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『日本沈没2020』第10話(最終回)感想 日本人としてのアイデンティティーに訴える珠玉のラスト

2020年7月30日

今回は『日本沈没2020』の紹介記事です。
ついに第10話、最終回です。

結論を先に書けば超良かった
これは間違いなくアニメ史上に残る傑作。

 

 

以下の記事 ネタバレ注意!!

 

 

日本沈没 第10話:ハジマリノアサ

2020年 日本
監督:湯浅政明
出演:上田麗奈、村中知、佐々木優子

あまたの犠牲を払って日本を脱出した歩たち。
8年後。そこには日本の再生を願い、日々を力強く生きる生存者たちの姿があった。

 

凄く良かったです『日本沈没2020』。
全体を通しては途中で話がどっちに向かっているのか分からず不安になる場面があったり、あまりのご都合主義っぷりに辟易する場面もあったりはしました(;^ω^)
でもこの最終回で描かれたのは"日本人として生きること"とは何かという問いと、それに対する明確な回答。
この力強いメッセージには涙腺決壊を禁じ得ません。
終わりよければすべてよし、です。グッド。

 

まずカイトがカッコよかった!
日本に住まず、外国語にも堪能なカイト。
YouTuberという国境無用の職業で唯一無二の影響力を発揮する彼は、"日本人2.0"とでも言うべき新世代の存在です。

主人公のピンチに絶妙なタイミングで空から舞い降りたり、主人公のピンチに水陸両用車を操縦して颯爽と登場したり、あまりに便利な万能キャラでしたが…。
この最終回では歩と剛のもとへ救助を送るべく、命を賭してひとり極寒の空へ気球で飛び立ちます。そこで見せる表情は普段のクールさをかなぐり捨てた、ただただ信念に準じる男のそれ。純然たる意地とプライド。
声も小野Dだしカイトちょっと良く描かれ過ぎの気もしますが、これからの"日本人"が向かう一つの理想像としてすごく印象深かったです。

 

そして最後に流れる、成長した歩の独白には涙腺決壊不可避。

Twitterとかでは賛否両論ですよね『日本沈没2020』。
もちろん、賛否あること自体は問題ありません。そんなの人の勝手。

そもそも『にほちん2020』は完成度の高い作品じゃありません。話はまとまりが無いし、作画は良い時と悪い時の差がデカすぎて目が疲れる。
rotten tomatoesでも腐ったトマト扱いだし、高い評価が与えられるべき作品ではないのは間違いないでしょう。

でもこの最終回で、片脚で走る歩の姿に日本人として何も感じないのは読みが浅いという気がします。
ましてや浅薄な国粋主義に見えるならちょっと傲慢でありさえするかも。

普段だったら他の人が作品をどう評価しようが気にしない私ですが、Twitterで的外れな主張を展開しては勝ち誇ったような態度で『にほちん2020』をコキおろしてる人があんまり多くて、気になってしまったというか何というか…。

 

『にほちん2020』は、我々日本人が普段意識していない存在を相対化したアニメです。普段意識していない存在とは。それは国土であったり歴史であったり、なにより周囲の賢明なる人々だったり。要するに日本と言う国です。

で、いざ日本がなくなった時そこに住む人々には何が残るのか…という問い。
それに対して『にほちん2020』は、日本は不滅だよと答えます。そこに生きた人たちがいる限りその人たちの中で生き続けるよ、と。

 

 

ミュンヘン Munich (字幕版)

話はいきなり変わりますが、スピルバーグ監督の『ミュンヘン』でパレスチナ解放機構のメンバーがエリック・バナに「母国が無い苦しみがお前に分かるか」と詰め寄るシーンがありました。
中学生だった私は当時、

「は?そんなの知らねーしwww母国なんか無くても自分は自分だろwww国が無いだけでピーピー騒ぐとか軟弱すぎwwwワロタwww」

以上の感情は持てませんでした。
我ながら薄っぺらい(;'∀')(だからこそ第9話での青臭いマイクリレーが心に響いたワケですが…。)

 

もちろんこれは、今考えれば傲慢極まりない見解です。
国が人で成り立っているのと同様に、人もまた国で成り立つ。国は個人によりどころとプライドを与え、そのアイデンティティーの大きな部分を形成します。
「国なんか無くったって自分は自分だろ」と言う主張が成立し得えないのは、その"自分"を形作っている一要素に"国"があるからです。

だからこそ、母国をもたない人たちはなんとか自分の国を持とうと命さえ賭ける。近年ではISISとの戦いの最前線に立ったクルド人とかまさにそう。
『にほちん2020』にも母国を失ったダニエルが登場し、その悲しみの深さの一端を垣間見せました。

 

日本人が中東問題にイマイチ理解を示せないのは、ここへの共感が難しいからでしょう。
現代日本人は母国というもののありがたみが中々実感できない境遇にいます。

もちろんこれは一面では喜ばしいことです。
国民が国を意識してないってことは、国家を意識しなきゃいけないような非常事態が少ないってこと。要するに平和ってことです。
ナショナリズムに突っ走った先の大戦への反省が、国を意識することへ罪悪感を帯びさせている背景も関係しているかも知れません。

 

話を元に戻して『にほちん2020』ですが…本作はそんな現代日本にあって、"あって当たり前"の事物を相対化しようと試みています。

日本という国が消滅した後も、生存者らは日本人として生きる道を選びました。日本と日本人は不可分なのです。
剛は日本代表としてオリンピックに出場(種目はeスポーツ!)。
小野寺は古賀やカイトの意志を継いで配信界隈で活躍。
そして歩は失った左脚を受け容れパラリンピックに出場します。

第9話の古賀先輩でもそうでしたが、湯浅監督の世界観では走ることイコール生きることです。
喪失からの脱出、日本人としての誇り…
そのすべてを背負って力強く走る歩の姿は、純然たる"生"への賛歌。
これが泣けずにいられるかっての(つд⊂)

 

なんかこう…えらく脱線してしまった気がしますが『日本沈没2020』の感想は以上です。
いろいろ言われている作品ですが、個人的には本当に面白かった。
湯浅監督の次回作にも期待です。

 

ミュンヘン Munich (字幕版)

国家間のしがらみから暗殺ミッションに挑むハメになる素人集団!
「口の中を撃たれると人間の体はこう壊れる」的な残虐描写に妥協がない超傑作。スピルバーグの暗黒面がノリノリ。






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