評価:
Netflixオリジナル映画『シャドー・オブ・ナイト』を観てみた。
結論から先に書けば最高だった。猛烈に感動した。
これほどの傑作を『映画秘宝』誌ですら完全スルーとは、Netflixは広告の打ち方を間違ってるんじゃないだろうか。
とにかく面白かったです。
インドネシア版『アジョシ』と見せかけて…
犯罪組織お抱えの殺し屋である主人公が、ある少女を守るために逆に組織から追われることになる…というお話の本作。
なので「インドネシア版『アジョシ』かな?」というつもりで見始めたらこれが全然違って。
確かに『アジョシ』に似た話ではあるのだけれど「殺し屋と少女の間に芽生える絆」的な要素はかなり控え目で、逆に男同士の愛憎入り乱れる熱い戦いがメインの要素だったよ。
そして残虐を極めた暴力描写がそのストーリーをより壮絶させしめている。
と言うか残虐という言葉すら生ぬるい。とにかく流血量がハンパじゃなく、ほとんどスプラッターホラーだ。
しかも「斬って殴って血が出る」というシンプルな描写はほとんどなく、ダメージを受けると人体はどう変化するのかを逐一詳細に表現してくる。激痛描写の連打&連打だ。
例えば序盤の精肉店での戦闘をとってみても、短い尺の間に
・回転丸ノコギリで脚を切断
・肉釣りフックに人間を生きたまま掛けるレザーフェイス式処刑
・牛骨で胸部貫通
・巨大な肉塊が落ちてきて顔面グシャ&脳みそ飛び散り
・顔を口の高さで横一文字に真っ二つ
などなど真心こもった殺人レパ―トリーを披露してくれる。
映画が始まって15分でこのテンションだ。後半につれ画面が何色に染まっていくか推して知るべしである。
もし貴方が秘宝系の映画ファンならこの時点でお分かり頂けるかも知れない。
そう、これはインドネシア版『アジョシ』ではなく、『ザ・レイド』の精神的続編である。
濃厚な『ザ・レイド』の遺伝子
(↑こっちもNetflixで配信中だよ!)
本作の主演はイコ・ウワイスとジョー・タスリムという超傑作残酷アクション『ザ・レイド』を世に放ったSWATコンビだ。
主役イトウを演じるのはジョー・タスリムの方。ちょっとライアン・レイノルズ入っている面長のおっさん。
『ザ・レイド』の時はヤヤン・ルヒアンに首をへし折られて敢え無く退場したが、今回はすばらしい身のこなしを見せてくれる。
特に、ビリヤードのボールでザコの頭を粉砕し頭皮がこべりついたままのボールを持って次の獲物に向かうという描写に惚れ惚れした。劇中、顔が常に血まみれ。
みんな大好きイコ・ウワイスの役どころは、イトウと兄弟同然に育った幼馴染ながら組織の命令で彼を追うことになる殺し屋アリアン。
イトウに対する愛とコンプレックスが火を噴くクライマックスは必見だ。
出番は少ないながらも絶大なインパクトを放つ義足のボビーは、ザック・リーが演じている。
彼もまた『ザ・レイド』組だ。『2』の方だけど。
監督・脚本のティモ・ジャヤントは『ヘッドショット』でイコ・ウワイスと共に既に素晴らしい仕事を成し遂げているベテラン。
他の過去作として、個人的に『ABC・オブ・デス』中の短編「L:Libido(性欲)」が印象深い。オナニー早撃ち対決(負ければ即死)をさせられるという、思い付いても本当に撮ったりしないだろフツー!?的なノリが素敵だった(まあ同作は他の短編もそんな感じだけど)。
これが観たい!をすべて叶えてくる
そんなこんなで実力派揃いの本作は、絵面からして多分に『ザ・レイド』を意識した作り。
狭いドアを通って室内になだれ込んでくる大勢のザコを真上からの俯瞰で捉えるショットは特にレイド度が高い。
ラストのタイマンの前に一瞬静謐な瞬間が訪れるのも『ザ・レイド GOKUDO』の調理場のシーンを彷彿とさせる。
あらゆるシーンでツボを押さえており、良い意味で心が落ち着く暇がない。
熱い熱いぜ熱くて死ぬぜ。すべての場面で超アガる。
そしてこの手のアクション映画に欠かせない珍しい武器を使う中ボスも抜かりなく登場。
今回はワイヤーカッターとククリナイフをそれぞれ使う殺し屋レズビアンカップルだ!
死に方も一際壮絶で、女性キャラだからって綺麗な姿のまま死ねる…訳ねーだろ!的なブレない製作方針にひたすら頭が下がる。ショートボブの方の服の色に注目!
「言うてイトウも殺し屋やし…。女の子ひとり助けたところで無実の人々を虐殺してきた罪が許される訳じゃないし…。」
というやるせなさにもしっかり回答を見せてくれる脚本の完成度も素晴らしい。
とにかくあらゆる面で心得た作りだ。
観客の「これが観たい!」を誠心誠意叶えてくる、おもてなし精神あふれる一作と言える。
至福の2時間だった。
暴力描写に抵抗が無ければ是非ともおすすめしたい!
くどくて恐縮だが、これほどの傑作が知られざる作品扱いなのはほんとNetflix何とかした方が良い気がする、勿体ないにも程がある!!