやそういう好事家向けとしてのアイデンティティーしか無いと思われます。

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