■■■■■■■■■□ 9点
【あらすじ】
癌で余命幾ばくも無い高校化学教師ウォルターは、家族に金を遺すため元教え子のチンピラと一緒に麻薬ビジネスに手を染める…。
癌で余命幾ばくも無い高校化学教師ウォルターは、家族に金を遺すため元教え子のチンピラと一緒に麻薬ビジネスに手を染める…。
ドラマのアカデミー賞ことエミー賞を総なめ!アンソニー・ホプキンスを始め著名人が絶賛しまくり!
圧倒的高評価のなか一昨年に完結を迎えた犯罪ドラマです。
すでに伝説の存在であり褒め尽くされている作品ですが・・・
せっかく自分のブログなのだし好きなものは好きだと叫びたい!ここがすごいよブレイキングバッド!という点を列挙してみます。
まだ観ていない人にも魅力が伝わればと思いますので、ネタバレは無しでいきたいと思います!
主人公ウォルター・ホワイトを演じるブライアン・クランストンは俳優歴の長いベテランですが、本作以前は・・・まあはっきり言ってパッとしない方でした。しかし!本作の大ヒットを経て世に広く認知された彼は、今やハリウッドを代表する演技派の一人です。
一体本作において彼の演技の何がそこまで高評価だったのでしょう?
ウォルターはしがない高校教師でありながら、実は天才級の化学者であるという経歴の持ち主。訳あって化学畑での成功コースから外れてしまった彼は、その才能を活かしきれなかった自分の人生に忸怩たる思いがあります。
そこで麻薬ビジネス。当初の目的はあくまで金稼ぎでしたが、自分の能力を全力全開でつぎ込めるこの犯罪に彼は徐々にのめりこんでいくという訳です。
本作はコーエン兄弟の『ファーゴ』のように登場人物が意に反して悪の道へ堕ちていく話ではなく、逆に執念につき動かされ悪の極みへ突っ走る話なのです。
シーズン1ではこんなパンイチおじさんが↓
シーズン4ではこの極悪ヅラです↓
激烈に人相悪くなり
もう別人。だが実際ドラマを観てみると同一人物としての連続性を保っている。ここが凄いのです。私自身、最初の方のシーズンは
「おいおい、じれったいな~」
「もっと思い切ってやっちゃえよ!」
と常識を捨てきれないウォルターを心の中で煽りながら観ていました。しかし終盤になるにつれ
「ちょ、おま、どこまでやる気なんだよ!?」
と戦慄するように。
一人の登場人物をたっぷり尺を割いて描いていけるのはまさに連続ドラマの強み。その強みを人類史上最も活用したのがブライアン・クランストンと言えるでしょう!
ここが凄い② ウォルターとジェシーの関係
第二の主人公、ジェシー(アーロン・ポール)もすこぶる魅力的です。
本作はある種の相棒(バディ)ものです。バディものと言えば、正反対の気質の二人が最初は仲が悪かったり対立したりするけれど何だかんだで結局は信頼関係を結び共に困難に立ち向かっていく、という流れが王道です。
まっとうに生きてきた真面目なウォルターと根っから自堕落なジャンキーであるジェシーは正反対の性格なので、二人は最初はすっごく仲が悪い。 何か不都合なことが起きるとお互いが相手のせいにして不毛なケンカを繰り広げます。しかし徐々に事が大きくなっていくにつれお互い相手を守らないと自分の身も危うい状況に。危機を乗り越えるための必要に迫られながら、二人の間には確固たる絆が芽生えていくのです。
・・・と、普通のドラマだったらキャラの掘り下げはここまででしょう。きれいなバディものできっちりまとまる。
しかしブレイキングバッドはここからが凄い!
ウォルターとジェシーは「仲間」であり「友」であり「ビジネスパートナー」でありますが、時にそれらを越え「親子」に近くすらなります。しかし同時に、全シーズン通して必ず何らかの事情で対立しています。この緊張感がたまらない!
彼らの間に仲良しこよしの甘ったるい雰囲気が流れることはほとんどありません。いつも舞台であるところのニューメキシコの砂漠のように乾いた空気が流れているのです。
彼らの間に仲良しこよしの甘ったるい雰囲気が流れることはほとんどありません。いつも舞台であるところのニューメキシコの砂漠のように乾いた空気が流れているのです。
でありながら、やっぱり唯一無二の「相棒」でもある…このバランスが本当に絶妙です
。ここまでひりついた人間関係、ほかのドラマでは見たことがありません。
ここが凄い③ 衝撃の展開
なんと言ってもドラマのキモは脚本!手に汗握るストーリーがあってこそキャラも映えるというものです。
その点本作は、やはりと言うべきかもの凄くレベルが高いです。
まず構成が面白い。
たとえばシーズン1の冒頭は、パンツ一丁のたるんだ体のおっさんが砂漠の真ん中で拳銃振り回しながらひどく慌てているシーンから始まります。はっきり言って意味不明です。先に結果を描写して後からストーリーがそこに追いつく・・・いわゆる円環構造は別段斬新な手法ではなくむしろ王道的でさえあります。しかしこれは状況がいくらなんでも異様。一体何がどうすればこんな事態になるんだ!?と視聴者の興味がくぎづけになるという寸法です。この手法は形を変えつつ話が進んでも視聴者のハートをがっちりキャッチし続けます。憎い!
シーズンが進むごとに事態は深刻さを増しバイオレンスな描写も増えていきます。が、不思議と暗く沈んだ雰囲気にならないのも巧妙。むしろ結構笑えます。
お約束の一例に「ウォルターの苦しい言い訳」があります。家族に内緒で麻薬を作っているウォルターは悪だくみの時間を捻出するために家族に嘘をつきまくります。最初は「残業が~」とか「渋滞が~」とかありふれた話でごまかしていくのですが、話が進むごとにだんだん苦しくなってきて最終的にはスーパーマーケットでパンツ一丁になり「今俺は正気じゃないんだー!」と無茶な主張を繰り広げる羽目に。それでもごまかしきれなくなってきて・・・と結構ブラックコメディの側面も強いのでした。
ちなみにこれに限らずウォルターは劇中なぜか頻繁に脱ぎます。まったく冴えない白ブリーフにたるんだ腹・・・シリアスな本編の合間の汚いサービスカットです。
そしてブレイキングバッド最大の強みは予測不能の衝撃展開です。
こればっかりは観て確かめて頂くしかありません。特にファイナルシーズン(第5シーズン後半)は圧巻の一言。なにしろ一話ごとに超展開に次ぐ超展開でどうやって話を結ぶ気なのかまったく読めない。とりわけ第14話『オジマンディアス』はIMDbで10点満点中10点満点の奇跡の神回。この驚愕をぜひ多くの人に味わってもらいたい!
とは言え人を選ぶ
とまあ褒めちぎってみましたが、ぶっちゃけ万人受けする作品ではないと思います。
非道徳だし暴力的だし、子どもが起きている時間にはちょっとお茶の間で観られません。実際、最初から一緒に観ていた妻はシーズン3の途中で脱落してしまいました・・・正直おもしろくないとのこと。
ですが!私のようにツボにはまれば目からブルーメスが落ちるほど面白いです。
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