映画

『イカロス』感想 ドーピングをめぐる検証のはずが途中からプーチンに喧嘩を売る羽目に

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■■■■■■■■■□ 9点
【あらすじ】
ツール・ド・フランスの花形でありながら、ドーピングが露見し過去の栄光を剥奪された伝説の選手ランス・アームストロング。
彼はなぜ禁止薬物を使用していながら数十回に及ぶ検査をすべてクリアできたのか。そしてドーピングは実際の所いかほどの威力があるのか。
アマチュアロードレーサーのブライアンはその疑問に答えを出すべく、ロシア人科学者ロドチェンコフの協力を得て自らの身体を使ったドーピングの検証に乗り出す。
しかし事態は予想外の方向へ転がっていき、最終的にはとんでもないことに…。

めっぽう面白かったです。
ドキュメンタリー映画としては『アクト・オブ・キリング』以来の衝撃でした。数あるNetflixオリジナルドキュメンタリーの中でも出色の存在感です。
本作『イカロス』は、当初の予定では「ドーピングを実際にやってみた件」みたいな検証動画として完成する予定でした。
ドーピング専門家として製作に協力するロドチェンコフがすこぶる陽気で面白キャラなのもあり、従来通り単なる検証ドキュメンタリーになっていたとしてもきっと良い作品になっていたでしょう。
しかし尺の半分を過ぎたあたりで衝撃の事実が明らかになります。なんとロドチェンコフが本国ロシアでドーピングにまつわる本物の陰謀に関わっていたことが判明するのです。

予想外のアクシンデントで当初と全く別物に

と言うかそもそもロドチェンコフはドーピングを取り締まる機関の所長の筈なのに「ドーピングやってみました映画」である本作に協力するところがまずもって意味不明な訳ですが、とにかくこの事実の発覚を機に登場人物たちはロシア政府に命を狙われるというとんでもない方向へ転落していきます。

恐らく映画製作サイドもまったく予想だにしなかったこの事態。実際劇中には本作のプロデューサーらが困惑するシーンも出てきます。
ですがこのアクシデントが本作をもって唯一無二の陰謀暴露映画に押し上げました。製作者らにはこれからずっとロシア当局におびえる人生が待っている訳ですが、ある意味そのおかげで無茶苦茶面白くなってます。映画には魔物がひそむと言われる理由が垣間見えました。
イカロスと言えば、太陽の高みを目指して作り物の羽で飛び立つも羽が焼け落ちて墜落死したとされるギリシャ神話の中の人物。
本作におけるイカロスとは一体誰のことなのでしょう。
更なる成績のために薬物に手を出すアスリートか。それとも事実の追及に突っ走った本作の製作陣か。その答えは映画を観終わった人の解釈に委ねられます。
必見です!

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※ ネタバレ警告※ 
以下の記事にて作品の結末に触れています!未見の方は注意!

陽気な前半から一転、後半は思い切り殺伐

オリンピックを含めた公式大会でのドーピングを主導していた罪に問われ、ロドチェンコフは家族を残してアメリカに亡命します。
するとロシアで、ロドチェンコフの同僚の科学者が謎の「心臓発作」を起こして急死。その同僚はどうやらドーピングにまつわる暴露本を執筆していたようです。
間違いなく暗殺されたのだと怯えるロドチェンコフ。どう考えても次は自分の番です。
切羽詰まった彼は逡巡の果てに全てを暴露することを決意します。

そうして彼の口から語られる事実の凄いこと凄いこと。
できるだけシンプルにまとめると
・プーチンはウクライナ侵攻を前に国威を発揚する必要に迫られていた。

・プーチン、ソチオリンピックに目をつける。

・何が何でも「ロシア世界一」の記録をつくるため、国家主導でドーピングを行うことを決定。

・KGB後身組織が全面的にバックアップし、鉄壁の検査体制の隙をつく極めて巧緻な「検査検体すり替え法」が編み出される。

・ロシア人選手、まんまとドーピングしまくり。

・ロシアは晴れてメダル獲得数世界一に。

・プーチン支持率ほんとに急上昇。

・意気揚々とウクライナ侵攻
これが本当なら近代史上まれに見る大陰謀です。
いや実際は全部ロドチェンコフの出まかせかも知れないし、さすがのプーチンもここまでしないじゃろ…。と思いきや、捜査の結果出てきたのは検査検体すり替えは事実だったことを示す物的証拠の山でした。
ロシアは本当にドーピングしていたのです。

あとは大ニュースになったので周知の通りですが、リオオリンピックでのロシア人選手出場は大幅に制限されることになったのでした(出場全面停止じゃない所がブライアンはご不満のようですが)。
ここまでゆるぎない事実が並んでるのにしゃあしゃあと「全部ウソ」と言い放ち知らんぷりをするプーチンの暗い目が怖すぎます。

製作陣の安否が気遣われる

ロドチェンコフはロシア当局(による暗殺)から逃げるために、今までの人生をすべて捨てて証人保護プログラムを受けることになりました。ロシアに残してきた家族も過酷な目に遭います…さすがに殺されてはいないようですが。
ブライアンの方はこれからどうするのでしょう…。
と言う訳で「ドーピングやってみたよ映画」という当初の予定から大幅に踏み外し、最終的に「怒らせたら世界で一番怖い男の顔にウンコ投げちゃったよ映画」に変貌した本作『イカロス』。今後も伝説の作品として語り草になるのは間違いありません。



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