評価:
NetflixおよびAmazon プライムビデオでひっそりと配信開始されていたメル・ギブソン主演の『ブラッドファーザー』を見た。
犯罪組織に追われる娘を助けるため、初老の父親が昔とった杵柄的な感じで大暴れする...というお話らしいのでメル・ギブソン版『96時間』、もしくは秘宝的な表現で言うところのナメてた相手が実は殺人マシンでした映画を期待していたのだが...全然そんな感じの映画ではなかったでやんす。
娘のためにオヤジが暴れる話なのは間違いないけど、その本質は若い頃に ヤンチャしてきた男が人生の終盤を迎え贖罪のチャンスを得る... というテーマだった。
痛快さを追求した『96時間』的なアクション映画よりも、『グラントリノ』や『ローガン』とかの方がイメージが近いだろう。
これには良い意味で裏切られた。
マクドナルドでコーヒー飲んだら、いつもの薄ーいヤツじゃなくてめっちゃいい豆で煎れた超深いヤツだった的なサプライズだ。いやマクドナルドも好きなんだけどさ。
本作のメル・ギブソンは酒と犯罪に溺れ人生の大事な時期を刑務所で過ごし、家族から見放されれてしまった負け犬だ。
今はトレーラーで小さなタトゥー屋を営んで砂を噛むような日々を送っている。
そんな彼の元に、数年前に家出していった切り音信不通だった娘がビッグなトラブルを抱えて戻ってくる。なんと犯罪組織に命を狙われているというのだ。
若いときのヤンチャのせいで娘にまでやさぐれ人生を強いてしまったが、そんな娘を今救えるのはヤンチャしてた頃に培ってきた数々のサバイバル術だけ…。
父親は娘のために捨て身の戦いに乗り出すが、それは後悔しきりの人生を送ってきた負け組が過去を精算するために選んだアグレッシブな終活なのだ。
なお昔ヤンチャしてきたこの父親は、波乱万丈の役者人生を送ってきたメル・ギブソン自身とそのまま相似形だ。
劇中でもそのアピールは力強く、特に中盤のバイクシーンはバイク+砂漠+ソードオフショットガンとあからさまに『マッドマックス』を重ねてきている。
過去を精算しようとする劇中の主人公とその役者自身人生をリンクさせる試みは、名優クリント・イーストウッドが『許されざる者』で実践している。
主人公が禁酒中と言う点にもブラッドファーザーとの類似が見られる一作だ。
メル・ギブソンもクリント・イーストウッドばりに円熟してきた…と言うことかも知れない。
そんなこんなで、軽い気持ちで見たらすげー感動したよ『ブラッドファーザー』と言うお話でした。
なお悪役は『ローグ・ワン』のキャシアンことディエゴ・ルーナだけど、相変わらず見事な子悪党ヅラだったぜ(※褒めています)。
あと全然話違うけど、リメイク版『ワイルド・バンチ』の監督がメル・ギブソンに決まって非難轟々らしいね。
でもなんでダメなん?
むしろドンピシャリじゃないか?
ぜひとも『アポカリプト』のノリでの"Let's go" "Why not?"を見せて頂きたいものです。
と言うかアーネスト・ボーグナイン以外の誰がダッチを演るのかの方が大問題じゃなかろうか実際。