海外ドラマ

黒い街の黒いヒーロー『ルーク・ケイジ』


おすすめ度
■□□□□ 6点
【あらすじ】
黒い街の黒いヒーローが活躍するよ!
『デアデビル』『ジェシカ・ジョーンズ』に続くNetflixマーベルシネマティックユニバースの第3弾『ルーク・ケイジ』をご紹介します。
舞台は前2作と同じニューヨークですが、ニューヨーク内の地区としてはヘルズキッチンからハーレムに場所を移しています。

ハーレムと言えば黒人ジャズピアニストのデューク・エリントンや黒人トランぺッターのルイ・アームストロングがジャズという音楽を大きく躍進させた地。言い換えれば黒人特有の文化の発祥の地。要するに黒人の町なのです。

という訳で本作は登場人物がことごとく黒人。主人公は黒人。ヒロインも黒人。悪役も脇役もだいたい黒人です。そしてBGMはジャズやファンクなどいわゆるブラックミュージックに徹底的に拘っています。マイケルジャクソンやプリンス,ノトーリアスBIGなどの黒人音楽ネタも豊富で終盤にはメソッド・マンが本人役で登場します。

この過剰とも思える黒っぷりはいわゆる「ブラックスプロイテーションムービー」をかっこよく現代に蘇らせよう!という試みです。
ブラックスプロイテーションムービーとは、言ってしまえば「黒人の黒人による黒人のための映画」のこと。70年代に隆盛を誇り後の文化に影響を与えた(その後粗製乱造を繰り返し自然に下火になっていった)とされていますが、が、が・・・すいません、不勉強で『黒いジャガー』くらいしか知りません。

このへんの映画史は「黒人の誇り」をテーマにしている本作に深い関わりがあるので重要な要素だとは思うのですが…ここは知ったかぶりをするより一本のドラマとして『ルークケイジ』がどうだったのかを語っていきたいと思います。開き直って。

スウィートクリスマス!

主役のルーク・ケイジ(マイク・コルター)の能力は「怪力」+「無敵の皮膚」。
建物の壁もパンチ一発で余裕で貫通でき、拳銃を含めた通常の武器では傷ひとつつきません。そのため戦い方はデアデビルと比べて工夫が無く、撃たれようが殴られようが意に介さず猛然と暴れまわるスタイルです。さらっと車のドアとかを引っぺがすので独特の可笑しさと爽快感があります。絵的には単調になりがちですが、デアデビルとの差別化にはなっているのでないかと。

撃たれる→服が穴だらけになる→本人は無事→すごい!というシーンがほぼ毎話あります。本人も「もう新しい服買うの飽きたわ!」とブチ切れます。

口癖は意味不明の「スウィートクリスマス」。一応彼の家族に関する伏線ではありますが、なんなのこれ。

今までの人生が割と散々で、あげく直近では『ジェシカ・ジョーンズ』でさらに酷い目に遭っており本作冒頭ではほとんど世捨て人風になっているルーク。悪党に荒らされていくハーレムの中で彼が自分の運命と責任を受け容れていくのが話の主軸になってきます。

ヒロイン兼第二の主役は女刑事のミスティ(シモーヌ・ミスシック)。吹き替えで観ていると「ルーク・ケイジ」と「ミスティ刑事」が変な韻を踏んで時々混乱します。

前二作からクレア(ロザリオ・ドーソン)も続投しています。弾丸摘除したり動脈結紮したりと能力値がインフレしており、もはや看護師という設定を飛び越えて便利な回復キャラと化しています。雑魚キャラ相手だったら負けない程度の戦闘力もいつの間にか身に着けている。このままだと『ディフェンダーズ』の頃にはジェシカ・ジョーンズあたりより強くなっているかも。

悪役のみなさま

4人のラスボス

『デアデビル(シーズン1)』は悪のカリスマであるウィルソン・フィスクと戦う話でした。『ジェシカ・ジョーンズ』でも純粋に悪役と言えるのはキルグレイブだけでした。ラスボスは一人だった訳です。

一方本作ではざっと4人のラスボスが出てきます。

笑顔担当:コーネル「コットンマウス」
策謀担当:マライア
狡猾担当:アルバレス「シェイズ」
狂犬担当:ウィリス「ダイアモンドバック」

例によって4分の3が黒人
4人もいたら一人あたりの印象が薄くなるかと思えばそうでもなく、そこは連続ドラマの強みを活かし尺を割いてそれぞれの背景を掘り下げています。

コットンマウスかわいいよ

特に印象強いのはコットンマウス(マハーシャラ・アリ)でしょう。ジャズに非凡な才能を持ち、将来は音楽で身を立てたいと考えていた彼。しかし思い通りにはいかず、いつの間にかすっかり薄汚れた人間になってしまった。

彼は事あるごとにそのあだ名「コットンマウス」の由来でもある白い歯を見せて大笑いします。それは時々自分の人生に対する、一種やけくそめいた自嘲のようにも見えるのでした。

・・・と結びたいところですが、 彼の魅力は何と言ってもその小物感です。

フィスクは権力が強大すぎて手の付けようが無い。キルグレイブは能力が強力過ぎて対抗策が無い。前2作の悪役はどちらもラスボス感満載でした。ところが本作のコットンマウスときたら、第1話から悪企みが失敗して窮地に立たされています。

その後もことあるごとにルーク・ケイジに邪魔をされ「んん~ゆるさ~ん!!」としょっちゅう怒ってグラスを壁に投げつけたりしています。それでも悔しくてたまらないときは今度は例の笑顔で「ウエェッハッハッハ!気に入ったぞぉ!」と強がるのですが本当にカラ元気にしか見えず、後半はむしろ可哀想になってきます。毎回してやられるバイキンマン系ヴィランとして貴重な存在と言えます。

しかし爽快感は無い

面白くなりそうな要素もりもりの本作ですが。
うーん…やっぱり展開が遅く序盤からさっそく中だるみがちなのは残念です。加えて最終回の終わり方にガッカリで、観終わった後の気持ちがすっごくモヤモヤします
楽しみにしていた作品ですがおすすめ度は厳しめにつけてしまいました。

ただ『ディフェンダーズ』に連なるNetflixマーベル・シネマティックユニバースの一角を担う作品なので、観て損は無いと思います!
警告 ※ ネタバレ ※ 警告
以下の記事にて作品の結末に触れています!未見の方は注意!

脱力の最終回

本作の何がよろしくないかと言えば、終わり方が全く冴えないことです。
前2作『デアデビル』『ジェシカ・ジョーンズ』は、いずれも一応話としてはひと段落したところでシーズン1が終わっています。「一つの事件は終わった。だが戦いは続く!」みたいな感じで。だからこそ全話見終わった後の余韻と達成感があり、続編への期待も盛り上がったというものです。
ところがぎっちょん『ルーク・ケイジ』ときたら何一つ解決しないまま最終話が終わります。

最終決戦「まで」は盛り上がる

ラストバトルはむしろ良かったです。燃えました。前述の通り、ほぼ無敵レベルで頑丈なルークは戦い方を工夫しなくてもいつも勝ちます。しかしラストバトルだけは別。苦戦のすえ因縁の記憶が呼び覚まされ、それが勝つためのロジックに繋がっていきます。伏線回収を兼ねたグッドバウトでした。

しかしその後のエピローグがすこぶる中途半端です。

なにも解決していない

どのくらい中途半端かというと
・コットンマウス  :主人公サイドと全然関係無い所で仲間割れのすえ死亡。
・シェイズ     :野放し
・マライア     :野放し
・ダイアモンドバック:重傷を負うが超人計画に執念を燃やすノア博士が担当医についてしまう=続編で復活することはほぼ確実

なんにも解決してない!
ボスキャラ4名のうち3名が健在!コットンマウスは中盤で退場するので、最終話時点の印象的には悪党どもが全員健在と言って良いです。
それでも「本当の戦いはこれからだ!」風に盛り上げてくれればまだ気持ちよく見終わる事が出来たのですがそんなこともなかったぜ

冴えない主役達

ルーク・ケイジは脱獄囚としての過去が暴かれ、まさかの投獄エンド
もう一人の主役であるミスティも切り札の証人をあっさり殺され失意に暮れるエンド。と言うかうかつすぎる…。上司にも言われていたけどそれほとんどあなたのせいやで…。
「ときに後退しても進み続けるんだ…!」と諸々を経てヒーローとしての自覚に目覚めたルークは刑務所へ向かう車内で誰にともなく一人でつぶやくのですが・・・そう思うならもう少し片づけてくれよ

そりゃ『ディフェンダーズ』をはじめ続編ありきの企画なのだし、そもそもクリフハンガー(話を引っ張ったまま終わること)は海外ドラマの伝統芸能みたいなもの。だから話が途中で終わること自体はいいんです。でもだったらせめて「話の区切り」があって然るべきじゃないですか…。こんなの引っ張りじゃなくていままでの戦いは全部無駄でしたオチです。徒労感しか残りません。正直がっかりし申した。

『デアデビル』→『ジェシカ・ジョーンズ』→『ルーク・ケイジ』
順調に面白さの偏差値を下げつつあるNetflixマーベルシネマティックユニバース…。

でも…大丈夫!『ディフェンダーズ』の前にまだ『アイアンフィスト』が一作残ってるよ!
すでに各評論家からこきおろされているけどそれでもNetflixなら、Netflixならきっと何とかしてくれる!そういう目をしている!

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