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パニッシャー参戦!『デアデビル シーズン2』


おすすめ度
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ □□ 8点
【あらすじ】
シーズン1を経て「デアデビル」として戦い続ける覚悟を決めた全盲の弁護士マット・マードック。
そんな彼の前に新たな脅威「パニッシャー」と気の強い元カノ「エレクトラ」が現れ事態は再び混迷していく…。

シーズン1が「デアデビル誕生編」ならシーズン2は陰謀あり痴話喧嘩ありの「デアデビルはつらいよ編」。
相変わらずの高クオリティで安心して楽しめます。しかしドラマの構成がシーズン1とは全く異なっており、ちょっと微妙に感じる点も無くはないです…。

アメコミ界の必殺仕事人


シーズン2の最大の見どころはパニッシャーが登場したことでしょう。
パニッシャーて誰?手短に紹介しましょう!
基本、アメコミヒーローは殺人を犯しません。これはコミックという大衆向けメディアにおいて主役側が人を殺しちゃイカンだろうという出版側の倫理規定によるものです。

しかし逆にうまく設定の中に活かしアイデンティティーの一部となっている例も多いです。「俺は人は殺さない」「だから悪党とは違うんだ!」という論理ですね。最も有名なキャラはバットマンでしょう。今作のデアデビルもまさにそうです。

そこでパニッシャー、本名フランク・キャッスル。
彼は逆に、情け無用のぶっ殺す系ヒーローです。当ブログでは「ブッコロ系」と呼称しています。
自分が悪と決めたらなにがなんでもSA-TSU-GA-Iしてしまう正義の仕置人。というよりむしろ狂気の私刑人です。

ヒーローは酷いことしないよという生ぬるい風潮は彼には全く通用しません。元軍人だとか家族を殺されたせいでこんな風になっちゃったとか色々設定はありますが、ひとまずパニッシャーの他と一線を画す強烈な個性は「ブッコロ系」この一言に尽きます。

だが映像化作品には恵まれず

このいっそすがすがしいほど踏み外している独自の存在感は逆に人気で、パニッシャーは今まで何度も映画化されています。
ただしいずれも高い評価には恵まれませんでした…。特に2004年版の『パニッシャー』は珍演出に次ぐ珍演出で一種のカルト作になってしまっています。アイスキャンディーのくだりとか。

謎の甘噛み復讐譚↓

そんないわくつきのパニッシャー。
映像化されるのはこれで4度目(たぶん)。演じるのはジョン・バーンサルです。

個性派!ジョン・バーンサル

個性的な御顔つきの御仁ですが、wikipediaで調べてみるとモスクワの芸術学校に通っていたりいっときプロ野球選手だったりかなりの多才の持ち主のようです。

彼の最近の出演作を思い出してみると…

『ウルフオブウォールストリート』ではヤクの売人

『ボーダーライン』では汚職警官

『フューリー』ではバカ
みんなガラわるっ!!

顔つきを最大限に活かしたフィルモグラフィです。
『ボーダーライン』でベニチオ・デル・トロに耳の穴に指を深々と入れられて「アッーーー!!」と叫んでいる姿も印象的でしたが、なんといっても最強のインパクトは『フューリー』でしょう。

女の子が食べようとしている目玉焼きを取り上げ「美味い食べ方を教えてやるぜ!」と言いながらベロぉーん、もう一回ベロぉーん。へっへっへと笑いつつ皿にべちょっと投げて返すと女の子は泣き出してしまいましたとさ。映画史上最悪の「おいしくなあれ♥」です。なお目玉焼きはこの後ブラット・ピットがおいしくいただきました。
という訳でガラ悪い役をやらせたらピカイチのジョン・バーンサル。しかしパニッシャーは粗野なだけでは務まりません。『デアデビル』での彼はいかがか!?
結論を先に言えば大成功です!

強いぞパニッシャー!

本作のパニッシャーは抜群にかっこいいです。

まず強い

「不殺」を貫くデアデビルと、暇さえあれば悪人をブッコロしてしまうパニッシャーは水と油。その激突は思いのほか早く訪れ、第1話から早速ガチバトル開始!このもったいぶらない展開の早さが痛快です!

しかしパニッシャー、デアデビルにあっさり圧勝。しかも「殺すことも出来たけどあえて殺さず警告に留める」という余裕まで見せます。

あまたの試練を経てついにヒーローコスチュームを纏ったデアデビルがのっけから軽く捻られてしまう衝撃!パニッシャーの尋常ならざる強さが伝わります。
「こんな大規模殺戮ができるのは軍隊か何かだ!」→実は全部パニッシャーが一人でやってました、というハッタリ効いた話の運び方もグッドです。トレードマークのドクロが以外な形で画面に登場するのも憎い。

宿敵だからこその友情

真向から信念が対立するデアデビルとパニッシャー。一方で事件が進むに連れ二人の間には奇妙な友情が芽生え始めます。

マット・マードックは正義にゆらぐ自分を「不殺」を貫くという信念で支えています。そして従来が弁護士でもあり「悪人は無力化したら殺さず法の裁きを受けさせる」というのが信条です。

しかし物語終盤、奮戦むなしく事態は彼ひとりではどうにもならないほど悪化。彼はパニッシャーに「今回だけ、今回だけはもう悪い奴殺して終わりにしよう。これ以上犠牲者を出さないためにはそうするしかない…!」と持ち掛けます。

これに対しパニッシャー「ようやく俺の方が正しいと理解できたか!」とドヤ顔するかと思いきや、逆につまらなそうな表情でこう言います。「やめとけ。今回だけなんて理屈は通用しない。お前が一線を超えてしまったらもう後戻りはできないんだ。」

パニッシャーは自分が人の道を踏み外し切っていることは重々承知なのです。復讐で人を殺しまくるのが正しいとはこれっぽっちも思っていない。

だからこそ、自分と同じく人を超えた場所に居ながら人の道を踏み外さずに戦っているデアデビルに敬意を持っている。レッド(パニッシャーはデアデビルをこう呼ぶ)にはそのまま踏みとどまって欲しいと思っている訳です。彼の友情が感じられます。

宿敵同士の絆あっしはこういうのに弱いんでヤンス!!
終盤にかけ出番が減っていくパニッシャーですが、要所で存在感を放ちます。

エレクトラ


出番が減るパニッシャーに代わり話の主軸になってくるのがやんちゃな元カノ、エレクトラ(エレディ・ヤング)です。実はここから話は散漫になっていきます

久しく連絡を絶っていたエレクトラがマットの前に突然現れたのは「ブラックスカイ」を追跡するため。しかしこの「ブラックスカイ」、武器の名前なのか特定の技術なのかプロジェクト名なのか人名なのかまったく明かされないまま話が進みます。話の輪郭がすごくふんわりしてきます。

手がかりを掴んだぞ!と思いきや見つかったのは尋常ならざる深さの縦穴(石を投げ入れても底につく音がしない)。何かを掘り起こしたのか逆に何かを埋めるためなのか例によってまったく分からないなんだこのシーン
ずっと信念をめぐる話だったのに、ここにきて何のために登場人物があれこれ頑張っているのか途端にぼんやりしてきます。ちょっと「あれ?」と思うところです。

でら性欲爆発デビル


マットの性欲が爆発しているのも良くないです。

シーズン1ではロマンス要素はかなり絞られていましたが、シーズン2に入ってマットに気持の余裕が出てきたのか途端にチャラくなりました。職場の同僚のカレンとねんごろになったかと思えば数日後に元カノにムラムラ致したり、合間で看護師のクレアにも色目を使ったり大活躍です。そして案の定痴話喧嘩に発展したりして、あのさぁ
2004年のベン・アフレック版『デアデビル』でも
全盲であることをダシに女性に声をかける
 →相手にされず立ち去られるも体臭を辿って後をつける
 →再び声をかけるも相手にされないので殴りかかる

という凄すぎるナンパテクニックを披露していたマット。しかもこのやり方で美女をゲットしてしまう。私が知らないだけで実はもともとチャラ設定なのかも知れません。
でも後にしてほしかった!ただでさえ要素詰め込み過ぎの感あるシーズン2で痴話喧嘩はやめてほしかった!おかげで益々どれが話の本題か分かりづらくなりました。

依然高クオリティ!

シーズン1が大傑作だった半面、シーズン2ではエピソードをうまくまとめきれず失速した印象は否めません。
しかしだからと言って失敗作では決してない。むしろアクションシーンは依然冴え渡っているし、『ジェシカ・ジョーンズ』とのリンクも憎いです。そして何と言ってもパニッシャーが頗るかっこ良い!良すぎてパニッシャーのスピンオフ企画が進行中だとか。
Netflixマーベルシネマティックユニバースの集大成となる『ディフェンダーズ』にも直接つながる(であろう)伏線が散りばめられている本作。次回作への期待をつなぐ意味でも必見です!

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