アメコミ映画全盛時代の現代にあって、その原作にあたるアメリカンコミックス―いわゆるアメコミに興味を持つ人は多いと思います。
かく言う私がその一人。
しかしアメコミの歴史は非常に長く、かつ複雑怪奇です。
リブートにリローンチにパラレルワールド…。二大大手であるマーベルとDCの両社とも、後付け設定に次ぐ後付け設定で超大変なことになっています。
なのでアメコミ読んだことがない人が取り敢えず感覚で何かの最新刊を買っても、チンプンカンプンで悲しい思いをするのが関の山です。
「じゃあ一体どれから読めばいいんじゃい!!」
そんなもっともな疑問が、このジャンルへの初心者の参入を妨げているのは間違いないと思います。
そんなワケで今回は、アメコミ初心者にこそおすすめしたいアメコミ作品をランキング形式で紹介。
読みやすさと面白さを主眼に「これなら間違いない!」と断言できる珠玉の傑作を取り上げてみました。
1位 バットマン/ハッシュ
跳梁するヴィラン達と、その陰で暗躍する謎の怪人"ハッシュ"。
バットマンとその仲間たちは、強大な敵に立ち向かう!
2002年に刊行された人気シリーズです。
「初心者向けアメコミ」というコンセプトなら本作一択。
伝説のアメコミ絵師ジム・リーによるイラストがとにかくカッコ良く、筋肉ムキムキのヒーロー達やバッキバキの明暗のコントラストなど「これぞアメコミ」と呼ぶべき直球の画風がとことん堪能できます。
全ページがポスターにできそうなクオリティです。
そして登場キャラの顔ぶれも超豪華。
ジョーカーやハーレイ・クインはもちろん、ラーズ・アル・グールやスケアクロウなど主だったヴィランが軒並み大暴れです。
ヴィランのみならずナイトウィングやハントレスたち味方サイドもそろい踏み。
さらにはスーパーマンまで出てきてもうお祭り騒ぎです。
肝心のストーリーもなかなか面白い!
終盤の二段オチを理解するには若干の予備知識が要りますが、「NEW52」がらみの複雑さが無いのは嬉しいところです。
『ハッシュ』より名作のアメコミはあっても、『ハッシュ』より入門に適したアメコミはありません。
個人的にも超お気に入りの一作です。
2位 ウォッチメン
どんなジャンルにも、そのジャンルを代表する傑作があります。
ジャズならマイルス・デイビスの『A kind of blue』。
歴史小説なら司馬遼太郎の『坂の上の雲』。
牛丼なら吉野家の並盛。
ではアメコミを代表する傑作は何でしょう。
誤解を恐れず断言すれば、それは本作『ウォッチメン』です。
もし本当にコスチュームヒーローが居たらどんな世界になっていただろうか?
その回答を文化・政治・社会の面から徹底的に考証した『ウォッチメン』は、歴史改変SFの傑作として非常に高く評価されています。
しかもただの理屈っぽい物語にとどまらず、ヒーローたちの人間味あふれるドラマも秀逸。
特に変幻自在のマスクを被った一匹狼「ロールシャッハ」の存在感は絶大です。挨拶代わりに相手の指をポキー。
頂点に君臨する一冊であり、最初に手に取るアメコミとして最適と言えるでしょう。
3位 Msマーベル
アメコミが日本の漫画と大きく異なる点として、女性キャラに萌えが足りないことを挙げる方は多いでしょう。
正直私もそう思ってました。
ワンダーウーマンにしろキャットウーマンにしろ、アメコミ界のアネキたちは揃いも揃って筋肉バキバキの肩幅ムキムキ。
ヒロインと言えば「からかい上手の高木さん」だろ!という認識では到底受け容れられない世界観です。
が、実はアメコミにも可愛い女性キャラは沢山います。
本作『Msマーベル』の主人公、カマラ・カーンちゃんはその一人。
主人公格の女性ヒーローという時点で比較的珍しいカマラですが、彼女はさらに中東系でイスラム教徒でアメコミヒーローオタクであるという攻めに攻めたプロフィールの持ち主。
その唯一無二の個性的なスタンスは大きな反響を呼んでおり、ある意味いま最もアツいヒーローと言えるでしょう。ケビン・ファイギも映画化にノリノリだし。
可愛い女の子が出てくるアメコミなら『グウェンプール』も外せません。
独特の悪ノリがクセになる異色作です。
↑こちらの一冊は、表紙がかわいくても中身はまったく違う絵柄なので注意。
こんな表紙サギするくらいだったら全ページ山下しゅんやで一作描いてよ!と思う今日この頃。
4位 バットマン/キリングジョーク
バットマン関係からもう一冊。
上で紹介した『ウォッチメン』と同じ原作者アラン・ムーアが手掛けた、衝撃のジョーカー誕生譚です。
バットマンの協力者オラクルの誕生にも関わる、重要なエピソードでもあります。
『ウォッチメン』は確かに素晴らしいのですが、いかんせんボリューム豊か過ぎて読破に結構時間がかかります。
その点本作『キリングジョーク』は1日あれば余裕で読み切れる絶妙な長さで、とっても読者フレンドリー。
バットマンの宿敵であるジョーカーは、その正体不明さこそが最大の魅力です。
その禁断の謎に敢えて切り込む挑戦的なストーリーは絶大なインパクトを持ち、解釈の分かれるラストひとコマは特に印象的。
万人が等しく抱える苦痛=人生の残酷さが
「バァカになっちまいな!!」
のセリフに凝集された、バットマンらしいダークな一作です。
5位 スパイダーマン/スパイダーバース
多くの日本人にとっておそらく最も馴染み深いアメコミヒーロー、スパイダーマンをフィーチャーした一作。
異なる次元を移動し虐殺を繰り返す上位生命体「インヘリターズ」を倒すため、並行世界のスパイダーマン達が協力して壮絶な戦いに挑みます。
なお2018年にアカデミー賞長編アニメーション部門を受賞した映画『スパイダーマン:スパイダーバース』の原作に当たりますが、設定を流用しているだけでストーリーはまったく別物です。
とにかく多種多様なスパイダーマンが出てくるのが最大の特徴。
映画にも登場したスパイダーグウェンやスパイダーノワールはもちろんのこと、ニコニコ動画勢にはおなじみの「地獄からの使者、スパイダーマッ!!」まで参戦するカーニバル状態です。子供の命とすり替えておいたのさ!!
大多数があまり知られていない亜種スパイダーマン達ですが、本作が初登場のキャラでさえあたかも以前から活躍していたかのような雰囲気でしれっと出てくるので「まーいっか細かいことは!」の精神が養えます。
なお素敵すぎる表紙アートは『ワンパンマン』の村田雄介氏デザイン。
シリーズ三冊そろえると超カッコ良いワイドポスターが完成するという心憎い仕組みになってます。