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成長神話に中指を!『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』紹介

成長。
いい響きですよね!
私を含め、あまねく人々は成長の物語が大好きです。

最初は頼りない主人公が、ラストには見違えるような立派な行動に出る…。
その落差が大きいほど、観客は大きなカタルシスを得られます。

『愛と青春の旅立ち』しかり、
『千と千尋の神隠し』しかり、
古今東西の名作・傑作に成長を描いた物語が多いのは必然でしょう。

 

しかしここまで一辺倒の風潮だと、ヘソ曲がりの私はふと考えてしまいます。
「成長ってそんなにイイものか?」
と。

成長とは誰かにとって都合の良い人間になることと同義じゃないか?
所属するコミュニティの慣習に適応しただけじゃないのか?
成長物語を絶対視するのは、逆に成長できない人間を無価値と断じる危険思想につながらないか?

そんなモヤモヤを抱えたまま過ごしていた私でしたが…。
ある日、この疑問に快刀乱麻を断つがごとく明快な答えを与えてくれる傑作に出会いました。
それが今回紹介する『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』です。

 

 

ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!

2013年 イギリス/アメリカ
監督:エドガー・ライト
出演:サイモン・ペッグ、ニック・フロスト

ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う! (字幕版)

 

評価 A

 

アホなうえにアル中で負け組まっしぐらのゲイリーは、社会的に成功した4人の幼馴染を20年ぶりに故郷に集める。
学生時代に達成できなかった計画「12軒のパブではしご酒」を実行するためだ。

はしゃぐゲイリーにしぶしぶ4人が付き合う形で始まった飲み歩きだが、次第に不穏な空気が漂い始める。
町の人たちが…なんか皆こっち見てない?
って言うかこいつら…人間じゃない!?宇宙人だ!!

というお話です『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』。
敢えてカテゴライズするなら、侵略系SF+アクションコメディってところでしょう。

 

本作を手掛けるのはエドガー・ライト監督。
そして出演がサイモン・ペッグとニック・フロスト。

この3人は本作以前にも快作を連発してきた名タッグです。
『ショーン・オブ・ザ・デッド』では過去の傑作ゾンビ映画にオマージュを捧げ、
『ホット・ファズ』では過去の傑作警察映画にオマージュを捧げ、
そして本作『ワールズ・エンド』では過去の傑作侵略系SFにオマージュを捧げているってワケ。

共通のコンセプトを持つこれら三作は、劇中に登場するアイテムになぞらえて "コルネ三部作" と呼ばれています。
が、今回の話題的にはこの辺のウンチクはどうでもいい(;^ω^)

 

ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン! (字幕版)

何もかもが最高すぎるアクションコメディ。
"That's what I'm talking about."(「それな。」)にシビレる。

 

『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』のスゴいとろころは、前述の成長神話を相対化している点。
言い換えれば「良い物語」イコール「主人公が成長する話」という図式を見事に粉砕している点に尽きます。

 

この物語の主人公ゲイリーは、アルコール中毒の貧乏人という絵に描いたような負け犬です。
幼馴染の四人が仕事や家族に充実を見出しているのに、ゲイリーの人生は学生時代に絶頂期を消費してからずっとドン底を這い続けている。

当然、主人公が成長するのがヨシとされる例の法則にのっとり、映画終盤では一念発起したゲイリーが周囲を驚かせるような勇敢な行動に出るに決まってますよね。
誰もがそう予想するところです。
折しも宇宙人の地球侵略が進行していると判明したところ…。活躍の場は豊富に用意されているぞゲイリー!

 

怒ると顔が光るジモティーたち。
主人公の皆さん、出番ですよ!

 

ところが本作のゲイリーってば、映画が終わるその瞬間までまったく成長しません。
クズのままです。
それどころか「俺ってこれでいいんだ!」と盛大に開き直る。
まったく成長しない主人公が爆誕です。

 

じゃあ『ワールズ・エンド』が物語的なカタルシスの無い、徒労感ばっかりの作品かと言えばさにあらず。
本作のラストでゲイリーは、劇中の登場人物の誰よりもイキイキした表情で感涙必至の超名ゼリフをぶっ放します。
ゲイリーは成長を否定した先に本当の自分を見出したのです。

このラストシーンは我が人生でも最高のラストシーンの一つ。脱力系コメディなのに実に感動的。
「バカがバカで何が悪い!」という圧倒的な開き直りっぷりは、「こんなはずじゃなかったのに…」的な滅滅とした人生への福音と言えます。
言わば成長を用いずに描いた人間賛歌

 

なお、江頭2:50ことエガちゃんは本作をボロクソに叩き
「自分は変わろうとしないで世界が変わるのをただ待っているようなヤツ、一生幸せになれないよ!」
「自分で行動しないヤツはいつまでたってもそのままなんだ!」
と罵倒していました。
一理あります…というより正論すぎるご意見です。

でも敢えていいますがそれでいいじゃない
みんな人生に意味を求めすぎだって。
自分より良い人生を送る人間を見て、誰もが羨ましがったり「それに比べて俺は…」と卑屈になってみたりするけれど、それになんの意味があるんだっての。

ゲイリーを見てみなよ。
あんなにダメなのにあんなにイキイキしてる!
あれこそ人の進む道だよ!
成長なんてクソくらえだよ!!

 

本作を見たことで、くだんの成長神話に対する違和感に答えが見出せました。
すなわち
「成長できれば素晴らしいけど、できなくたっていいじゃない。どっちの先にも道はあるよ。」
ってこと。

 

マイ人生観を大きく変えた名作『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』がNetflixで配信再開されたので今回はそれを取り上げてみました――という話でした。

なお本作は吹き替えでも面白いけど、散りばめられた小ネタの数々を絶妙に再現した字幕版も至高。監修は町山智浩だぜ!

 

 

ショーン・オブ・ザ・デッド [Blu-ray]

伝説の始まりにして超傑作です。
もともとミュージックビデオ出身のエドガー監督が抜群の編集センスを発揮!
Queenの名曲で綴られる残虐シーンが最高です。

 

ベイビー・ドライバー (字幕版)
エドガー・ライト監督、近年の快作。
映像のキレにさらに磨きがかかり、異様に豪華な出演陣がそれを盛り上げる。完璧。






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