ここのところ、人が死なない映画でほっこりしてばかりです。
だれかを愛することの大事さや、人生の尊さ。
人間という存在の素晴らしさについて多くを感じてばかりです。
でも…
映画ってそうじゃないだろ!
もっとこう…血とかおっぱいとか!切断シーンとか!!
そういうのが映画だろ!!
あーグロい映画観たいなー!!
人がバンバン死ぬ殺伐とした映画観たいなーー!!
そんな気分で見てみましたNetflixオリジナル映画『ブレスラウの凶禍』。
中世の残虐な処刑法になぞらえた連続殺人事件を女刑事らが追う…というサスペンスです。
往年の傑作サイコスリラー『セブン』を彷彿とさせる一作。
なおポーランド映画です。なかなか珍しいのでは。
で、率直に感想を述べればけっこー面白かったです。
面白かったんだけどね。
もうね。グロ過ぎ。
人体切断シーンどころか切断面をいちいち接写してくれるサービス(暗黒面)が旺盛で、これにはグロいの大好きな私も少々涙目でしたよと。
こんなことなら大人しく『フォレストガンプ 一期一会』か何かでほっこりしていれば良かった…。
ブレスラウの凶禍
2018年 ポーランド
監督:パトリック・ヴェガ
出演:マウゴジャータ・コズホフスカ、ダリア・ビダフスカ
縫いつけられた牛皮に入れられて窒息死した変死体が発見される。
死体には焼きごてで大きく「堕落者」と印されていた。
やがて罪名を焼き印された死体が次々に発見される。
事件を追う女刑事は、中央警察から派遣されてきた捜査官とコンビを組み犯人を追い詰めようとするが…。
…というお話の本作。
凄惨な死体がバンバン大写しになる作風は『セブン』やドラマ版『ハンニバル』を彷彿とさせ、グロいの好きな人は減量明けのボクサーのように画面に飛びついてしまうでしょう。
しかも死体だけじゃなく、犠牲者が絶命する瞬間も回想シーンで再生してくれるという見上げたおもてなし精神。
特に「両手両足を馬に引かせて人体真っ二つ」という董卓プレイのシーンは壮絶。真っ二つになる瞬間をしっかり画面に収める雰囲気はハリウッド映画とは一味違いますね。
オエ-
肝心のサスペンス部分も中々秀逸。
中盤のどんでん返しで「これがオチかな」と思わせつつ、二重三重に用意された伏線が発動しさらなる急展開を仕掛ける脚本には脱帽です。ただのグロ映画とは一線を画す芸当。
主人公の特異なキャラクターも印象的。
ボソボソとつぶやくように喋り終始ダルそうに振る舞いますが、判断は的確でフットワークも軽い。敏腕刑事です。
でも過去に何らかの事件で恋人を亡くしたらしく、一人になると途端にメソメソ泣き始めてハト餌やりおばさんと化す情緒不安定っぷり。
この危ういキャラクターをして凄惨な殺人事件に挑ませるというセッティングがまずもって殺伐としており、ダークで閉塞感あふれる映画全体の雰囲気を加速させます。
主人公の内面の不安定さを暗喩した左右非対称の髪型もインパクト絶大。
↑その髪どこで切ったの!?
そして相棒役のマグダも、化粧っ気ゼロで凄い迫力のおばちゃん。
初対面のカメラマンの喉笛をぶん殴って録画データを強奪するシーンは印象的です。
しかもこの人達、凄惨な死体の検死に立ち会ってモロ出しの臓物を見ながら
「そう言えば腹減ったな…メシ行かね?」
「おk」
とかおっしゃる豪の者。
本作の魅力が彼女らの特異なキャラクター性に支えられているのは間違いありません。
ただ…細かいところで作りが甘いのは惜しいですね。
たとえば(プチネタバレになってしまいますが)、犯人が単独犯ってのがまず無理があります。
2番目の事件なんか、
一人で馬(しかも競走馬)を二頭も盗み
一人で被害者を襲い殺さず気絶させ
一人で誰にも目撃されずに馬と被害者を町に連れていき
一人で「電話をかけたらピタゴラスイッチ的に被害者が死ぬ仕掛け」を準備した
…ってことになるので、いささか無理がある。どんだけ職人気質なんだよ。
それに
「ヤツはなぜ警察の内部事情を知っていたんだ!?」
というまっとうな疑問に対して
「ネットで調べたに違いないわ」
「なるほどそうか!」
で納得してしまう流れにもズッコケます。ポーランドの警察ガバガバじゃね!?
「この男を見たことがある?」
という聞き込みにわざわざ激グロの死体写真を使う神経もよく分かりません。
他にもツッコミどころが豊富で、冷静に考えると犯人の計画がラッキーの積み重ねで実現したに過ぎないことが分かって興ざめです。
「その辺は映画だと思って見逃してちょ」という作り手の甘えが如実に出てしまっており、やや残念。
とは言え「見立て殺人」系スリラーは久々だったので楽しんで観ることができました(多少の吐き気と仲良くしつつ)。