『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』がついに公開されましたーやったー。
いやーもうマーベル映画の新作は毎度毎度楽しみにさせて貰ってますがね。
今回の『ファー・フロム・ホーム(以下ファーフロ)』は特別に公開が待ち遠しかったんですよ。『エンドゲーム』のときも同じこと言ってた気がしますが、もう今回は本気の本気で待ち遠しかった。
なぜかって?
ミステリオが敵なのか味方なのか気になって夜も寝られないんじゃよ!
早く見終わってスッキリ眠りたいんじゃよ!!
だってミステリオと言えばスパイダーマンの宿敵の一人で、「嘘と幻惑で相手を混乱させる」というケチくさい能力のヴィランじゃないですか。
工夫を凝らした演出を逆手に取られて(もしくは力技で)毎回スパイダーマンに倒される金魚鉢男じゃないですか。
それがどっこい『ファーフロ』の予告編ではハイドロマンやサンドマンと激闘を繰り広げており、まるで正義のヒーロー。
あげくトニーを失って傷心のピーターに父性全開で接してくるポスト・アイアンマンの立ち位置。
え、どゆこと? 敵なの!? 味方なの!?
ミステリオのキャラ特性に忠実に予想するなら、ハイドロマンもサンドマンも全部ミステリオの自作自演で実は何らかの目的をもってヒーローのフリをしている…と言うことなるでしょう。
しかし予告編で見る限りではハイドロマンによって実際にヴェネチアの街並みが破壊されています。つまりパワーは本物。
「本物のパワー」を持ってたらそれはもうミステリオじゃないよ!
ってことは、これは「ミステリオは嘘つき」というファンの先入観を逆手に取った二重のトリックで、今回のミステリオは本当にヒーローである…という可能性が浮上してきます。
どっちなんだよ!
あれこれ予想しても当然観るまで真相は分からず、死ぬほど悶々としていましたこの一か月。ミステリオめ~~~!!
そんなわけで満を持して早速観てきましたよ『ファーフロ』。
結論から先に申し上げれば大満足でした!
そう来たか~~~!!!
以下の記事 ネタバレ注意!!
ミステリオが本当に敵なのか従来通り敵なのか、とにかくそれだけを気にして観始めました『ファーフロ』。
そしてその疑問は開始20分時点で確信をもった回答へと至りました。
今回のミステリオは本物のヒーローだ!
ピーターの味方だ!!
そう考えた根拠はただ一点、ミステリオことベックが「この世界はアース616だ」と明言したことです。
アース616と言えば多元宇宙世界=マルチバースの設定で、ピーター・パーカーらが存在する"正史"の世界のことです。
他の世界…たとえばアース65ではピーターが故人である代わりにグウェン・ステーシーがスパイダーグウェンとして活躍したりしています。同一人物がまったく違う人生を送っている、いわゆる並行世界という奴です。
この世界が「616」であることを知っていると言うことは、ミステリオは少なくとも並行世界の存在を知る本物の超越者ということになります。
今回の『ファーフロ』は、『エンドゲーム』で華々しく物語を締めくくったMCUが次に進むための第一歩という面も期待されていました。
それがコレだったわけです。マルチバース。
今後の続編では他の世界から新たなヒーローやヴィランが登場するという、MCUの長期的な機軸が垣間見えました。
ならばミステリオの言葉も真実と考えるのが道理…。
つまり彼は並行世界の地球を滅ぼした宿敵「エレメンタルズ」を追ってこの世界に来た本物のヒーローということになります。
この場合ミステリオのアイデンティティーである嘘八百キャラがどう生きるのかは分かりませんでしたが、逆に「アース616」の方のベックが何か悪さをするのではないかと予想しました。
うひょ~!がぜん楽しくなってきた!!
ところが…
映画が尺の半分を過ぎた頃、ミステリオは唐突にその正体を明かします。
実は彼はトニーインダストリーの元社員で、画期的な映像技術(『シビルウォー』のときのアレ)を開発したにも関わらずその功績が認められなかったことで社会を逆恨みするチンケなヴィランでした。
彼の狙いはピーターがトニーから継承した強大な軍事技術だったのです。
サンドマンもモルテンマンも案の定自作自演。
「パワーが本物」という点は旧トニーインダストリーの技術を悪用したという設定で強引にクリアです。
バーのカウンターの上で種明かし演説をするジェイク・ギレンホールのイキイキっぷりと来たらもう水を得たハイドロマンの如しです。
ってマルチバースは!?
アース616の話は!!?
どうやらMCUでは「アース616」という単語は、ミステリオの出まかせ以上の価値はないハッタリワードだったようです。
マジかよ!!
完全に騙されたよ!!
これは「アース616」というワードにオタクが過剰に反応することを見越した、ジョン・ワッツ監督の(あるいはケヴィン・ファイギの)底意地の悪いミスリードだった訳です。
ぎゃふん。ですよ。ぎゃふん。
正直「アース616」という単語が登場したとき、『映画秘宝』で冗談めかして提示されていた「トビー・マグワイアが並行世界の先輩スパイダーマンとして登場する」というシナリオが俄かに現実味をもって感じられました。
それがこのザマですよ。
『ファーフロ』には「人は簡単に騙されてしまう」「大衆は信じたいことだけを信じてしまう」という裏のテーマが通底しています。
スマホやSNSの普及で万人が万人に情報を発信できるようになって十数年が経った今日、我々は情報リテラシーの意味と意義を考えなおす必要があるのではないか…という。
こういう説教臭い要素が面白いかどうかはさておき、このコンセプトが如実に現れているのがエンドロール後のアレであることは間違い無いでしょう。本作に登場していたニック・フューリーとマリア・ヒルは、実はスクラル人の皆様が変身した姿でしたというオチです。
本編のストーリーにはまったく寄与しないうえ、特に伏線も無いので完全に「言ってみただけ」の話です。
しかしだからこそ「ほらまた騙されたアナタ!」という主張がシンプルで、『ファーフロ』という「何かを信じて騙される話」の最後をしめくくるのにふさわしいエンドである訳です。
とりわけベックの正体についてオタク全開の予想を花咲かせていた自分には刺さりまくりです。痛い。
ただしトビー・マグワイア登場説は実はごく一部だけ実現していました。
ラストに登場したデイリービューグル誌の鬼編集長J・ジョナ・ジェイムソンが、J・K・シモンズで登場した点です。
まごうことなきサム・ライミ版『スパイダーマン』の片鱗! トビー・マグワイアの残滓!
20年ぶりだよ!
髪の毛だいぶ減ったなオイ!(『セッション』よりマシだけど)
本当にびっくりしました。トビーは出ないのにお前は出るのかよ、みたいな。
まあこれはマルチバースを説明する演出ではなく単なるカメオ出演だと思いますが、それでもサム・ライミ版3部作を至高のスパイダーマンと信じて疑わない私からしてみれば嬉しいサプライズでしたね。
↑自分の中では今でもこれがヒーロー映画最高傑作!