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今こそ見直す価値がある『スーパーマン リターンズ』


おすすめ度
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■□□  8点

【あらすじ】
5年ぶりに地球に帰ってきたら彼女寝取られてた。
やった!やった!
全米公開中の『ワンダーウーマン』が圧倒的に高評価です!

『マン・オブ・スティール』の賛否両論に始まり『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』『スーサイドスクワッド』と観た人がみんな微妙な表情になる映画を連発し暗雲立ち込めていたDCエクステンデッドユニバースですが、ここに来て反撃の狼煙が上がった感があります。なんだかDCコミックス映画をいっぱい観たくなってきたぞ!

という訳で、DCコミックス映画を振り返ってみようシリーズ①!として『スーパーマン リターンズ』について語ってみたいと思います!

悩まないスーパーマンがありとあらゆる問題を解決する痛快なヒーロー映画。『マン・オブ・スティール』と真逆のアプローチですがどちらが好きかと言えば私は断然こちらです。続編の企画がポシャッたり、主演のブランドン・ラウスが熊のぬいぐるみ映画でネタにされるほど後の仕事に恵まれなかったりで世間的には失敗作の烙印を押されている本作ですが、まごうことなき傑作です。

偉大な初代『スーパーマン』

1978年製作、初代映画版『スーパーマン』は現代のアメコミ映画のまさに開祖、原点にして金字塔です。

誰にとっても現実はつらい、世の中は厳しい。ゆるぎない正義や隣人を思いやる心、弱いものを労わる気持ちは実際持つことはとても難しい。78年版『スーパーマン』はそんな現実に真っ向立ち向かった映画でした。自分の存在に苦悩せず、誰かを助けることにまったく疑いを持たないスーパーマン。世の中そんなに単純じゃねーよとニヒルぶる連中(例:クリス・ノーラン)に叩き付ける愚直オブ愚直な人間賛歌。地球を逆回転させて時間を巻き戻すとかもう強引かつ荒唐無稽の極みですが、ここまで無茶苦茶な描写が許されるのなら俺も明日から頑張ってみようかななんて観る人に勇気を与えてくれる映画です。

その78年版『スーパーマン』にリスペクトしまくりなのが本作『スーパーマン リターンズ』です。

特殊な立ち位置

本作のスーパーマンは1980年製作『スーパーマンⅡ』でゾッド将軍を倒した後、故郷の調査のため一度地球を離れたあと再び戻ってきたという設定です。つまり1980年から25年越しの正当な続編な訳です。
それでいて作品は78年版『スーパーマン』の演出を過剰にトレースし、ほとんどリメイクの体を成しています。ロイスが飛行機で気絶するシーンや「鳥か?」「飛行機か?」「いやスーパーマンだ!」の名セリフも露骨。何より冒頭のクレジットタイトルはジョン・ウィリアムスの超有名なテーマ曲(スターウォーズのテーマにめっちゃ似てる奴)を含め思いっきり78年版をなぞっています。あの奇跡の傑作を現代に蘇らせたい!という強い思いが伝わってきます。
しかし時代が違うから当然キャストもスタッフも総入れ替え。これはもうリブート=シリーズ再出発と言っていいでしょう。

続編かつリメイクかつリブートという特殊な立ち位置の本作。あまり似ている映画はありません。

どこまでもまっすぐな映画

揺るがぬ自分

本作のスーパーマンは悩みません。もう全然苦悩しません。かつての恋人ロイス・レーンが今は人妻で一児の母だったとしても全然やさぐれたりしません(多少はへこむ)。
お気楽能天気という意味ではなく、まったくブレない自分=正義を持っているのです。
肉体・精神両面で人間を凌駕しています。

それを象徴するシーンがこちら。
武装強盗を阻止しようと犯罪現場に舞い降りたスーパーマン。強盗は至近距離からスーパーマンの顔面に銃弾を撃ち込みます!スローモーションで飛んでいく弾丸。やがてスーパーマンの眼球に弾が当たると・・・弾丸の方がひしゃげます。スーパーマンは瞬きひとつしません。チン、と情けない音を立てて床に転がるつぶれた弾丸。戦慄する強盗。ニヤッと笑うスーパーマン。
これぞケレン味!人間とはあらゆる意味で格が違うということがテンポよく痛快に描かれています。

徹底した「わかりやすさ」

ケビン・スペイシーが演じるレックス・ルーサーも素敵。初代であるジーン・ハックマン版の流れを受け継ぎ、ドロンジョ様的と言うかバイキンマン的というか、とにかく「おやびん」と呼ばれるのがお似合いの人間のスケールが小さい小悪党としてコミカルに描かれます。
まったく邪悪さが無いので見ごたえは無いのですが、この分かりやすさこそ本作にベストマッチです。少なくとも、何がしたかったのか意味不明過ぎるジェシー・アイゼンバーグ版レックスよりはるかに魅力的です。『モンスター上司』といい 、ケビン・スペイシーってコミカルな役でいい仕事しますよね。

後半は大スペクタクルなディザスターがメトロシティを襲いますが、スーパーマンが破格の活躍を見せるので被害に対して悲壮感はほとんどありません。この突き抜けた明るさ!これが見たかった!

ただまあ、ロイスの息子が後半ピアノを使ってある事をするのですがそこだけはちょっと受け付けませんでした・・・。そこだけ別の映画なんじゃないかってくらい衝撃のシーンで映画全体のテーマを揺るがしかねない。このシーン要る?

もう一度正しさについて考えてみる

1978年から時代は進み、映画文化においても「正義」の描かれ方は変わりました。決定的だったのはクリス・ノーラン監督『ダークナイト』。同作は正義という概念の持つ欺瞞脆弱さをこれでもかというほど観客に叩き付け、ハリウッドの価値観を永遠に変えてしまいました。時代と言えばそうなのですが、それでも複雑化する社会とは別の次元で人間としての正しさは揺るがない。無垢に無邪気に「正しさ」を謳歌するこの映画を見ているとそう思えてきます。
アフター『ダークナイト』かつヘンリー・カヴィル版スーパーマンにファンが困惑している今日にこそ見直す価値がある映画だと思います。
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昔はNetflixでも見られたんだけど、どう言うわけだか配信停止に・・・。戻って!

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