評価:
観たぞNetflixオリジナル映画『アウトローキング -スコットランドの英雄-』!
実在のスコットランド王ロバート・ブルースを主役に据えた本格史劇だ!
舞台背景を把握するのに大分リソースを割かれたけど、見応えのある逸品だったぜ!!
時は14世紀初頭。
スコットランドではロバート・ブルース卿(クリス・パイン)とジョン・カミン卿が互いに王位継承権を主張し争っていた。
しかしそのいざこざに付け込まれイングランド王エドワードⅠ世の侵攻を受けてしまう。
英雄ウィリアム・ウォレスは最後まで果敢にエドワードⅠ世に抵抗したが、物量で勝るイングランド軍の前に成す術なく敗退。スコットランドは降伏し、イングランドの支配を受け容れることになるのだった。
物語はロバート・ブルースがイングランド王にごめんなさいするところから始まる…。
誤解を恐れずに言えば、一般的な日本人には理解しがたいタイプの映画が二つあると思うんだ。
一つは一神教(特にキリスト教)をテーマにした映画。
もう一つは他国の歴史を題材にした映画だ。
どちらのテーマも現在の世界情勢を紐解くのに欠かせない大事なファクターだけど、いかんせん普段の生活に多くは関わってこないので馴染みが薄く、仮に知識を得ることはできても真に理解するのは中々難しい…。
それが俺も含めた多くの日本人に当てはまる傾向だと思うんだな(単に俺がその程度の生活を送っているだけなのかも知れないけど(;^ω^))。
前置きが長くなったけど、今回紹介するNetflixオリジナル映画『アウトローキング』はまさしく外国の歴史映画。
言わばスコットランド版大河ドラマだ。
もうこの時点でかなりキツい。
なにしろスコットランドの歴史なんか全然知らんもんね!
「セントアンドリュークロス」と言われても聖闘士星矢に出てくる何かの名前かと思うくらいだよ!
しかもイングランドとスコットランドと言えば
「完全に別々の二つの国」
とも
「完全に同一の国」
とも異なる特別な関係の二国。
21世紀の現在においてもスコットランド独立をめぐる諸問題が継続中なのは周知の事実だ。
一言でいえばスゲー複雑な歴史のオーナーってワケ。
敷居高ッ!
日本人には敷居高いよ『アウトローキング』!!
実質『ブレイブハート』の続編
圧政を受け容れることで国家の存続を得たスコットランドだったけど、英雄ウィリアム・ウォレスが残虐に処刑されたことで民衆の対イングランド憎悪が爆発。
ブルースは圧倒的戦力を持つイングランドに対し蜂起せざるを得なくなっちゃう訳だ。
このスコットランド独立戦争の立役者「ウィリアム・ウォレス」って人物がまたスゲー奴なんだけど、本作の中では取れた腕しか出てこなかったね。
ウォレスを主人公にした『ブレイブハート』って別の映画もあるよ。
メル・ギブソンが監督・主演を務めた1995年のアカデミー賞受賞作なんだけど、まー残虐&血みどろで実にメルギブらしい一作だったぜ。
と言う訳で本作『アウトローキング』はクリス・パインがメル・ギブソンの弔い合戦をする話、と大枠で捉えればかなり分かりやすくなる…んじゃないかな!?
なお『ブレイブハート』でのロバート・ブルースは日和見主義者のアホ扱いだった気がする。記憶が正しければ。
まあ…歴史って視点が変われば全く別のストーリーが見えてくるもんだし!
『アウトローキング』のブルースがアホって訳じゃないし(;^ω^)!!
逃げキング
いざスコットランドを率いてイングランドに歯向かおうとするブルースだけど、諸侯の連携が取れずに足並みが揃わない。
強大な敵を前に結束しなきゃいけない場面なのに、お互いの足を引っ張ってばっかりなのだ。
まあその最大の原因は反ロバート派のカミン卿を会見の場でカッとなって自らブッコロしてしまったことにあるので自業自得なんだけど。
そんなこんなで敵は迫るわ味方(になる筈の連中)にも追い回されるわで散々な目に遭うブルース。退却に次ぐ退却で絶望ムードが広がっていく。
彼の協力者も内臓引きずり出されたりして酷い目に。
王道を征く者が払わなければならない犠牲が鮮烈に描き出されていくわけだ。
↑王様なのにそんなコソコソと…( ;∀;)
映画はこの散々ムードが長尺を占めてくるので、正直かなりげんなりしてくる。
史実でこの後ブルースがイングランドを撃退するのは分かってるんだけど、胸糞シーンが延々続くので映画としてどうなん!?これ面白いか!?と心配になってきちゃったぜ。
しかしブルースが覚悟を決めて激烈な反攻に出てからは、限界まで縮めたバネが一気に解放されて凄いことに。
クライマックスでは『ブレイブハート』もかくやと言うほどの凄まじい血戦が繰り広げられるぞ!
燃え上がれスコティッシュ魂!!
完成度高いキング
本作を手掛けたのは超傑作クライムサスペンス『最後の追跡』で一世を風靡した実力派、デヴィッド・マッケンジー監督。
演出の冴えはさすがの一言だったよ。
↑『最後の追跡』もNetflixオリジナル映画。そしてクリス・パイン主演。
特に冒頭の、王侯貴族らの会見シーンから攻城兵器で城壁がぶっ壊されるまでをワンショットに収めた超絶長回しには恐れ入った。
どうやって撮ったんだこれ!?
スコットランドの厳しくも雄大な自然がフィーチャーされる映像美も素晴らしいし、中世の野蛮さをごまかさずに映像化した残酷描写も見事だ。
一瞬だけどクリス・パインのクリス・パイン自身も映るぞ!
そして名脇役として絶大なインパクトを放つのが没落貴族のダグラス卿だ。
先祖代々の所領をイングランドに没収された恨みを晴らすべく、ブルースに協力を申し出る熱血漢。
冒頭でイングランド王エドワードⅠ世に
「(反逆者の)ダグラスの名前は二度と聞きたくないな、ガッハッハ」
と侮辱されたのを強烈に根に持ち、全編に渡って敵をブチ殺しながら
「ダグラスだあ~ッ!」
「ダグラスだあああぁぁッ!!」
と自己紹介して回る粋な御仁だ。
余りに凄い存在感なので役者は一体誰かと思ったら、キック・アスことアーロン・テイラー・ジョンソンだった。
髭とロン毛がボーボー過ぎて全然気付かなかったよ!!
と言う訳で背景事情の把握に苦労するけど、スコットランドの壮絶な歴史を体感できる骨太な映画だったよ『アウトローキング』。
セットとエキストラの規模にも妥協が無く、製作予算の規模は相当なもんだと思う。
こんなすげー作品が劇場非公開+Netflix限定配信だなんて、勿体ない気がするやらNetflixの強気が頼もしいやら。